食欲抑制剤である「サノレックス」については、BMI35以上であれば保健が適用となります。
<BMIの計算方法>
BMI=体重÷(身長×身長)
ダイエット外来では肥満の解消・改善を目的として、医師の指導の元で使用できるダイエット薬がいくつかあります。
GLP1受容体作動薬 | SGLT2阻害剤 | ビグアナイド系 | 膵リパーゼ阻害薬 | 食欲抑制剤 | |
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特徴 | 体質から痩せやすくする | 糖質制限に近い効果が得られる | 肝臓に作用し糖新生を抑える | 食べたいものを食べながらダイエットできる | 高度肥満症であれば保険適用 |
効果 | 血糖値の上昇を抑えて脂肪を溜め込みにくくする | 糖の吸収を30〜50%抑える | 血糖値の上昇を抑えて脂肪を溜め込みにくくする | 脂質の吸収を抑える | 食欲を抑える |
主な副作用 | 下痢・便秘・吐き気・嘔吐 など | 口の渇き・脱水・倦怠感 など | 下痢・悪心・食欲不振 など | 便意のコントロールが難しくなる・下痢・ビタミン不足 など | 口の渇き、便秘など |
飲み方・ 使い方 |
1日1回1錠 / 1日回自己注射 | 1日1回1錠 | 1日2〜3錠 | 1日1〜3カプセル | 1日1〜3錠 |
費用相場/ 1か月分 |
2万円前後 | 1.5万円前後 | 7千円前後 | 1万円前後 | 1.5万円前後 |
詳細 |
1つずつご紹介していくので、少しでもラクに体重コントロールや体系維持したいという人は今後のダイエット治療の参考にしてみてください。
GLP1受容体作動薬とは、アメリカなどの先進国で「抗肥満薬」として認められているお薬です。
体内にもともと存在するGLP1は食欲抑制ホルモンと同様の作用があり、身体に補充することで主に3つの作用が期待できます。
食事を摂りながらでも自然に摂取カロリーが抑えられるため、ダイエットの辛い食事制限によるストレスやリバウンドの心配もありません。
またGLP1は基礎代謝をUPさせるので脂肪も燃えやすくなり、太りにくい体質へと変わる効果も期待できます。
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商品名/成分名 | リベルサス/セマグルチド |
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特徴 | 効き目が長く続く |
飲み方・使い方 | 1日1回空腹時(起床時など)に1錠服用 |
主な副作用 | 胃腸症状(吐き気・下痢・胃のムカつきなど) |
費用相場/1か月分 | 3mg:1万円前後 7mg::2万円前後 14mg:3万円前後 |
リベルサス(セマグルチド)は、GLP1受容体動作薬としては世界初となる経口タイプのお薬です。
飲み薬の登場によって自己注射のみであった選択肢が広がり、注射が苦手な人にとってハードルが下がったことで治療が受けやすくなりました。
また特徴として、リベルサス(セマグルチド)は半減期が長いです。
1日1回の服用で安定した効き目を長く持続してくれ、海外の臨床試験では68週の服用で-15.3kgの体重減少がみられたことがわかっています。
すぐに効果は出ませんが、目安として3〜4ヶ月目から身体に起こる変化を実感できるはずです。
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商品名/成分名 | サクセンダ/リラグルチド |
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特徴 | 世界で認められた抗肥満薬 |
飲み方・使い方 | 1日1回朝食前に太もも・上腕・腹部のいずれかに注射する |
主な副作用 | 胃腸症状(吐き気・嘔吐・食欲不振・胃のムカつきなど) |
費用相場/1か月分 | 2万円前後 /1 本 |
サクセンダ(ビクトーザ、リラグルチド)は、日本の厚生労働省にあたるFDA(米国医薬品局)やEMA(ヨーロッパ医薬品局)、KFDA(韓国医療食品安全局)などから抗肥満薬として認められた安全性の高い注射剤になります。
自己注射になるので抵抗や傷みを想像してしまい、苦手意識を持たれる人もいるかもしれません。
しかし、採血などの太い針と違い極細針なので痛みもほとんどなく、個人でも注射を打つことができます。
また効果についても、海外で3,731人の肥満患者を対象に行われた56週間の試験の結果からは、92%の人に平均8.4kgの体重減少が認められています。
使い続けることで効果を維持できるため、使用中に食事管理や運動も併せて行い、治療後も痩せやすい環境を整えられると理想的です。
SGLT2阻害剤は、2014年から日本でも使われるようになった糖尿病のお薬です。
体内の余分な糖を尿といっしょに排泄するため、低糖質ダイエットに近い効果が得られます。
SGLT2(血液に糖を運ぶ物質)の働きをブロック
⇩
ブドウ糖が血液に再吸収される量を減らす
⇩
再吸収されなかったブドウ糖が尿といっしょに排泄させる
1日あたり200〜500kcalほどの糖が排泄されるので、1ヶ月であれば6,000〜15,000kcalが排泄される計算です。
体重1kgを減らすのに約7,000kcalの消費が必要になることから、1ヶ月で1〜2kgほどの体重減少効果が見込めるでしょう。
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商品名/成分名 | フォシーガ/ダパグリフロジン |
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特徴 | 食事を摂りながらでも糖質カットできる |
飲み方・使い方 | 1日1回1錠 |
主な副作用 | 膀胱炎・便秘・頻尿 など |
費用相場/1か月分 | 2万円前後 |
フォシーガ(ダパグリフロジン)は、2014年に日本で承認された比較的新しいSGLT2阻害剤です。
糖尿病の治療薬ではあるものの、体重減少効果があるため応用してダイエット治療に用いられています。
注意点として、フォシーガ(ダパグリフロジン) はSGLT2阻害剤の中でも性器感染症や尿路感染のリスクが高いです。
もともとリスクを抱えている人は悪化することもあるので、事前に医師に確認してもらうようにしましょう。
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商品名/成分名 | ルセフィ/ルセオグリフロジン |
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特徴 | 食事を摂りながらでも糖質カットできる |
飲み方・使い方 | 1日1回1錠 |
主な副作用 | 膀胱炎・便秘・頻尿 など |
費用相場/1か月分 | 1.5万円前後 |
ルセフィ(ルセオグリフロジン)は、2型糖尿病の治療に用いられるSGLT2阻害剤です。
効果についてはフォシーガと変わらず、同じように余分な糖を尿といっしょに排泄することで体重減少効果が得られます。
ルセフィに限らずSGLT2阻害剤に言えることですが、より効果を得るためには食事内容の見直しが必要になります。
しかし必要以上に糖質カットしてしまうと、逆に糖質が不足してしまい下記のような副作用が現れる可能性があるため危険です。
こうした危険な症状が現れることもあるので必ず医師の指示に従い、ダイエット目的で服用する場合であっても適度に炭水化物を摂るようにしてください。
ビグアナイド系は糖尿病治療薬の中でも歴史の長いお薬になり、血糖をコントロールすることで体重を増えにくくするお薬です。
血糖値が上がるのを抑えることで脂肪を溜め込みやすい体質を改善し、食欲も抑えられるのでカロリーコントロールも容易になります。
また低血糖を起こしにくいのでダイエットのサポートはもちろん、ダイエット後の体重維持に役立てられるケースもあります。
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商品名/成分名 | メトグルコ/メトホルミン |
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特徴 | 肥満体型や脂肪肝の人に良く効く |
飲み方・使い方 | 1日2〜3回 |
主な副作用 | 下痢・悪心・食欲不振 など |
費用相場/1か月分 | 7千円前後 |
メトグルコ(メトホルミン)は、1950年代から使用されているお薬です。
2型糖尿病の中でも肥満体型や脂肪肝の人に良く効くとされており、エビデンスも豊富なことからダイエット治療にも用いられています。
2012年には、199人(投与群154人/非投与群45人)を対象に行われた6ヶ月間のドイツの研究で、次のようなダイエット効果が得られたことがわかっています。
<平均体重減少>
投与群 : -5.8kgの減少
非投与群 : +0.8kgの増加
BMI(肥満度指数)が35.3の人が対象となっているので、このデータからもメトグルコ(メトホルミン)が肥満の人に良く効くと言えるでしょう。
膵リパーゼ阻害薬は、脂肪分解酵素である膵リパーゼの働きをブロックするウェイトコントロール薬です。
食事に含まれる脂質の約30%をカットし体外に排泄させるため、食べたいものを我慢しなくても短期間での効果が望めます。
膵リパーゼ(脂肪分解酵素)をブロック
⇩
食事に含まれる脂質
(油分や脂肪分)をカット
⇩
便といっしょに体外に排泄される
薬によってカロリーコントロールができ、中性脂肪(トリグリセリド)の吸収を抑えることで内臓脂肪も付きにくくなります。
数あるダイエット薬の中でも目で見て効果を実感しやすく、油物を好んで口にする機会が多い人や、つい食べ過ぎてしまう人に向いている薬と言えるでしょう。
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商品名/成分名 | ゼニカル/オルリスタット |
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特徴 | 食事の脂質を約30%カット |
飲み方・使い方 | 1回1カプセル(食前あるいは食直後) |
主な副作用 | 便意のコントロールが難しくなる・下痢・ビタミン不足 など |
費用相場/1か月分 | 1万円前後 |
ゼニカル(オルリスタット)は、脂質が原因の肥満を改善するお薬です。
効果を実感するまでには2〜3週間が目安となるので、少なくとも2週間は服用を続けるのが望ましいです。
なお、食事に含まれる脂質の約30%を分解させずに体外に排泄するので、必要な脂溶性ビタミンA・D・E・Kの不足をカバーするマルチビタミンとの併用が推奨されています。
また、ゼニカル(オルリスタット)で気を付けておきたいのが次のようなことです。
炭水化物(糖質)中心の食生活の人であれば、ゼニカル(オルリスタット)は適さないので注意してください。
食欲抑制剤は、減量をサポートするお薬です。
仕組みとしてはシンプルで、食欲を抑えることで食事量をコントロールできます。
脳の視床下部(食欲中枢)に作用
⇩
トランスポーター
(神経伝達物質を送る装置)の働きを阻害
⇩
神経伝達物質(ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなど)の量が増える
⇩
満腹中枢が刺激され食欲を抑える
少量の食事でも満足感が得られるようになり、「摂取カロリー<消費カロリー」となることで体重減少の効果が得られるようになります。
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商品名/成分名 | サノレックス/マジンドール |
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特徴 | 少量の食事で満腹感が得られる |
飲み方・使い方 | 1日1回1錠 |
主な副作用 | 口の渇き、便秘など |
費用相場/1か月分 | 1.5万円前後 |
サノレックス(マジンドール)は1992年に厚生労働省の承認を受けた、国内初の食欲抑制剤です。
プラセボ(偽薬)と比較した臨床試験では、3ヶ月の服用で1日の摂取カロリーが減少したことがわかっています。
臨床試験結果 | ||
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<服用開始前> | <服用3ヶ月> | |
サノレックス |
945kcal
⇒
746kcal
|
|
プラセボ(偽薬) |
937kcal
⇒
1,185kcal
|
ただし、サノレックス(マジンドール)には脳を覚醒する作用があります。
依存を引き起こすこともあるので使用期間は3ヶ月までとなり、短いほど良いとされている長期服用には向かないお薬であることは覚えておきましょう。
また1ヶ月で効果がない場合、服用は中止となります。
ダイエットサプリは使用するだけで痩せることはできるのか?
以下でダイエットサプリの効果や役割について解説していきます。
ダイエットサプリの効果は、次のとおりです。
医薬品のように炭水化物や脂質の吸収を直接抑えたり、食欲そのものを抑えるなどの効果はダイエットサプリにはありません。
ダイエットで行う食事制限や運動の効果をサポートするための栄養補助食品となり、体重減少が期待できるダイエットサプリは存在しないので覚えておきましょう。
ダイエットサプリに含まれている成分の補助的な役割をいくつか例を用いて見てみましょう。
アルギニン・L-カルチニンなど
⇨ 運動前の服用で脂肪が燃焼しやすくなる
難消化性デキストリン・桑の葉・サラシアなど
⇨ 炭水化物を口にする機会が多い
ビタミン類など
⇨ 食制限による栄養不足
こうした栄養の中には科学的根拠に基づいた機能表示が行える、トクホなどの「保健機能食品」などもあります。
ダイエットの目的に合わせて、ご自身のライフスタイルに必要なダイエットサプリを選んでみると効果を実感しやすくなるはずです。
大きく分けるとダイエットサプリは以下の3種類にわけられています。
ダイエット薬のメリット
ダイエットサプリのメリット
ダイエット薬のデメリット
ダイエットサプリのデメリット
それぞれを比較してみると、次のようなことが言えます。
ダイエット薬:肥満の改善
ダイエットサプリ:体型維持
肥満を改善するには、単純に1日の摂取カロリーを消費カロリー以下にすれば良いだけです。
ただ無理な食事制限はストレスやリバウンドの原因になり、仮に痩せても体調を崩してしまうケースも珍しくありません。
健康的に痩せるためにもダイエット薬で体重をコントロールし、治療後にダイエットサプリや食事・運動による体型維持が理想的と言えるでしょう。