カンジダ菌を少量持っている程度なら問題ないですが、過剰に増殖すると症状が出てしまいます。
膣内のバランスを元に戻すためにも、治療が必要です。
膣カンジダ(カンジダ症)は、膣内でカンジダ菌が過剰に増殖することで起こる感染症です。
膣カンジダの基本情報
原因菌 | カンジダ真菌 |
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症状 | かゆみ、灼熱感など |
おりもの | カッテージチーズ状やおかゆ状 |
原因 | 免疫力の低下や外陰部の蒸れなど |
改善策 | イミダゾール系の薬の投与 |
市販薬 | 再発時のみ投与可能 |
※症状やおりもの、原因は上記内容に当てはまらない場合もあります
膣カンジダは多くの女性が感染する可能性があるため、「自分は膣カンジダかも?」という方はこちらのページを参考にしてみてください。
膣カンジダとは、身体の常在菌であるカンジダ菌がなんらかの原因によって膣内で過剰に増殖することで起こる感染症です。
膣内は普段、デーデルライン桿菌(乳酸菌の一種)などによってバランスが保たれています。
カンジダ菌はもともと多くの女性が持っており、膣内環境のバランスが良い状態であれば問題のない菌です。
ただし、免疫力の低下や蒸れなどでカンジダ菌が増え、膣内環境のバランスが崩れたときに、かゆみやおりもの異常などの症状が表れます。
「性感染症の1つ」と誤解されやすいですが、実際には性行為による感染は全体の約5%程度に過ぎません。
症状が表れた際は、重症化や長期化を防ぐためにも早めの対処が必要です。
バイエル薬品が18歳~45歳の女性を対象に行った調査によると、女性の16.7%、約5人に1人が膣カンジダの発症経験があることがわかりました。
さらに、発症したことがある100人に対して再発の経験があるか質問すると、54.0%が再発を経験していました。
これらの調査から、膣カンジダは一度治療しても再発しやすく、多くの女性が悩んでいることがわかります。
膣カンジダは性感染症ではありませんが、性行為によって感染する可能性があります。
ただし感染確率が低い上に、男性は症状が出づらいため感染に気づかない場合も多いです。
感染した女性が治療を完了しても、相手の男性が感染している場合、お互いに感染を繰り返すことがあります(ピンポン感染)。
そのため、女性が膣カンジダを発症している間は性行為を避けましょう。
男性自身も、念のため検査を受けることをおすすめします。
膣カンジダが発症した場合、症状としておりものや膣・陰部に異常が起こります。
このような症状が起こったら、膣カンジダを疑ってみましょう。
ただ、おりものの増加のほか、膣や陰部の異常などは性感染症などでも見られる症状です。
適切に治療するためには、検査や診察を受けて原因を調べることが大切です。
膣カンジダと似た症状が出る疾患には注意が必要です。
各疾患で使用する薬が異なるため、検査などで区別する必要があります。
膣カンジダと似た疾患
膣トリコモナス症 |
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膣や外陰部:かゆみ、刺激感、発赤など おりもの:泡状、悪臭 |
細菌性膣症 |
膣や外陰部:まれにかゆみ(炎症は少ない) おりもの:灰白色、悪臭 |
クラミジア |
膣や外陰部:かゆみ、痛みなど(無症状が多い) おりもの:増加、悪臭 |
また、膣カンジダを発症中は免疫力が下がっているため、ほかの感染症にもかかりやすくなっています。
どれか1つではなく併発している恐れもあるため、疑わしい疾患は検査しましょう。
膣カンジダは、体調の変化や生活習慣などで起こる「自己感染」のケースが多いです。
性行為が原因となることもありますが、割合は全体のうち5%と、多くはありません。
性行為以外の身近なところに原因があるため、生活習慣を変えないと簡単に再発する恐れがあります。
言い方を変えれば、原因となる生活習慣を変えれば、再発の可能性を大きく下げることができます。
そのため、膣カンジダに感染した場合は原因を特定して、治療と並行して原因の行動を変えることが大切です。
膣カンジダは、主におりものや膣内の分泌物を綿棒で採取して検査します。
鏡検法
膣の内容物を顕微鏡で観察し、カンジダの存在を目視で確認する
培養法
膣の内容物を2~3日かけて培養し、カンジダの存在を確認する
なお、検査は医療機関ではもちろん、検査キットを使えば自宅で行うことも可能です。
当院でも膣カンジダの検査キット販売を行っておりますので、少しでも不安な方は以下からご予約ください。
医師による検査は、ほとんど医師に任せて行うことができます。
そのため、膣の内容物は医師が採取することが多いです。
医師とのやりとりが必要になるほか、場合によっては膣の入り口に膣鏡(クスコ)という器具を入れて検査することもあります。
どれも必要だから行うことですが、心理的負担がかかる場合があるため注意してください。
検査キットは自分のタイミングで検査ができるため、自由度が高い方法です。
長い綿棒を自分で膣内に挿入するため、不安に感じる場合もありますが、痛みはほとんどありません。
採取した検体は検査機関に送って調べます。
そのため、結果が出るまでに数日かかることが多いです。
当院のカンジダ治療薬 | |
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女性 | オキナゾール膣錠 600mg |
女性・男性 | オキナゾールクリーム 1% 10g |
処方数/日 | 膣錠:1錠 / 1日間 クリーム:1本 / 7日間 |
費用 | 各7,000円
※併せて検査キット購入の場合は2,000円引き |
用法用量 | 膣錠:1週1回1錠を膣深部に挿入 クリーム:1日2~3回患部に塗布 |
副作用 | 膣錠:局所発赤、皮膚刺激感 など クリーム:発赤、過敏症、発疹 など |
剤型は、膣錠や膣坐剤、経口薬、軟膏やクリームなどの外用薬があります。
剤型それぞれの使い方について、詳しく解説します。
※当院では膣錠とクリームのみの処方を行っております。
膣錠や膣坐剤は、膣内に薬を直接入れて溶け崩れることで作用するお薬です。
膣錠や膣坐剤には、①連日投与する方法、②週1回投与する方法があります。
①連日投与する方法
クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、オキシコナゾール硝酸塩のいずれか100mgを1日1錠、6日間連続で投与する
②週1回投与する方法
イソコナゾール硝酸塩300mgを1回2錠、またはオキシコナゾール硝酸塩600mgを1回1錠投与する
効き目は連日投与の方が週1回投与よりもやや優れています。
経口薬は、身体の内側から抗真菌薬として作用します。
投与の仕方は、フルコナゾール150mgを1回投与するのみです。
効果は膣錠とほとんど変わりません。
ただ、妊娠中の方は服用できないため、膣錠や膣坐剤で対処する必要があります。
軟膏やクリームなどの外用薬は、膣カンジダによる外陰部のかゆみなどを治療するために使用します。
イミダゾール系のお薬を1日2~3回に分けて塗布します。
膣錠や膣坐剤と併用して治療を進めるのが理想的です。
膣カンジダは、再発の場合のみ市販薬で治療することができます。
初回から市販薬を使用してはいけない理由は、初めて炎症が出た際にそれが膣カンジダによるものか、別の感染症によるものか自分で判断するのは危険なためです。
また、薬を選ぶ際は、以前医師に処方された薬と同じ成分のものにしましょう。
自己判断で薬を変えた際に身体に合っていないと、以前はなかった副作用が出る可能性があります。
なお、市販の膣カンジダ治療薬は第1類医薬品なので、購入の際は薬剤師の説明を受ける必要があります。
膣カンジダは性行為でパートナーに感染する可能性があります。
また、膣カンジダを発症する時は抵抗力が落ちているので、性感染症に感染する可能性もあります。
パートナーやご自身を守るためにも、完治するまで性行為は控えましょう。
膣カンジダは軽症の場合、膣の自浄作用が働いて自然治癒することがあります。
免疫力や体調が正常になってくると、膣内の自浄作用も回復し、かゆみなどの症状がおさまります。
ただし軽症の場合でも、症状を早く抑えるために治療を行った方が安心です。
また、軽症かどうかの判断を間違えると症状がひどくなってしまう可能性もあるため、症状が出たら早いうちに治療しましょう。
膣カンジダは放置すると、かゆみが強くなったり炎症の範囲が広がったりして重症化・慢性化する恐れがあります。
かゆみが強くなって患部をかくと、傷ができてほかの感染症の原因にもなりやすいです。
さらに自分では膣カンジダだと思っていても、実際は違う感染症だったという場合もあります。
「自然治癒することもあるみたいだし」と放置すると治りにくくなってしまいます。
これらのことを防ぐためにも、異変を感じたらまずは検査を受けましょう。
カンジダ菌の増殖には、外陰部周辺や膣内の環境の悪化が関係しています。
まずは外陰部周辺を清潔に保ち、刺激を避けることを心がけましょう。
膣内環境の改善には、基本的に免疫力を維持するために健康的な生活を送ることが大切です。
生活習慣を整えるためにも、今の生活の見直しから始めてみてください。
妊娠中は免疫力が低下して、膣カンジダに感染しやすくなります。
もし妊娠中に膣カンジダが発症すると、出産時に新生児に感染してしまう可能性があります。
代表的な例だと、新生児が産道を通過する際に口の粘膜がカンジダ菌に感染し、口の中に白い斑点のようなカビが発生する「鵞口瘡(がこうそう)」を引き起こすことがあります。
新生児への感染を防ぐためにも、膣カンジダのような異変を感じたら医師にすぐ相談しましょう。
なお、妊娠中は膣カンジダの経口薬が使えないため、膣錠や膣坐剤で治療する必要があります。
膣カンジダは、きちんと対処しないと慢性化する可能性もあります。
自然治癒を狙って放置することは避け、必要な治療を受けましょう。
また、症状を調べる中で膣カンジダの感染が疑わしい場合でも、実際は違う疾患だったというケースも考えられます。
現状を正しく判断するためにも、まずは検査を受けることから始めてください。