いずれも名前の通り少量のニコチンを含んでいるため、禁煙による離脱症状を抑えながら無理のない禁煙をサポートします。
チャンピックスの効果や副作用、注意点を解説

このページでは、禁煙補助薬であるチャンピックスの効果や副作用について詳しく解説しています。
チャンピックスで治療をするにあたって必要な情報が載っているので、これからタバコをやめようとしている方は参考にしてみてください。
チャンピックスの効果

チャンピックスは、主に2つの作用によって禁煙をサポートします。
拮抗作用
⇨ ニコチンが脳内で結合するのを抑え、喫煙から得られる満足感を抑える
刺激作用
⇨ 少量のドーパミンを放出させて禁煙による離脱症状を抑える
2つの作用がタバコを吸いたい気持ちや、禁煙時に起こるイライラや落ち着かないといった不快な症状を軽減します。
喫煙時の神経細胞

喫煙時には、神経細胞のニコチン受容体とニコチンが結合し、大量のドーパミンが放出します。これが快感に繋がります。
チャンピックス服用時の
神経細胞

チャンピックスの成分がニコチン受容体と結合するため、ニコチンは結合できなくなります。すると少量のドーパミンが放出され、喫煙の満足感や離脱症状が減少します。
こうした効果による禁煙持続率は高く、臨床試験では治療開始9~12週目の4週間に禁煙を持続できた割合は65.4%(130例中85例)とのデータもあります。
そんな効果の高さから、チャンピックスは2008年に国内で承認されてから禁煙治療における主流の薬となっています。
ニコチンパッチとの違い
チャンピックスが登場する以前の禁煙治療は、ニコチン置換療法によるニコチンパッチを用いた治療が一般的でした。
2つの薬には、以下のような違いがあります。
チャンピックス | ニコチンパッチ | |
---|---|---|
禁煙成功率 | 65.4% | 52.3% |
剤型 | 飲み薬 | 貼り薬 |
ニコチン | 含まない | 含む |
効果 |
|
|
特にニコチンの有無は禁煙に対するアプローチの大きな違いとなります。
ニコチンを含まないチャンピックスは喫煙の快感が得にくいため、タバコ離れしやすくなるメリットがあります。
そのため禁煙成功率についてもチャンピックスの方が高く、服用できない健康上の問題がなければチャンピックスで禁煙治療するのが一般的です。
チャンピックスの飲み方

- 禁煙開始する日を決める
- 禁煙開始1週間前から服用し始める
-
8日目以降副作用が強ければ薬を減量しても良い
(その場合1回0.5mg1日2回)
まずは禁煙開始する日を決めましょう。
禁煙開始日の1週間前になったらチャンピックスの服用を始めます。
最初の3日間は0.5mgを1日1回食後に、4日~7日目は朝夕食後の2回に増量します。
8日目以降1mgを1日2回の服用になるので、副作用が強ければ0.5mgを1日2回に減量しても大丈夫です。
基本的には12週間の服用で治療が終了となります。
なお、12週間の治療で禁煙に成功しても、その後の禁煙をより確実にするために追加で服用期間を12週間延長することが可能です。
その際は、1mg1日2回(朝夕食後)の服用となります。
チャンピックスの注意点

チャンピックスを服用する上で、注意しなければならないことがいくつかあります。
ここからは飲み合わせや服用時の注意点について、詳しく見ていきましょう。
服用できない方
有効成分バレニクリンや添加剤にアレルギーがあると、チャンピックスを服用することができません。
アレルギーがある方は、診察時に医師に申し出るようにしてください。
服用に注意が必要な方
以下の人は医師に必ず伝えること
-
統合失調症、双極性障害、うつ病などの精神疾患のある患者
→精神症状を悪化させるおそれがあり、病状によっては服用ができないことがあります。 -
腎機能障害のある患者
→腎機能に問題があると薬の代謝が遅れてしまい、必要以上に効果が強くなることや、副作用が出やすくなることがあります。 -
妊婦または妊娠の可能性がある女性
→禁煙治療のメリットが危険性を上回ると判断された場合にのみ服用が可能になります。 -
授乳中の女性
→治療と母乳栄養のメリットを考慮しつつ、授乳の中止または継続するか医師の判断が必要になります。 -
高齢者
→重度の腎機能障害があれば用量の調整が必要になり、一般的に生理機能が低下していることから服用には医師の判断が必要になります。 -
小児等
→国内では小児等を対象とした臨床実験は実施されていません。診療・処方できるかは医療機関でも異なります。
併用禁忌
チャンピックスとの併用が禁忌とされている薬の報告はありません。
併用注意
- シメチジン
- ほかのニコチン製剤
胃酸を抑える薬として使用されるシメチジンと併用してしまうと、チャンピックスが身体に取り込まれる量が増えるおそれがあります。
特に、重度の腎機能障害が認められている方は併用に注意が必要です。
また他のニコチン製剤と併用した場合の有効性はわかっておらず、副作用が出やすくなるおそれもあるので原則併用はできません。
服用時に気を付けること
-
服用中は自動車を含む危険を伴う機械の操作は行わない
→副作用として、めまいや眠気、意識障害などを伴う可能性があり、実際に自動車事故にいたったケースもあります。
服用期間中は自動車の運転や、危険をともなう作業を控えるようにしてください。 -
テオフィリン、ワルファリン、インスリン等を使って治療中の方は、使用中の薬の用量を調整しなくてはいけない可能性がある
→禁煙によって身体に生理的な変化が生じることで、治療に影響する可能性があります。
また、CYP1A2という酵素で代謝される薬(クロザピン、オランザピンなど)も同様です。 -
精神症状が出る可能性がある
→因果関係は明らかではありませんが、抑うつ気分、不安、敵意などの精神的変調が起こる可能性があります。
これらの症状が出た場合には服用を中止し、すぐ医師に相談してください。
チャンピックスの副作用

- 皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑
- 血管浮腫(顔や舌、唇、喉)
- 意識障害(意識低下・消失)
- 肝機能障害、黄疸
- 吐き気
- 不眠症
- 異常な夢
- 頭痛
- めまい
- 眠気
- イライラ
- 情緒不安定
チャンピックスの副作用で1番現れやすいのが、吐き気です。
国内試験でも12.7%の方に吐き気が認められ、服用量にともなって発生頻度が高まることがわかっています。
そのため、治療開始から用量が変化する第1〜2週目は気を付けましょう。
ひどい場合には吐き気止めを併用しても問題ありません。
その他に起こりやすい、不眠症やイライラ、情緒不安定といった精神症状については、必ずしもチャンピックスの副作用とは限りません。
禁煙にともなう離脱症状によって現れることもあります。
チャンピックスの費用相場

チャンピックスの費用相場は、保険診療か自費診療かで大きく変わります。
保険診療 | 自費診療 | |
---|---|---|
チャンピックスのみ | 約13,000円 | 約40,000円 |
チャンピックスでの 禁煙治療費の合計 |
約20,000円 | 約67,000円 |
禁煙治療には、薬代だけでなく診察料や処方せん料などもかかります。
そのため、薬代に加えて7,000~20,000円程度必要となります。
なお、健康保険適用で禁煙治療を受けるためには以下の条件があります。
- ①全10問の質問によるテストでニコチン依存症と診断された方
- ②35歳以上の場合、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
- ③ただちに禁煙したい方
- ④禁煙治療について説明を受け、治療を受けることを文書にて同意された方
- ⑤過去1年以内に健康保険での禁煙治療を受けていない方
もし条件を満たせなければ3割負担で治療を受けることはできず、自費診療の扱いとなります。
チャンピックスは出荷停止中

チャンピックスは現在出荷停止中となり、販売再開の詳しい時期についてはわかっていません。
出荷停止の理由は、2021年6月、一部の製品に基準値を超えるニトロソアミン(N-ニトロソバレニクリン)が含まれていることが判明したためです。
これにより全世界で出荷停止の運びとなりました。
出荷に向けては製造方法の変更が必要となり、各種手続きに時間を要することから、2023年に入っても再開の目途は立っておりません。
なお、これまでチャンピックスで治療を受けられていた方への健康被害の可能性は低いとされています。
チャンピックスのジェネリック

チャンピックスは特許を満了していないので、国内にジェネリックは存在していません。
しかし一部の国ではジェネリックが作られていることから、一部の方が海外から個人的に取り寄せる「個人輸入」の形で購入してしまっているのが現状です。
個人輸入は安さと手軽さがあるものの偽物の可能性もあり、何より健康状態がわからないまま自己判断で薬を服用するのは危険を伴います。
万が一のことがあっても自己責任となってしまうので、チャンピックスは医師から処方を受けるようにしましょう。
よくある質問
いずれも名前の通り少量のニコチンを含んでいるため、禁煙による離脱症状を抑えながら無理のない禁煙をサポートします。
現在は自主回収されており、販売元のファイザーの見解によれば、すでに治療を受けられた方への健康被害の可能性は低いと発表されています。
吐き気止めを併用しても良いですか。
それでも吐き気によって服用が厳しいと感じるようであれば、医師と相談して1回の服用量を変更するようにしましょう。
その場合は1mgを朝夕食後の1日2回服用する形となります。
なお、追加分については健康保険が適用されず、全額自己負担になるので覚えておきましょう。