糖尿病では、合併症の1つとしてED(勃起不全)を引き起こす可能性があり、糖尿病ではない男性よりもEDの有病率が3.5倍高いといわれています。
しかし、糖尿病によるEDを発症した場合でも、ED治療薬を服用することで性行為時の勃起機能の改善につながる可能性があります。
このページで分かること
- 糖尿病でEDが起こる理由
- 糖尿病性EDの特徴や発症しやすい方の傾向
- 糖尿病性EDの改善方法
- 糖尿病の方がED治療薬を使う際の注意点
このページでは、糖尿病によってEDが起こる原因や、EDを発症しやすい方の特徴、改善方法を詳しく解説します。
ED(勃起不全)の症状について詳しくは、以下のページをご確認ください。 ED(勃起不全)とは
糖尿病性EDの特徴
糖尿病性EDには以下の特徴があります。
糖尿病により高血糖の状態が続くと、血管や神経に障害が起こり、血流や神経の働きが低下して、性行為時に十分な勃起が得られないなどの症状を引き起こします。
複数の原因が重なっている場合が多い
糖尿病性EDは、血管障害や神経障害、心因的要因など、複数の原因が重なっている場合があります。
複数の原因が組み合わさっているEDを「混合性ED」と言います。
糖尿病性EDは混合性EDに分類される場合があり、特に血管や神経のトラブル(器質性ED)とEDの症状によるストレス(心因性ED)の組み合わせがよく見られます。
加えて、年齢や肥満体型も発症リスクに影響する可能性があります。
EDが重症化する可能性がある
糖尿病性EDは、糖尿病ではない男性と比べて、EDが重症化しやすい傾向にあります。
重症化しやすい理由は、糖尿病によって勃起に関わる神経と、陰茎への血流に関わる海綿体の両方の機能が低下するためと考えられています。
65歳未満の日本人2型糖尿病患者を対象とした研究では、糖尿病による末梢神経障害が、重度のEDと強く関連することが報告されました。[1]
必ず重症化するわけではありませんが、糖尿病は、EDが重症化するリスクを高める可能性があります。
糖尿病の罹患期間が長いほど起こりやすい
糖尿病の罹患期間が長くなるほど、EDのリスクが上がる可能性があります。
50歳以上の男性に行った長期研究では、糖尿病の罹患期間が長いほど、EDのリスクが高まることが報告されました。[2]
糖尿病によるEDは、糖尿病の罹患期間と関連する可能性があります。
糖尿病患者のED発症率
糖尿病の男性はEDを発症しやすく、複数の研究をまとめた解析では、糖尿病のある男性におけるEDの有病率は約半数(約52.5%)でした。[3]
また、糖尿病のない男性よりも10〜15年早くEDを発症する可能性が示唆されています。
なかでも、糖尿病性EDの発症リスクは、生活習慣や年齢、合併症の有無などによって異なると考えられています。
次の項目では糖尿病性EDになりやすい人の特徴を詳しく紹介します。
糖尿病性EDになりやすい人の特徴
糖尿病性EDになりやすい人の特徴として以下が挙げられます。
- 高齢
- 血糖値の管理をしてない
- 長く糖尿病を患っている
- 糖尿病の合併症や動脈硬化がある
- 高血圧、脂質異常症を患っている
など
糖尿病性EDが見られる場合、全身疾患の1つとしてとらえるべきです。
食生活、喫煙、過剰な飲酒といった、他の要素も糖尿病性EDのリスクを高めるため、治療の一環として生活習慣も見直すことが望まれます。
糖尿病でEDが起こる原因
糖尿病は、血管や神経、海綿体のいずれにも障害が生じやすく、結果としてEDを発症しやすくなります。
勃起は、『脳』『神経』『血管』『海綿体』の4つが正常に連携することで起こります。
糖尿病による高血糖状態が続くと、血管や神経が損傷し陰茎への血流を妨げ、性的興奮や刺激が伝わりにくくなります。
血管のトラブル(動脈硬化)
EDを引き起こす原因の1つに、血管のトラブルである動脈硬化があります。
動脈硬化は、血管の弾力が失われ、血管の内側が狭くなることで血流が低下し、十分な血液を送り届けにくくなる状態です。
動脈硬化による血流低下の影響は、細い血管ほど現れやすいとされています。
特に陰茎に血液を送り込む陰茎動脈は、冠動脈や内頸動脈と比べて細いため、動脈硬化の影響を受けやすいとされています。
| 主な動脈の直径 | |
|---|---|
| 陰茎動脈 | 直径約1〜2mm |
| 冠動脈 (心臓の血管) |
直径約3〜4mm |
| 内頸動脈 (脳へとつながる血管) |
直径約5〜7mm |
動脈硬化によって陰茎内に十分な血液が流れ込まなくなると、十分に勃起できない、または勃起を維持できないといったEDの症状が現れることがあります。
また、糖尿病による血管障害や神経障害が進むと、朝の勃起が減少することがあります。
動脈硬化は糖尿病以外にも、喫煙や肥満、生活習慣病など複数の要因が考えられるため、気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
神経のトラブル(神経障害)
糖尿病の合併症である神経障害によって自律神経が損なわれると、ED(勃起不全)が起こることがあります。
糖尿病による神経障害では、手足のしびれや痛み、こむら返りなどの症状がみられることがあります。
神経障害では、主に以下の2つの神経が影響を受けます。
| 糖尿病性EDに影響のある神経 | |
|---|---|
| 感覚神経 | 痛みや温度、触覚などを伝える神経 |
| 自律神経 | 身体の機能を調整する神経 |
糖尿病による神経障害が進行して神経機能が低下すると、性的な刺激や興奮が伝わりにくくなることで、重度のEDに発展する場合もあります。
自律神経は、心拍や血圧、勃起など、本人の意思とは無関係に働く身体機能を調節しています。
糖尿病によって自律神経が障害されると、勃起に必要な神経伝達が低下し、EDにつながる場合があります。
神経障害が進行するとED治療薬の効果が得られにくい場合もあるため、適切な血糖コントロールを続けることが重要です。
海綿体の機能不全
糖尿病のある男性がEDを発症しやすい理由の1つに、海綿体の機能低下があります。
海綿体は陰茎内部にある組織で、性的刺激を受けて血液が流れ込むことで、陰茎を勃起させる役割を担っています。
勃起には海綿体の平滑筋が緩むことが必要ですが、糖尿病による高血糖が続くと、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の働きが低下し、一酸化窒素(NO)が作られにくくなることがあります。
その結果、海綿体の平滑筋が十分に緩まず、血液が流れ込みにくくなります。
また、慢性的な高血糖は海綿体の血管にもダメージを与え、海綿体に十分な血液が流れ込みにくくなります。
その結果、海綿体が十分に機能せず、EDを発症しやすくなります。
| 糖尿病による海綿体の機能低下 | |
|---|---|
| 平滑筋の 機能低下 |
一酸化窒素(NO)が減少し、海綿体の平滑筋が緩みにくくなる |
| 血管の 機能低下 |
海綿体の血管が傷つき、陰茎への血流が低下する |
このように、高血糖は海綿体の平滑筋と血管の両方に悪影響を与え、勃起の硬さや持続時間を低下させる原因となります。
糖尿病性EDの改善・治療法
糖尿病は完治が難しい病気ですが、糖尿病性EDの改善方法として、ED治療薬を服用する方法があります。
ED治療薬を服用する
ED治療薬を服用することで、性的刺激がある際の勃起をサポートし、ED症状の改善が期待できます。
ED治療薬は勃起を妨げる酵素を阻害し、陰茎の血流を促すことで勃起不全の改善が期待できます。
日本人の糖尿病男性を対象とした臨床試験では、ED治療薬のレビトラ10mgと20mgを服用した結果、どちらもEDの改善が見られました。[4]
しかし、ED治療薬には併用禁忌薬となる薬があるため、服用中の薬と併用できるか必ず確認する必要があります。
糖尿病であること自体は服用禁忌ではありませんが、合併症や服用中の薬、健康状態を確認する必要があります。
ED治療薬の種類や併用禁忌、注意点などは以下のページで詳しく解説しています。 ED治療薬の種類と比較・選び方
血糖のコントロールをする
糖尿病性EDを改善する方法として、血糖のコントロールがあります。
長期間にわたり血糖値が高い状態が続くと、血管や神経がダメージを受け、直接的なEDの原因となります。そのため、EDのリスクを減らすためにも血糖値を正常にする必要があります。
その際に1つの目安となってくるのが、血糖コントロール目標です。
| 目標 | 血糖値の正常化を目指す | 合併症予防 | 治療強化が困難 |
|---|---|---|---|
| HbA1c(%) | 6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 |
一般的には、HbA1cを7%未満に保つのが良いとされています。
血糖値のコントロール方法には以下のものがあります。
-
食事の管理や制限
バランスの取れた栄養を適切なカロリー量で取ることで、インスリンを分泌するすい臓の働きを軽減する -
定期的な運動や筋トレ
体を動かすことで、体内の糖の利用率や脂肪の代謝を高め、高血糖を防ぐ -
血糖値を下げる薬物治療
経口血糖降下剤やインスリン注射などによる血糖値を下げる治療
有酸素運動は血流を改善し、ED症状の軽減につながります。
血糖値のコントロールは、EDだけでなく他の合併症の予防・改善にもつながるため、積極的に取り入れてみましょう。
血管・神経の再生治療
EDの症状や原因によっては、血管や神経に対する再生治療が検討される場合があります。
-
幹細胞再生治療
幹細胞の自己複製や細胞分裂を利用し、血管や神経、陰茎組織の再生を促す治療。 -
衝撃波治療
陰茎に微弱な衝撃波を与えることで、毛細血管の自己再生を促す治療。
※当院でのED治療では対応しておりません。
ただし、これらの治療は、長期的な有効性や安全性に関するエビデンスが十分に確立されておらず、専門医に相談する必要があります。
当院ではED治療薬によるED治療を行っています。公式ラインを登録すると、ED治療薬についてのお得なご案内をお届けしております。
「性行為時に勃たない」など少しでも気になる症状があれば、ぜひご登録ください。
※LINE登録後はオンライン診療の予約も可能です
糖尿病性EDの予防・悪化させない方法
糖尿病性EDは、血管・神経・海綿体の機能不全といった複数の要因が関わるため、生活習慣や血糖管理が非常に重要です。
具体的には以下のような方法があります。
チェックリスト
-
血糖コントロール
- HbA1cを目標値内に維持する
- 食事療法・運動療法を継続する
- 必要に応じて薬物治療を医師と相談
-
健康的な生活習慣
- 禁煙する
- 適度な有酸素運動を週150分程度行う
- 体重を適正に保つ
- 飲酒は節度を守る
-
血圧・脂質管理
- 定期的に血圧を測定
- 血中コレステロール・中性脂肪をチェック
-
定期受診
- 糖尿病専門医・内分泌科で定期検診
- EDや血管・神経の状態を医師と確認
-
ストレス・睡眠管理
- 十分な睡眠を確保する
- ストレスをためすぎず、リラックス習慣を取り入れる
糖尿病性EDは完全に避けられない場合もありますが、生活習慣や血糖管理で予防・悪化防止が可能です。
EDに効果的なマッサージ・運動・筋トレの方法や、飲酒の適量などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
EDに効果的なマッサージ・運動・筋トレ
アルコールと勃起の関係や対策
以下の症状が出た場合は、早めに医療機関を受診し、治療を始めるほど改善しやすくなります。
- 性的興奮時に十分な勃起が得られない
- 勃起の硬さが以前よりも低下している
- 勃起が持続しない、または途中で硬さが失われる
- 性的欲求の減退を感じる
フィットクリニックではED治療薬を取り扱っているため、ED症状に悩んでいる方はお気軽に受診ください。
糖尿病はED発症リスクが高く早期相談が大切
糖尿病はEDのリスクを高める要因の1つです。
性機能について少しでも気になる点があれば、早期相談が大切です。
- 糖尿病では、血管障害や神経障害、海綿体の機能不全などによってEDを発症しやすい
- 性行為時の勃起不全はED治療薬で改善が期待できる
- 治療や生活習慣の改善に取り組み、症状の進行を防ぐ
糖尿病によるEDは、ED治療薬で改善が期待できる場合があります。
ただし、血圧の状態や服用中の薬によっては、ED治療薬が服用できないケースもあるため、自己判断ではなく必ず医師と相談しながら治療方法を検討してください。
当院では、それぞれの患者様に合わせたED治療をご提案しておりますので、お悩みの方はぜひご相談ください。
糖尿病とEDに関するよくある質問
糖尿病とEDの関係についてのよくある質問を医師が回答します。
-
- Q
糖尿病になると必ずEDになりますか?
-
AA糖尿病であっても、必ずEDになるとは限りません。ただし、糖尿病ではない男性と比べて、EDの有病率が3.5倍高いと言われています。
服部院長
- Q
-
- Q
糖尿病の薬とED治療薬は併用できますか?
-
AA糖尿病の薬とED治療薬の併用は可能です。しかし、ED治療薬には併用禁忌薬や併用注意薬があります。
また、薬の種類により効き目が変化する場合もあるため、服用中の薬があれば必ず医師に相談してください。
服部院長
- Q
-
- Q
糖尿病でも勃つことはできますか?
-
AA糖尿病では血管や神経の障害、海綿体の筋肉の機能低下などが起こるため、血液が性器に十分に流れず勃起が不十分になることがあります。
服部院長
- Q
-
- Q
糖尿病でもバイアグラを飲んでも大丈夫?
-
AA多くの場合、使用可能です。ただし、心血管系の病気や服用中の薬によっては注意が必要です。必ず医師に相談してから使用してください。
レビトラ(バルデナフィル)やシアリス(タダラフィル)も同様に医師の指示のもとで使用できます。
服部院長
- Q
-
- Q
糖尿病の人は性行為ができなくなりますか?
-
AA糖尿病だからといって、性行為ができなくなるわけではありません。
ただし、糖尿病ではED(勃起不全)のリスクが高まります。
勃起がうまくいかない場合でも、ED治療薬の使用や生活習慣の改善で、勃起機能をサポートできることがあります。
服部院長
- Q
関連記事
参考サイト
- [1] Furukawa S, Sakai T, Niiya T, et al. Diabetic peripheral neuropathy and prevalence of erectile dysfunction in Japanese patients aged <65 years with type 2 diabetes mellitus: The Dogo Study. Int J Impot Res. 2017 Jan;29(1):30-34. doi: 10.1038/ijir.2016.40. Epub 2016 Oct 27. PMID: 27784886.
- [2] Bacon CG, Hu FB, Giovannucci E, et al. Association of type and duration of diabetes with erectile dysfunction in a large cohort of men. Diabetes Care. 2002 Aug;25(8):1458-63. doi: 10.2337/diacare.25.8.1458. PMID: 12145250.
- [3] Kouidrat Y, Pizzol D, Cosco T, et al. High prevalence of erectile dysfunction in diabetes: a systematic review and meta-analysis of 145 studies. Diabet Med. 2017 Sep;34(9):1185-1192. doi: 10.1111/dme.13403. Epub 2017 Jul 18. PMID: 28722225.
- [4] Ishii N, Nagao K, Fujikawa K, et al. Vardenafil 20-mg demonstrated superior efficacy to 10-mg in Japanese men with diabetes mellitus suffering from erectile dysfunction. Int J Urol. 2006 Aug;13(8):1066-72. doi: 10.1111/j.1442-2042.2006.01480.x. PMID: 16903931.
- 糖尿病、性機能障害、膀胱障害について|NIDDK
- 特集 最近注目されている疾患と糖尿病の関わり-EDと糖尿病
- Penson DF, Latini DM, Lubeck DP, et al. Do impotent men with diabetes have more severe erectile dysfunction and worse quality of life than the general population of impotent patients? Results from the Exploratory Comprehensive Evaluation of Erectile Dysfunction (ExCEED) database. Diabetes Care. 2003 Apr;26(4):1093-9. doi: 10.2337/diacare.26.4.1093. PMID: 12663579.
- Saenz de Tejada I, Goldstein I, Azadzoi K, et al. Impaired neurogenic and endothelium-mediated relaxation of penile smooth muscle from diabetic men with impotence. N Engl J Med. 1989 Apr 20;320(16):1025-30. doi: 10.1056/NEJM198904203201601. PMID: 2927481.
この記事の監修
(はっとり けいた)
【略歴】
- 平成17年
- 医療法人財団 河北総合病院 勤務
- 平成29年
- ゴリラクリニック 池袋院 管理者
- 令和5年~
- フィットクリニック院長 勤務


糖尿病とEDは併発しやすいことが分かっています。
糖尿病の方で「途中で勃起が弱くなる(中折れする)」「十分に硬くならない」といった症状がある場合、EDを併発している可能性があります。