EDとは
EDとはErectile Dysfunction(勃起不全)の略です。症状としては「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義され、全く勃起ができない状態ではありません。
EDは現在、治療が十分に可能な症状です。
EDの症状
- 「勃起するまで時間がかかる」
- 「勃起しても中折れする」
- 「勃起しても柔らかい」
- 「そもそも勃起しない」
- 「勃起する時としない時がある」
勃起に関してこれらの症状に覚えのある方はEDの可能性があります。
ED(勃起不全)は性機能障害の1つで、その定義として「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」(ED診療ガイドライン[第3版])とされています。
EDになると全く勃起ができない症状と思われますが、EDとされる症状の範囲は広く、たまに勃起できない軽度のものから、ほとんど勃起できない重度のものまで、定義に当てはまるものは全てEDとされます。
「満足の出来る性行為」なので、自慰行為はできるが、性行為となると勃起しないのもEDです。さらに、性行為は出来るが妻との場合だけEDになる「妻だけED」という症状もあるなど、特定の条件でのみEDとなる場合もあります。
EDは現在、1,100万人以上の成人男性が悩んでいる症状と言われています。
その割合は4人に1人にあたるため、他人事ではない症状です。勃起しない性行為が出来ないだけでなく、生活習慣病や精神的な疾患など自分では気が付きにくい病気が原因となる場合もあります。
EDを「そのうち治る」「今だけの症状」と思わずに早めに治療することをおすすめします。
EDの原因
成人男性であればだれでもEDになる可能性があると言われています。
勃起とは様々な条件が重なることで起きるメカニズムがあり、そのどこか1ヵ所でも不具合があれば勃起に支障が出る、意外と複雑なものです。代表的なEDの不具合の原因についてまとめています。
精神的なストレスが原因(心因性ED)
勃起は原始的なイメージがありますが、そう見えて実は繊細なものです。
性行為に必要な勃起には、しっかり刺激や興奮を脳から陰茎に伝えなければなりません。
疲労やストレスなどで精神的なダメージがあると、脳内の情報を伝達する物質が減少し、脳から性的な刺激や興奮がうまく伝えられなくなります。これがいわゆる心因性EDとされます。
精神的なダメージは個人差があるのもので、原因は人それぞれです。
仕事の人間関係や激務によるプレッシャー、妊活で夫婦関係にストレスがある方、孫が見たいとしつこく親に言われる、以前性行為で失敗したことがトラウマになった方など、心因性のEDには多くの理由があります。
原因がはっきりとあるため解決できるものもあれば、トラウマの様に深層心理に原因があるため発見や解決が難しいものもあります。
また、深層心理に原因がある場合は、治療が困難になる場合もあります。
精神的な疾患である、うつ病や心的外傷ストレス障害(PTSD)も、心因性EDの原因となります。
主に30代から40代にかけての方が、心因性EDになりやすいと言われています。
血管や神経の障害が原因(器質性ED)
以前はEDの症状は、年齢を重ねると男性の生殖機能が弱くなり「年のせい」とあきらめてしまう方が多かったと思います。
現在は勃起についてのメカニズムが解明され、EDがどういったものか知られるようになりました。
EDの原因となるものに「動脈硬化」があります。
これは年齢と共に体が衰え血管が硬化する症状です。硬く広がらない血管には血液が流れこみにくくなり、硬さの弱い勃起もしくは勃起するまで時間がかかるようになります。糖尿病、心臓病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が高い割合でEDとなります。
勃起には神経の伝達が正常に行われなければなりませんが、神経に障害がある場合もEDになる場合があります。脳腫瘍、脳外傷、アルツハイマー病、パーキンソン病などは自立神経に障害を起こす症状のため、EDになる確率が高くなります。
事故や手術により脊髄に損傷を受けた場合にも、箇所により神経の働きに支障が出るためEDになることがあります。
主に50代から60代にかけての方が、器質性EDになりやすいと言われています。
心因性と器質性の両方が原因(混合型ED)
EDの原因で最も多いのが、心因性と器質性の両方が原因となっている混合性EDです。
EDになる原因として、動脈硬化の影響によるものだけや、ストレスだけでEDになることは少なく、2つの原因が重なることでEDになりやすくなります。原因が1つだけではない場合、改善も困難になります。
男性は40代になると生活習慣から血管へ負担がかかり、動脈硬化や高血圧になりやすくなります。
加えてホルモン分泌も低下することで、ストレスへの抵抗力も落ち、相乗効果となることでEDを重症化させることになります。
それにより、一度でも勃起不全を経験すると不安感が強まり心因性のEDが強まることもあるのです。
2つの原因を改善させなければ、EDの症状は軽減されないのが、混合性EDの改善が困難な理由です。
特定の薬剤が原因(薬剤性ED)
薬には効果がありますが、副作用も同時に存在します。
例えば、風邪で症状を緩和させたいけれど、副作用により眠気を伴うなど、本来望む効果以外に好ましくない作用が現れるものです。
いくつかの医薬品の中には、EDの症状が現れるものもあります。
うつ病や不安症の治療に使われる医薬品には、脳内伝達物質に関わり興奮や緊張を抑える働きがあるため、性的欲求や勃起にも影響が現れます。
主に一般的な抗うつ剤として使用される、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)に属するパキシルやレクサプロ、ジェイゾロフトにEDや性欲低下の副作用が見られます。
血圧を下げる薬や前立腺肥大症の薬、非ステロイド性抗炎症剤などにEDの副作用があるものが確認されています。
EDの治療・改善方法
EDは長年改善の困難な男性の悩みでしたが、現在EDは改善することができる症状となっています。EDの治療法や改善方法についてまとめています。
ED治療薬の利用
EDの改善法の第一選択として、ED治療薬の使用があります。
EDの原因は様々ありますが、1部の原因を除き(勃起に必要な神経や細胞の損傷など)ほとんどの原因にED治療薬は有効です。
ED治療薬は陰茎の血管を拡張させ勃起を促す働きがあり、通常より勃起をしやすい状態にすることでEDを改善します。
ただし、ED治療薬は1次的に症状を改善する「対処療法」です。成分が代謝されるまでの時間のみ効果を発揮します。
ED治療薬は原因を根治させるものではありませんが、他の治療法では時間がかかるため、それまでの間使用するにはとても有効です。ED治療薬の成分は、耐性や中毒性も少ないため、長期間使用しても問題ありません。
一度勃起ができなかったことで心因性EDになった方で、数回ED治療薬を使い性行為が出来たことで、EDの症状が無くなる方もいます。
現在海外製のED治療薬もネット上で多く流通されていますが、適切な使用方法や用量、併用や注意に関しては自己責任となり、安全面に問題があるため専門機関で診察を受けED治療薬を使用してください。
ED治療薬にはいろいろな種類があり特徴も様々なので、症状や体質に合わせて、注意点も確認しながら処方してもらいましょう。
食生活の改善
EDは生活習慣の乱れが原因となる場合が多く、その大きな割合を占めるのが食生活です。
普段から塩分や糖質、脂分などが多い食事をしていると血管にダメージを与え血管壁が硬くなる「動脈硬化」の原因となります。
勃起に必要な健康で柔軟な血管を保つためには、食生活を改善してください。
避けた方がいいのは、前述した塩分、糖分、脂分が多いものです。高カロリーでコレステロール、動物性脂肪の多いもので、ファストフード、ラーメン、揚げ物、ジュース、ケーキ、バター、脂の多い肉の過剰摂取はEDの引き金になる可能性があります。
EDの改善や予防にいいとされるのは以下のものがあります。
- 玄米や精製してない穀物、そばなどが主食としておススメ。
- 血流を改善する「アルギニン」が含まれる、鶏肉、大豆、魚介類など。
- 血管拡張作用がある「シトルリン」が含まれる、スイカ、メロン、きゅうりなど。
- 体内で血圧降下や神経伝達に働き「ペプチド」が含まれる、わかめ、鰹節、ゴボウ、イワシなど。
- 性機能を高める「亜鉛」が含まれる、牡蠣、アーモンド、豚レバーなど
他にも、血液をサラサラにする「EPA」が含まれる、サバ、イワシ、サンマなどの青魚や、血流を高める「イオウ化合物」が含まれる、ニンニク、玉ねぎ、ニラなどがあります。
避けた方がいい食事も、我慢をすることによるストレスもあるものです。食事の仕方や1週間でのバランスを見ながら、多くとり過ぎなければ問題はありません。
和食は脂分が少なく野菜も多く使われるので、健康的な食事と思われますが、意外と塩分や糖分が高い料理が多い事でも知られています。
出汁や香りで味わいを楽しみ、なるべく塩分や糖分を控えた薄味を目指してください。
食生活の改善は、乱れた食生活をしていた方が行えば、EDの改善やEDの予防に効果が期待できる方法です。
ED治療薬のように即時性はないですが、体質改善を目指したい方にはおススメの方法です。
適度な運動
適度な運動もEDの改善に適していると言われています。特に運動の中でも「有酸素運動」には以下のような有益な効果があります。
- 血液循環を促進する
- 体脂肪や糖質を分解する
- 通常時の血圧を安定にさせる
- 生活習慣病の予防
- 不安や緊張を軽減する
中でも血液循環の促進は、EDの改善には最適な条件です。正常な勃起をするためには、多くの血液を陰茎に集めることが必要となります。
血行不良が原因のEDの場合、有酸素運動により発汗や老廃物の排出が促され、勃起もしやすくなります。
有酸素運動とは、多くの酸素が必要な長時間の運動です。糖や脂肪を酸素と共に分解することで、筋肉を収縮させるエネルギー「ATP(アデノシン3リン酸)」を生成するため、有酸素運動と呼ばれています。
有酸素運動は中程度~高強度の運動の方が効果が高いと言われています。ジョギング、ランニング、サイクリング、水泳、登山が最適とされます。
その成果として、国際勃起機能指標のスコアが2.3~5.4点(3.9点)向上したとされます。
一部では長時間のサイクリングはEDになる可能性があると言われています。長時間サドルが男性の会陰部(校門と陰茎の間)を圧迫すると、陰茎の神経や血管が損傷する恐れがあると言われていました。
しかし、この説は医学的には否定されているため、四六時中自転車に乗るよほどの方ではない限り、その心配はないと言われています。不安な方は圧迫を受けないサドルにするか、長時間の運転を控えるのがおススメです。
ストレスの解消
ストレスは、自律神経のバランスを崩す原因の一つです。自律神経は内臓や血管の働きをコントロールし、体の調整を行っています。
交感神経と副交感神経の2種類があり、それぞれ緊張している時は交感神経、リラックスや勃起している時は副交感神経が優位の状態です。
ストレスがかかる状態では体が緊張し、交感神経が優位な状態となり勃起をしにくくなります。
ストレスはその他にも不眠や血圧の上昇などの原因となるため、溜まったストレスを解消する必要があります。
ストレスの解消法にはさまざまありますが、一番重要なのが蓄積したストレスで鬱々とした気分を取ることです。
運動、趣味に没頭する、映画鑑賞、レジャー、旅行、食事など、気分を切り替え、体がリラックスするものであればなんでも構いません。
自分のストレス解消に適した方法でストレスをため込まないようにしてください。