ペニシリン系の抗菌薬(抗生物質)が必要になり、医師の処方せんに基づいて処方が行われます。
また、症状により注射薬や点滴薬を用いる場合があるので、必ず医療機関を受診してください。
このページでは、梅毒の治療薬について詳しく解説しています。
梅毒に効く抗生物質(抗菌薬)は限られており、症状の進行具合により用いる薬の種類も異なります。
注意点や入手方法についても触れていますので、今後の梅毒治療にお役立てください。
梅毒の治療薬には、ペニシリン系の抗菌薬が用いられます。
内服薬や注射薬(筋肉注射 / 点滴静脈注射)を病期(ステージ)によって使い分けますが、症状が軽度な第1期〜第2期の段階で発見される場合は、内服薬による治療が一般的です。
また、2021年1月には、梅毒の世界的な標準治療薬である「持続性ペニシリン筋注製剤」の国内での販売が認められました。
こちらは早期梅毒(感染から1年以内)であれば、1回の投与で治療ができます。
同時期は梅毒の国内感染者数が急増したこともあり、梅毒治療の新たな選択肢として期待が寄せられています。
以下では、内服薬や注射薬として用いられる薬剤の種類について、詳しく解説していきます。
内服薬の第一選択として治療に用いられるのが、合成ペニシリン製剤の「サワシリン(アモキシシリン)」です。
梅毒の内服薬 | |
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薬剤名 | サワシリンカプセル250mg |
効果 | 細菌が自らを守るための細胞壁生成を妨げ、菌の増殖を抑えることで梅毒を治療します。 |
用法・治療期間 |
治療例:1日3~4回服用し、7日間服用する。 ※病期や検査の数値により、用法・治療期間は変わります。 |
副作用 | 発疹、下痢、悪心、嘔吐、腹痛 など |
価格 | 12,000円 / 21錠 |
サワシリン(アモキシシリン)は長らく梅毒の標準治療とされ、神経梅毒以外の梅毒に効果を発揮します。
ペニシリン製剤にアレルギーがある場合、ショック症状を回避するために以下の内服薬が用いられます。
ペニシリン製剤アレルギー回避の内服薬
テトラサイクリン系抗生物質
⇨ ミノマイシン(ミノサイクリン) / ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
マクロライド系抗生物質 ※妊娠中のみ
⇨ アセチルスピラマイシン(アセチルスピラマイシン酢酸エステル)
処方していないクリニックもあるため、梅毒治療を行う他の医療機関(泌尿器科、性感染症内科、皮膚科)にご相談ください。
また、妊娠中に梅毒の感染が確認された場合、アセチルスピラマイシンの内服による治療が可能ですが、子宮収縮が誘発されて流産や早産となる可能性があります。
服用前には産科医の診察を受けることが望ましいです。
注射薬・点滴薬は内服薬と効果こそ変わりませんが、重症例や感染状態から直ちに効果を発揮させることが必要なケースに用いられます。
梅毒の注射薬・点滴薬 | |
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効果 | 細菌が自らを守るための細胞生成を妨げ、死滅させる |
用法 |
点滴薬:1日1,200~ 2,400万単位を投与 注射薬:1回240万単位を筋肉内に注射(後期梅毒は週に1回、計3回の注射) |
治療期間(回数) |
点滴薬:10日〜2週間(第3期以降・先天梅毒・神経梅毒) 注射薬:1回(早期梅毒) / 3回(後期梅毒) |
副作用 | 発疹、血液数値異常、肝機能数値異常、血管炎、静脈炎 など |
また、病期が第3期まで症状が進行し、心臓や他の臓器、筋肉や骨、神経などへのダメージによる症状が発現した場合には、症状を改善するための対症療法が行われます。
アメリカCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインでは、ベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤(筋肉内注射薬)が推奨されているものの、日本ではショック死が発生したため梅毒治療として行われていません。
しかし、2021年1月には、新たな選択肢として「ステルイズ(持続性ペニシリン製剤)」の承認・販売がスタートしています。
販売が始まったばかりではあるものの、世界各国で70年以上の使用実績があることから、すでに日本でも梅毒の第一選択薬に位置付けられています。
長い間、日本での梅毒治療は内服薬が標準薬とされてきており、特に販売から間もないステルイズの治療経験を持つ医師は少ない状況です。
治療先を選ぶ際には、治療経験豊富な医師に相談してください。
点滴薬であるベンジルペニシリンカリウムは、次のような場合に用いられます。
第3期に以降した梅毒 | ゴム腫や手足の麻痺、心血管系の病気を起こす重症例 |
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神経梅毒 | 中枢神経に梅毒トレポネーマが侵入することで起こる梅毒 |
先天梅毒 | 胎内感染によって引き起こされる梅毒 |
いずれも日常生活に支障をきたす状態になるため、内服薬や注射剤ではなく、血管に直接薬剤を注入し、すぐに効き目が期待できる点滴薬が投与されます。
いずれかの梅毒が疑われる場合には、入院が可能な医療機関で検査・治療を受けてください。
治療薬の耐性とは、抗生物質を使い続けると細菌が薬に対する抵抗力を持ち、薬が効かなくなることです。
耐性を持つ菌は「薬剤耐性菌」と呼ばれ、耐性を持っていない菌にも伝達されるため、耐性菌が次々に増えていく場合があります。
幸い、梅毒の原因である梅毒トレポネーマの耐性菌の報告はなく、病期や感染状態に合わせた適切なペニシリン製剤を用いれば完治が可能です。
ただし、ペニシリンに耐性を持った菌が今後見つかる可能性はゼロではありません。
特にご自身で服用を行う内服薬は、自己判断が後に耐性菌を発生させる原因になることがあります。
内服薬は飲みきりが基本ですので、指示された用法用量を守って正しく使用するよう心がけてください。
梅毒の薬は、医療機関で必要な検査を一度受け、梅毒トレポネーマへの感染が確認された上での処方となります。
抗生物質であれば何でも良い訳ではなく、風邪など他の病気で処方された抗生物質が余っていても代用しないでください。
また、梅毒は病期により症状が異なり、適切な治療方法が異なります。
その際、症状に合致した薬を選ぶには、高度な専門知識が必要になります。
選択が違った場合は完治に至らず、その間に症状が進む恐れがあるので、不安な行為や心当たりがあれば必ず医師にご相談ください。
梅毒の治療薬に市販薬はありません。
内服薬をはじめ、注射薬、点滴のいずれも「医療用医薬品」にカテゴリされ、医師が診断した上で処方箋に基づいて渡される処方薬です。
お近くのドラッグストアや一般的な薬局では取り扱いがそもそもなく、いずれかの方法によって処方されます。
効果が高い半面、副作用のリスクもあることから、市販薬のように簡単な問診だけでは入手はできないため、ご注意ください。
梅毒の薬は、個人輸入(海外通販)でも購入が可能です。
医師を介さずに、欲しい薬を低価格で購入できるメリットがあるものの、それを上回るデメリットがあるので危険です。
個人輸入でのデメリット | |
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偽物や粗悪品の流通 | 有効成分が含まれていない、あるいは品質に問題があることで、治療効果が得られない場合がある。 |
手元に届くまでに時間がかかる | 輸送に14日以上かかるため、異常を感じても治療できずに薬の到着まで放置状態となる。 |
治癒したかの判断が難しい | 梅毒の治癒判定は難しく、自己判断では再発、ピンポン感染などのリスクがある。 |
こうしたデメリットはすべて自己責任となり、梅毒の治療環境が整っている日本では必要のない購入方法と言えます。
健康を犠牲にする可能性が高いため、安全に治療が行える医療機関で薬の処方を受けてください。
梅毒は、早期治療により完治させることが可能です。
かつて梅毒は不治の病として恐れられ、一度感染したらほぼ死に至る病でした。
しかしペニシリンが発見されたことで、現在では症状が軽い初期の段階で治療が可能となり、重症化(第3期以降)するケースもほとんど見かけなくなりました。
ただし、梅毒の症状は出たり消えたりを繰り返すため、感染の自覚が遅れることがあるため、安心できません。
感染後すぐに重症化することはありませんが、定期的に検査を受けリスクを未然に防ぐのが肝心です。
梅毒が完治したと認められるには、再検査の結果で陰性(抗体数値の低下)が出ることです。
一般的には治療後6ヶ月の間に定期的に血液検査を受け、症状の有無と合わせて医師が判断を行います。
治療後1〜2ヶ月ほどで完治に至るケースもありますが、検査数値の下がり具合を見るためには原則6ヶ月のフォローアップが必要です。
検査期間と治療期間を合わせると、梅毒が完治と認められるまでには、最大10ヶ月かかる場合もあります。
2〜12週間(治療期間)+原則6ヶ月(定期検査) = 最大10ヶ月
なお、治療によって症状が消えても、自己判断で治療を中止せず、必ず検査を行ってください。
梅毒の感染中は症状が出たり消えたりするものの、自然治癒することはありません。
一時的に症状が消えても水面下で進行するため、「症状がない=完治」とはならないのでご注意ください。
再検査により数値の下がり具合が十分と判断されるまでは、梅毒の感染状態は続いています。
そのため、完治を自己判断してしまうと、症状が再び悪化し、パートナーに感染させる恐れがあります。
医師の指示どおりに治療を続け、見た目の変化だけで治ったかを判断しないでください。
梅毒は一度完治しても、菌に対しての免疫を得ることは無いため、新たな感染により再発する場合があります。
感染する機会があれば何度でも感染する特徴があります。
主に再発は以下の原因で起こります。
梅毒再発の原因
再検査により完治を確認した上で、梅毒の感染経路を断ち切ることも再発防止には必要です。
梅毒の菌は自然発生することはないため、パートナーや性行為をした相手と検査・治療を受け、お互いの身体を感染からお守りください。
日本では、梅毒とHIVの重複感染の割合が約10〜20%と報告されています。
さらに、HIV患者のMSM(男性間性交渉者)は非MSMにくらべ、梅毒の罹患率が5倍ほど高いとの海外報告もあります。
HIVを合併していると症状や検査数値が通常とは異なることがあり、次のような特徴もあるとされています。
梅毒とHIV合併の特徴
これらを踏まえると、梅毒の検査を行う場合にはHIVの検査も同時に行うのをお勧めします。
梅毒の検査は通院する以外に、自宅などで行える検査キットもあります。
検査キットの場合、結果も数日後WEB等で確認ができ、早期発見・早期治療に繋がります。
なお、検査キットの使用には、次のことに注意が必要です。
梅毒検査キットの使用の注意点
以上のことに問題がなければ、検査キットの使用は可能です。
病院に行くのに抵抗感がある方、パートナーと一緒に検査を受けたい方などは、検査キットの使用を検討してみてください。
検査キットは主に、医療機関またはネットでの購入で入手が可能です。
フィットクリニックでは梅毒などさまざまな性感染症に対応した検査キットの取り扱いをしています。
1度にさまざまな種類の検査を行うことで、梅毒以外の性病への同時感染が確認でき、後からの発覚を防げるため安心です。
検査キット | 価格 | クラミジア | 淋菌 | 咽頭クラミジア | 咽頭淋菌 | トリコモナス | カンジダ | HIV | 梅毒 | B型肝炎 | C型肝炎 |
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推奨 女性10項目セット |
33,000円 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
女性8項目セット | 29,000円 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
女性5項目セット | 25,000円 | ● | ● | ● | ● | ● | |||||
推奨 男性10項目セット |
33,000円 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
男性7項目セット | 28,000円 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||
男性5項目セット | 25,000円 | ● | ● | ● | ● | ● |
検査キット2個セット | 10%引き |
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送料 | 無料 |
ご自身が感染している可能性がある場合は、パートナーにも感染している確率が高いため、一緒に検査することをお勧めします。
検査キットの購入にはご予約が必要となりますので、以下のボタンよりご予約ください。
検査キットに関する詳細については、以下のページをご覧ください。
梅毒は完治できる病気であり、治療方法が確立された現代で重症化することは稀です。
しかし、治療が十分でないまま自己判断で止めてしまうと、重症化する可能性があります。
再検査を行い完治と診断されるまでは一定の期間が必要になりますが、悪化させないためにも医師の指示どおりに治療を続けてください。
また、これ以上の梅毒の蔓延を防ぐためにも、日頃からセーフセックスを心がけるとともに、多少の不安がある場合でも積極的な検査をお勧めします。