トリコモナスに感染しても、女性は20〜50%、男性は80%が無症状とされています。
症状がなくとも感染していることがあるため、パートナーが感染したら必ず検査を受けるようにしてください。
このページでは、トリコモナス(膣トリコモナス症)の基本情報をお伝えしています。
改善策や、感染しないためにできる予防方法についても触れているので、パートナーと一緒に参考にしてみてください。
膣トリコモナス症の基本情報
原因 | トリコモナス原虫の寄生 |
---|---|
症状 |
女性:刺激感、かゆみ、おりもの異常 男性:無症状、排尿時の痛み、分泌液 |
おりもの | 泡状、悪臭など |
感染経路 | 主に性行為 |
潜伏期間 | 1~3週間、平均10日前後 |
検査方法 | 女性はおりもの、男性は尿や分泌物を調べる |
改善策 | メトロニダゾールで治療する |
トリコモナスとは、古くから知られる性病の1つで、正式には「膣トリコモナス症」と呼ばれています。
トリコモナス原虫という0.01mmほどの寄生虫の感染によって、男女の性器にさまざまな症状を起こします。
性行為の経験がない人でも、湯船や便器などから感染することも。
トリコモナスへの感染は、衛生環境の向上から日本では減っている傾向にあるものの、世界的には感染者数がもっとも多い性感染症です。
トリコモナスの症状は、性器に感染したのち、感染が進むと身体の奥へと広がっていきます。
症状の経過は男女で異なるため、ここからは女性と男性に分けてトリコモナスの症状について詳しく見ていきましょう。
女性は膣周辺にトリコモナスが感染し、膣炎を起こします。
膣や外陰部
⇨ 刺激感、強いかゆみ、発赤
おりもの
⇨ 泡状・強い悪臭
おおむね20〜50%の女性は無症状で、そのうち3分の1は6ヶ月以内に症状を自覚することが多いです。
男性にくらべるとトリコモナスの感染を自覚しやすいものの、気づくのが遅れて悪化すると卵管まで感染が移行してしまうので注意が必要です。
男性はトリコモナスが尿道に感染するため、尿道炎によって次のような症状が現れます。
ただしこうした症状が出るのはまれであり、男性の約80%は無症状とされています。
感染していても検査で陽性判定が出ない場合もあるため、パートナーが感染したら治療するのが望ましいです。
なお、寄生しているトリコモナス原虫は、排尿によって自然に洗い流されることがあります。
寄生している数が減りはするものの、ごくわずかでも感染力が残っていれば再発・再燃することもあるので注意が必要です。
男性のトリコモナスについては以下ページで詳しく解説しています。
トリコモナスの感染経路は性的な接触によるものがほとんどですが、場合によっては日常生活でも感染することがあります。
正しい知識を持っていれば、感染をいたずらにおそれる必要はなく、今後の予防や再感染を防ぐこともできます。
無防備な性行為は、自らトリコモナスに感染するリスクを高めてしまいます。
コンドームを使用しない性行為は、トリコモナスに限らず、さまざまな性病への感染リスクが考えられます。
感染に無自覚であれば何度でも感染し、お互いに移し合うピンポン感染の原因にもなりかねません。
また、不特定多数の人と性行為をしてしまうと、関係の数だけ感染リスクは増加します。
誰から感染したのかわからないと感染の拡大・蔓延の原因にもなるので、日頃からセーフセックスを心がけるようにしてください。
トリコモナスは感染経路が幅広く、日常生活で感染するケースもあります。
感染している人の性器が触れる可能性のあるものは感染経路になってしまうため、性行為の経験がない人や、幼児でも感染するおそれもあります。
ただし、いずれのケースも不衛生にしていることが原因です。
清潔な状態さえ保てればトリコモナスへの感染は起こりにくいとされているので、使用後は掃除をしたり、タオルや下着などの共有は控えるようにしてください。
トリコモナスは、性器に隣接する部位にトリコモナス原虫が残っていると自己感染を起こすことがあります。
男性
⇨ 前立腺、精嚢
女性
⇨ 子宮頸管、下部尿路(膀胱から尿道まで)、卵管
一度治療しても、原虫が性器以外に侵入・生息し残ってしまうことがあります。
ふたたび尿道や膣に戻って感染状態になる可能性があるので、必ずしも性行為だけが感染経路ではないことは覚えておきましょう。
潜伏期間とは、病原体に感染してから最初の症状が現れるまでの期間です。
トリコモナスの潜伏期間は1〜3週間と個人差があるものの、男女ともに平均すると10日前後とされています。
ただこれはあくまでも目安で、症状が出ない無症候感染のケースもあるため、「症状がない=感染していない」ということにはなりません。
また潜伏期間中でも感染力はあるので、感染した可能性がある場合は性行為やそれに類似する行為は控えるようにしてください。
トリコモナスの検査は、検体を採取して行います。
検体 |
男性:尿(初尿)または分泌液 女性:おりものまたは尿 |
---|---|
検査方法 | 鏡検法:検体を顕微鏡で調べる |
培養法:検体を培養して調べる | |
PCR法:トリコモナス原虫の遺伝子を増幅させて調べる | |
結果が出るまでの期間 | 数分〜約4日 |
検査のタイミングとしては、「感染機会から24時間以上」が経過していれば検査可能です。
ただ、男性の鏡検法については、トリコモナス原虫が少ないと感染していても見落とすことがあるため不向きとされています。
トリコモナスは、検査キットを使用することで自宅でも検査が可能です。
手順に従って検体を採取し郵送すれば、数日でWeb上から結果を見ることができます。
誰とも顔を合わせずに済むため、気軽に検査を受けられるのがメリットです。
当院でもトリコモナスの検査キット販売を行っておりますので、少しでも不安な方は以下からご予約ください。
トリコモナスのように尿道炎や膣炎、子宮頸管炎などを起こす性感染症は、他にもいくつかあります。
人によっては同時に感染してしまうこともあり、その症状も似ていることから検査によって病原体を特定するまでは区別がつきません。
また、いずれの性感染症も自覚症状が少ないことを踏まえると、トリコモナス以外も検査しておくのが安心です。
ここからは、トリコモナスの改善方法について詳しく解説していきます。
注意点についてもご説明しているので、正しく対応してトリコモナスを完治させていきましょう。
感染の原因であるトリコモナス原虫には、「フラジール(メトロニダゾール)」が有効です。
当院のトリコモナス治療薬 | |
---|---|
製品 | フラジール内服薬 |
処方数/日 | 20錠 / 10日間 |
費用 | 10,000円
※併せて検査キット購入の場合は2,000円引き |
用法用量 | 1回250mgを1日2回、10日間経口投与する |
副作用 | 末梢神経障害 、 四肢のしびれ 、 四肢異常感 など |
ニトロイミダゾール系に分類される抗原虫薬で、トリコモナス原虫を感染部位から駆除します。
フィットクリニックでは、オンラインでの診療・処方が可能です。
フラジールには経口薬(内服薬)と膣錠がありますので、それぞれの薬について、次で簡単に確認しておきましょう。
※当院では内服薬のみの処方を行っております。
経口薬はトリコモナス治療には必須薬となり、性器だけでなく、前立腺や卵管などに感染が奥に進んでしまった場合にも効果的です。
服用期間は10日間で1クールとなり、通常は1クールで原虫を駆除できます。
しかし、一部の原虫には有効成分メトロニダゾールへの耐性が確認されているため、追加の治療や難治例では高用量の服用が必要になることもあります。
なお、妊娠初期にある女性は、胎児への影響から経口薬の服用はできません。
膣錠は、以下のような場合に処方されることがあります。
特に難治例や再発例には経口薬とセットで処方されることもあります。
膣錠は膣に直接作用させる局所療法となり、胎児への影響もほとんどないため妊娠初期でも使用できる安全性の高い薬です。
10〜14日間が1クールとなるので、再発・再燃させないためにも医師に決められた期間は投与を続けるようにしてください。
また、使用前には手や指を清潔にしてから使用するようにし、薬剤が水分に反応するため濡れた手で触れないようにしましょう。
トリコモナスの追加治療が必要な場合には、服用間隔を1週間空ける必要があります。
治療の1クールは10日程度にとどめ、それを超えての服用は副作用が現れやすくなるので注意しましょう。
また、フラジールの「服用中」および「服用後3日間」は飲酒は控えてください。
この期間に飲酒すると、血中のアセトアルデヒド濃度が上昇し、以下のような症状があらわれることがあります。
安全に治療を行うためにも、治療開始から2週間ほどはアルコール類を控えてください。
トリコモナスのその他の改善方法としては、次のようなことがあげられます。
■チニダゾールの服用
体質によってフラジールの有効成分メトロニダゾールにアレルギーがある方は服用できないため、代わりに同じ抗原虫薬のチニダゾールの内服薬または膣錠で治療します。
基本的な飲み方は変わりませんが、服用量が異なるので医師の服薬指導どおりに服用するようにしましょう。
■膣洗浄
女性は再発を繰り返したり、治りにくいようであれば、薬を使用しながら膣洗浄も行って原虫を洗い流すことがあります。
トリコモナスは、自然治癒させることができません。
治療薬を使わなければ感染部位に生息している原虫を駆除できず、時間が経ってしまうと悪化するおそれもあります。
また、一度完治したからといって、トリコモナスに対する免疫がつくこともありません。
感染者との性的な接触があれば何度も感染するので、再感染した場合にも自然治癒しないことは覚えておきましょう。
トリコモナスを治療せずに放置すれば、感染の拡大・蔓延につながるだけでなく、感染が身体の奥へとさらに広がっていきます。
どのように症状が悪化していくのか、男女に分けて見ていきましょう。
女性は膣や子宮頸管(子宮の入り口)から、トリコモナスが卵管まで到達してしまうことがあります。
こうした炎症によって、38℃以上の発熱が続いたり、下腹部がズキズキ痛んだりすることがあります。
また、いずれの部位も妊娠機能に影響するため、不妊の原因になってしまうこともあるので早めの対処が必要です。
妊娠中にトリコモナスへの感染が発覚した場合、次のようなリスクが考えられます。
放っておくと胎児の命に関わることがあるので、適切な処置を受けなければなりません。
ブライダルチェックはもちろん、妊娠後も異常を感じることがあれば、すぐに主治医に相談するようにしましょう。
男性の場合、尿道に生息していた原虫が、前立腺や精嚢、まれに亀頭・包皮で繁殖してしまうことがあります。
繁殖部位で上記のような炎症を起こし、それにともなったさまざまな症状が現れます。
また、前立腺炎は慢性化してしまうほか、精嚢の炎症は精子の活動力を低下させ、精子の通り道が塞がることで不妊に繋がることもあるため早めに対処しましょう。
トリコモナスへの感染を100%防ぐ方法はありませんが、セーフセックスを心がけることで感染リスクは減らせます。
いくつか予防方法をご紹介するので、次回から実践するようにしましょう。
一般的に避妊具としてのイメージが強いコンドームですが、正しい使い方ができればトリコモナスの予防に大きく役立てられます。
患部となるパートナーの性器と直での接触を防げるため、トリコモナスに限らずさまざまな性感染症を予防することが可能です。
コンドームを使用する際は、次のようなことに注意して使用してみてください。
また、生理中はトリコモナスが繁殖しやすい環境のため、性行為を控えるようにしましょう。
不特定多数との性行為は、いつ、どこで、誰から感染したのかわからなくなってしまいます。
感染源となったパートナーが特定できないことから、治療してもすぐに再感染するおそれも。
感染してからでは遅く、気づかず他のパートナーにも感染させてしまう恐れもあることから、性行為は特定の相手とだけするようにしてください。
トリコモナスは性行為の経験がなくても、感染者が使用した日用品などを通して感染します。
そのため患部が触れそうなものの共有は控えるようにしましょう。
家庭内
⇨ タオルや下着は自分専用のものを使う
公衆浴場
⇨ なるべくイスに性器が接触しないようにする
公衆トイレ
⇨ 便座を消毒シートで拭いてから座る
過剰に意識する必要はありませんが、身近に感染者が出た場合には清潔を保つよう心がけていきましょう。
定期的な検査は感染していないかの確認のためだけでなく、次のような理由からトリコモナスの感染拡大に対する予防につながります。
トリコモナスは自然発生することはなく、また自分だけに留めておける病気でもありません。
なので3ヶ月に1回くらいのペースで検査するのが望ましく、不安な行為があればその都度検査を受けるようにしましょう。
トリコモナスは自覚できないことも多く、感染しているとは知らずパートナーにうつしてしまうこともあります。
予防のためにもお互い定期的に検査を受け、早期発見・早期治療に繋げていきましょう。