A妊婦がカプセルから漏れた薬剤に直接接触した場合は危険性がありますが、精液を介して子宮で接触した場合は、ヒトの胎児の生殖器発育に影響を及ぼす可能性は低いと考えられています。動物実験では、ほとんど問題は無いという結果が出ています。しかし、どうしても精液中のデュタステリド成分の存在を無くしたい、といった場合は、服用を6か月間は止める必要があります。
ザガーロとは
「ザガーロ」は、グラクソ・スミスクライン社によって開発販売されている男性型脱毛症(AGA)の治療薬です。
ザガーロは有名なAGA治療薬「プロペシア」に次ぐ「第二のAGA治療薬」と呼ばれています。
テストステロンをAGAの原因となる「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換する酵素「5a還元酵素(5αリダクターゼ/5AR)」には、Ⅰ型とⅡ型があります。
プロベシアの有効成分「フィナステリド」がⅡ型のみに作用する成分なのに対し、ザガーロの有効成分「デュタステリド」はⅠ型とⅡ型のどちらにも作用します。
そのため、これまで以上の発毛効果が期待できるということで、発売当時には大変注目を浴びました。
ザガーロは、もともとは前立腺肥大症の薬として2001年に米国でアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けています。
2009年には日本でも前立腺肥大症の治療薬として厚生労働省の承認を受けていますが、AGAの治療薬として承認されたのは2015年になってからとまだ新しい薬であるため、これからの薄毛治療薬として注目されています。
ザガーロの効果
ザガーロは、男性型脱毛症(AGA)における薄毛を抑制する効果があります。ザガーロの有効成分は「デュタステリド」です。
男性は体内で男性ホルモン「テストステロン」を分泌します。
近年では健康ブームも手伝って、このテストステロンが筋肉の増強に欠かせないということをご存じの方も多いでしょう。
テストステロンは筋肉だけではなく、精子の生成や性欲の上昇にも関わる大事なホルモンです。
このテストステロンが、「ジヒドロテストステロン(DHT)」に姿を変えると、男性生殖器の生成や、薄毛に関わるのです。
テストステロンをDHTに変えるのは「5a還元酵素(5αリダクターゼ/5AR)」と呼ばれる酵素です。
デュタステリドは、この5αリダクターゼの働きを阻害することでDHTの生産量を低下させ、薄毛を抑制してくれます。
これにより、髪が本来の発毛サイクルを取り戻し、薄毛によって細く短くなってしまった髪の毛を太く長く育てることができるようになります。
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類があるのですが、ザガーロはその両方の5αリダクターゼに対して有効です。
ザガーロの見た目と種類
ザガーロの見た目は、薄い赤色の柔らかいカプセル錠です。
ザガーロの用量は0.1mgと0.5mgの2種類で、海外でもこの2種類が流通していますが、日本国内の医療機関においても0.1mgと0.5mgの2種類が処方されています。
ザガーロの特徴
ザガーロの最大の特徴は、その高い薄毛抑制効果が認められていることです。
それまでAGA治療薬として代表的な存在だったプロペシアの、1.6倍もの薄毛抑制効果があるとの報告があります。
日本皮膚科学会が発表している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」では、ザガーロの有効成分デュタステリドの男性型脱毛症における推奨度をAとしています。
これは「男性型脱毛症の際は、デュタステリドを用いた治療を強く勧める」という意味で、Aランクが付いているということは、デュタステリドを用いた治療が最も有効性と安全性が高いものとして認められているということです。
デュタステリドの効果は、5αリダクターゼの働きを阻害してDHTの生産量を低下させることです。
ザガーロの服用は薄毛を抑制することにはつながりますが、これは発毛する機会を作っただけにすぎません。
ここから更に発毛効果を上げるには、毛根に栄養や酸素を送って働いてもらう必要があります。
そのため、AGA治療を専門とするクリニックでは、ザガーロと一緒に「ミノキシジル」を処方することが多くあります。
ミノキシジルには血管拡張作用があり、毛根の働きを活発にすることで発毛や育毛を促すので、ザガーロ単体で使用するよりも更なる発毛効果が期待できます。
ちなみにミノキシジルは、外用薬でも内服薬でもどちらでも同等の効果を見込むことができます。
ザガーロを服用し始めると初期脱毛を起こすことがありますが、これは毛髪の発毛サイクルの中ではよくあることです。
ザガーロやミノキシジルの効果で新しい髪の毛が成長しようとすると、古い髪の毛は押し出されるようにして抜けていきます。
そのため、AGA治療初期は脱毛が増えたように感じるのです。初期脱毛は、新しい発毛サイクルが整うと、自然と治まっていきます。
なお、ザガーロの効果は「薄毛を抑制すること」のため、服用を中止すると再び5αリダクターゼが活性化し、頭髪が服用する以前の薄さに戻ってしまうことが多くあります。
ザガーロは半年間は服用することが推奨されている薬ですが、ザガーロを用いてAGA治療を開始するときは、もっと長い期間に渡って飲み続けなければならないこともあるということを理解しておく必要があります。
ザガーロの用法・用量
通常、成人1日1回(0.1mg~0.5mg)を、コップ1杯程度の水かぬるま湯で服用します。
食前や食後などのこだわり無く服用することができますが、長期間に渡り毎日服用し続けなければならない薬のため、飲むタイミングを決めておくのがよいでしょう。
例えば、「朝食後に飲む」などのルーティンを自分で決めておくと、服用忘れを防ぐことができます。
仮に飲み忘れてしまった場合、2日分まとめて服用するなどの行為は意味がないので、1日の服用量を守ってください。
大切なのは、決められた用量を6か月間服用し続けることです。
ザガーロの注意事項
医薬品を使用する際には必ず注意事項がありますが、ザガーロの服用時にもあります。
注意事項を守ることは、副作用が現れることを防いだり、薬が正しい効果を発揮するためには大切なことです。
特に、何かしらの病気に罹患している場合や、すでに服用している薬がある場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
ザガーロは男性ホルモンに作用する医薬品のため、小児や女性、特に妊産婦は注意すべき事柄があります。
また、ザガーロの有効成分であるデュタステリドは血中半減期が長いため、服用を中止してから6か月間は献血することができません。
服用してはいけない人
服用してはいけない人として、以下があげられています。
- ザガーロの成分「デュタステリド」や「フィナステリド」などの「5α-還元酵素阻害薬」と呼ばれる種類の薬に対してアレルギーを起こしたことのある方
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- 未成年
- 20歳未満の未成年の服用は安全性が確立されていません。
この薬剤は、皮膚からも吸収されるので、特に幼児や乳児、新生児には触れさせないようにする必要があります。
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- 女性
- 女性への使用は安全性が確立されていません。
この薬剤は、皮膚からも吸収されるので、妊娠または妊娠の可能性のある女性は触れることも禁忌です。
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- 肝機能障害が重い方
- 薬剤の成分の血中濃度が上がるため服用ができないとされていますが、肝機能障害の重症の度合いについては医療機関によって基準がマチマチです。
そのため、肝障害がある方は自己判断で使用することをせず、主治医に確認するようにしましょう。
女性や未成年に対して危険な理由
ザガーロをはじめとする「5α-還元酵素阻害薬」は、テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に還元されるのを阻害する働きをします。
しかしDHTは男性生殖器の成育にも関わるので、体の発育が不完全な未成年が触れたり服用したり、妊婦がこの成分に触れたりすると、男性器や男性機能の発育に障害を起こしたり、胎児は奇形になる危険性があります。
これらの薬剤は、服用することと皮膚に触れることでも吸収されます。そのため、服用はもちろん、触れることも禁忌とされているのです。
※もし触れてしまったら、石鹸や水ですぐに洗い流して、医師に相談しましょう。
ザガーロの併用禁忌
ザガーロには、特に併用禁忌とされている薬剤はありません。
ただし、医薬品はそれ単体であればよい作用をする薬であっても、併用することで逆に体に悪影響を及ぼすことがあります。
現在服用されているお薬がある場合は、薬品名がわかるようにしておいたうえで、主治医に確認してもらいましょう。
ザガーロの併用注意
ザガーロの併用注意薬には、以下のようなものがあります。注意すれば、併用は可能なものになります。
現在服用されているお薬に併用注意薬がある方は、まず医師にご相談ください。
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- CYP3A4阻害薬
- ザガーロの成分は主に肝臓で吸収されます。
CYP3A4阻害薬と併用することで血中の薬剤成分の濃度が上がることがあるため、併用する際は医師に確認しましょう。
ザガーロの副作用
ザガーロの副作用には、以下のような症状があげられています。
- 初期脱毛
- 頭痛やめまい
- 腹痛
- 下痢
比較的軽い副作用として、上記があげられています。
初期脱毛は、薄毛治療を始めるとよく起こることです。
デュタステリドの成分で新しい髪の毛が成長しようとすると、古い髪の毛は押し出されるようにして抜けていきます。これが初期脱毛の原因です。
頭痛や腹痛、下痢については、服用時の体調によっても影響されるものなので、成分による副作用であるとは特定できませんが、長い間続く場合は一旦服用を中止して、医師に相談されることをおすすめします。
そのほかの比較的重い副作用として、以下があげられています。
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- 肝機能障害
- デュタステリド成分を含有する薬剤を服用して、肝機能が低下すると、体が黄色くなる黄疸という症状がみられることがあります。
肝機能障害を起こす前触れは、体がだるくなったり、疲れやすくなったりすることです。
このような症状が現れ始めたら、一旦服用を中止して医療機関で血液検査をしてみることをお勧めします。
- 勃起不全(ED)
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- 性欲減退
- デュタステリド成分を含有する薬剤を服用すると、勃起不全(ED)や性欲減退、精液の量が少なくなるなど、性機能の低下が起こることがあります。
これは、デュタステリドをはじめとするAGA治療薬がもともと前立腺肥大症の薬として開発されたことと関係があるのではないかと言われています。
使用実績調査では約0.5%と非常に少ない副作用となりますが、勃起不全を感じたら一旦服用を中止して医師に相談することをお勧めします。
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- 過敏症(アレルギー)
- 服用で、薬に対するアレルギーを発症することがあります。
赤い蕁麻疹や、体がかゆくなるなどの症状が、口腔内、唇、咽喉に現れると注意が必要です。
重症化するとアナフィラキシーショックを起こすことがありますので、特にアレルギー体質の方は使用前にパッチテストをするなどして確認しましょう。
ザガーロの作用機序
ザガーロの有効成分「デュタステリド」は、AGAの原因となる「ジヒドロテストステロン(DHT)」を生成する「5a還元酵素(5αリダクターゼ/5AR)」の働きを阻害することでDHTの生産量を低下させ、男性型脱毛症による薄毛を抑制します。
5α-還元酵素にはⅠ型とⅡ型があり、頭皮においてはそれぞれがカバーしている範囲が異なっています。
Ⅰ型は側頭部と後頭部の皮脂腺、Ⅱ型は前立腺と前頭部から頭頂部の毛乳頭に多く存在します。
頭皮の脂が気になる方はⅠ型、体毛やヒゲが濃い方はⅡ型が、それぞれ多い傾向にあります。
それまでのAGA治療薬であった「プロペシア」「フィナステリド」がⅡ型のみに作用する成分であるのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型のどちらにも作用します。
Ⅰ型とⅡ型両方の5a還元酵素を阻害することで、頭皮におけるDHT量の減少が効果的になります。
その結果、ヘアサイクルの成長期が維持されるようになり、太く長い髪の毛を増加させることにつながるのです。
ザガーロの作用時間
作用時間とは、薬の効果が持続している時間のことです。
ザガーロは、血中濃度を一定に保つために1日1回1錠の服用で半年間飲み続けることを推奨されているので、服用している半年の間は薬の効き目が続いているということになります。
ザガーロのジェネリック
現在、日本国内で承認済みのザガーロのジェネリック薬はありません。
ザガーロと同じデュタステリドを有効成分とする医薬品は他に、以下の薬があります。
- 前立腺肥大症の治療薬「アボルブ」
オリジナル発毛薬セット「リクレシタ」
当クリニックでは、ザガーロのデュタステリドと同様に5αリダクターゼへ作用にする育毛成分フィナステリドと、発毛成分ミノキシジルを主成分とした発毛薬セットを処方しています。
これら以外に、髪に必要なビタミンやアミノ酸を配合したサプリも含まれているので、有効成分で発毛を促しつつ体質改善も期待できます。
外用薬と内服薬(タブレット)がありますが、女性用にはフィナステリドは含まれません。
処方にあたって詳しくはカウンセラーにご相談ください。
よくある質問
A空腹時の投与と食後の投与では、血清中の成分動態が多少変化するものの、その変化はわずかなものでした。そのため、食事の影響はほとんど受けないと言っていい値です。食事のことは気にせず服用して差し支えありません。
A個人差はありますが、ヘアサイクルが正常に戻り脱毛が止まるまではおよそ3~6か月程度を要するとされています。ザガーロも6か月間服用を続けることが推奨されていますので、この期間飲み続けて改善が見られない時は医師にご相談ください。
A服用を中止すると、頭皮の5α-還元酵素が再び活性化し、頭髪が服用以前の薄さに戻ってしまう可能性はあります。ザガーロは半年間は服用することが推奨されている薬ですが、薬を用いたAGA治療を開始するときは、更に長い期間に渡って飲み続けなければならないこともあるということを理解しておく必要があります。
Aザガーロに関わらず、AGA治療は医療保険が適応される治療ではありません。治療費は全額自己負担となります。医療機関によって価格は異なりますので、各医療機関にお問い合わせください。