そのことから「10円ハゲ」とも呼ばれますが、脱毛が1カ所に出るとは限りません。
人によっては複数に脱毛斑ができることや、ほぼすべての髪が抜け落ちてしまう重症例もあります。また毛髪だけでなく、眉毛などの全身の体毛にまで脱毛が及ぶこともあります。
このページでは、円形脱毛症について詳しく解説します。
特徴や原因、さらに改善方法などにも触れていますので、もし急な脱毛に不安を感じている人は参考にしてみてください。
円形脱毛症の改善方法について先に知りたい方は円形脱毛症の改善方法とは?をクリックすると改善方法の項目へ飛びます。
円形脱毛症は、髪の毛の一部が円形または楕円形に抜け毛が生じる脱毛症です。
このことから「10円はげ」の呼び名でも知られていますが、円形脱毛症は髪の毛以外の体毛にも起こります。
人によっては再発を繰り返してしまうこともあり、治療が難しいケースもあります。
また円形脱毛症に悩む人の数は、日本だけでなくどこの国でも人口の1~2%と推測されています。
そのうちの約70%が30歳以下とされ、特に15歳以下の子供が約25%ほどを占めていることから円形脱毛症は若い人に多くみられる傾向があると言えます。
円形脱毛症は初期症状や進行中の症状に以下の特徴があります。
こうした症状から、ある日突然髪が抜けるため驚く人も少なくありません。
また脱毛パターンも脱毛部が1カ所だけとは限らず、6つの特徴があります。
もしいずれかのパターンに当てはまるようであれば、円形脱毛症の疑いがあると言えます。
円形脱毛症の中でもっとも多いのが、単発型です。
円形または楕円形の脱毛斑があらわれ、10円玉サイズから大きな円形ができるなど脱毛面積の大きさも人によってさまざまあります。
まれに単発型が重症化すると「多発型」に変化することがあり、体毛にまで及ぶこともあるので注意です。
また単発型の約80%が1年以内に治ると言われ、軽症であれば治療しなくとも自然に回復するケースも珍しくありません。
単発型が変化し、脱毛斑が2つ以上みられるタイプが多発型です。
頭部全体に対して25%未満であれば軽症となり、治療方法が少し異なる重症と区別されています。
一部の人は脱毛前にかるい痒みを感じることもあるので、円形脱毛症の前兆があるのが多発型の特徴とも言えます。
また単発型にくらべ治療期間の目安は長く、6ヶ月~2年ほどかかるとされています。
治療期間が長い理由は一部が治っても別の部位で脱毛を起こしたりするケースがあるためで、思うように治療が進まないケースもあります。
脱毛斑の面積が25%以上になると、多発型の重症化と考えられています。
症状が悪化していくと、それぞれの脱毛斑が徐々につながって大きな脱毛斑をつくってしまう「多発融合型」に変化することがあります。
また多発融合型は、すべての頭髪が抜けてしまう全頭型へと移行することもあります。
そのため多発型と症状の程度によっては、治療が数年がかりになることもあるので根気強く治療を続けることが大切です。
イメージされる円形脱毛症のパターンとは異なり、蛇が通った跡のように脱毛するのが蛇行型です。
後頭部や耳の周りの側頭部にみられることが多く、特に生え際に沿って帯状に脱毛していきます。
円形脱毛症の中でも重い症状に分けられ、治りにくいため治療期間が数年かかるケースも珍しくありません。
思うような効果が得られない場合には、必要に応じてセカンドピニオンを検討するなど納得できる形で治療を続けていくことが大切です。
全頭型は脱毛斑が頭部全体に広がってしまい、ほぼすべての頭髪が抜けるタイプの円形脱毛症です。
アトピー性皮膚炎と合併している確率が高いとの報告があるものの、治療方法は未だ確立されていないため年単位での治療を継続していく必要があります。
また外見を大きく変化させてしまうため、ストレス、喪失感、憂鬱さなど、精神的な影響も懸念されます。
これまでのライフスタイルが一変するので、今までと変わらない生活を送るための工夫も必要になります。
汎発(はんぱつ)型の「汎発」は、全身いたるところに発生することを意味します。
つまり汎発型の円形脱毛症は毛髪のみならず、眉毛やまつ毛、脇毛など、全身の体毛がすべて抜け落ちてしまう最も重度のタイプです。
また汎発型は効果的な治療方法が確立されておらず、自然な回復を待つのも難しいと考えられています。
思ったような改善を得られないケースも珍しくはないので、いくつかの治療方法を試したり、QOL(生活の質)を維持するためにウィッグを検討するなど上手く付き合っていく必要があります。
円形脱毛症は、本来は無害である毛包(髪をつくる器官)を、身体に備わる免疫機能が異物と捉えてしまい攻撃することが原因と考えられています。
なぜ毛包を攻撃するのか、その詳しいメカニズムについてはわかっていませんが、その他にも円形脱毛症の原因に関わることがいくつかわかってきています。
また円形脱毛症の人は、アトピー性皮膚炎や甲状腺機能異常、膠原病といったトラブルを合併しているケースも見受けられます。
そのため特定の病気が、円形脱毛症の発症に何らかの関係があるとの見方もあります。
円形脱毛症の治療方法にはいくつかあり、脱毛スピードや範囲に応じて薬を使い分けていきます。
ちなみに、市販薬やヘアケア用品で円形脱毛症に有効とされるものはありません。
必ず医師の診察を受けてから、必要に応じた治療を受けるようにしてください。
円形脱毛症を改善するために用いられる薬には、次のようなものがあげられます。
■内服薬・外用薬
脱毛範囲が狭いケースでは、内服薬や外用薬で様子を見るのが一般的です。
■施術
脱毛範囲が狭い場合でも、治療が長引くようであれば施術を行うこともあります。
⇒ステロイドを脱毛箇所に注入する方法
雪状炭酸圧抵療法⇒ドライアイスを使って脱毛部分を冷却する方法
紫外線・赤外線療法⇒免疫抑制作用を利用して、症状を落ち着かせる方法
■局所免疫療法
脱毛範囲が広く、6ヶ月以上続いているケースには、局所免疫療法を用います。
局所免疫療法は特殊な薬剤を使って、わざと軽い皮膚炎を起こす治療方法です。
1~2週に1回の治療で有効性は60%以上を超えるので、円形脱毛症に最も有効な治療ともされています。
しかし治療をやめると脱毛が進んだり、保険が利かないため、ハードルの高い治療方法であることは覚えておきましょう。
アトピー性皮膚炎の薬として用いられるバリシチニブ(オルミエンド)が、2022年に円形脱毛症治療薬として承認されました。
これまでの円形脱毛症治療薬とは異なる作用があり、円形脱毛症の重症または極めて重症の人への効果が期待されています。
作用としては、サイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)の働きを抑えることで免疫細胞による毛根への攻撃を止めることができます。
原因にアプローチできる薬なので、これまでの治療で効果を得られなかった全頭型や汎発型、蛇行型の人は医師に相談してみましょう。
円形脱毛症は脱毛箇所がはっきりしているため、どうしても他人の視線が気になるところです。
根本的な改善にはなりませんが、QOLの改善のためにも少しの工夫で脱毛斑を隠すことができます。
ここからは円形脱毛症の上手な隠し方について、いくつか見ていきましょう。
一定の髪の長さが必要になりますが、ヘアアレンジによって脱毛斑を隠すことができます。
⇒オールバック
⇒ ショートの刈り上げ
⇒ 後ろで束ねる ※生え際に脱毛斑があるなら難しい
⇒ お団子ヘア
⇒ ベリーショート
円形脱毛症のタイプに応じて、ご自身にあったヘアアレンジを見つけてみてください。
脱毛範囲や髪の長さに関係なく、誰でも簡単に円形脱毛症を隠せるのがスカーフやヘアバンド、帽子などです。
屋内やフォーマルな席などTPOによっては不自然になるので注意が必要ですが、もっとも手軽な隠し方と言えます。
またスカーフやヘアバンド、帽子を選ぶ際には、次のようなことに注意です。
こうした髪や頭皮の負担になるものは選ばず、サイズにはゆとりをもって、綿やシルクなどの素材を選んでみてください。
ウィッグや付け毛などのいわゆるカツラは、円形脱毛症診療ガイドラインでも「B:行うよう勧める」と評価され、QOL向上に役立つことが確認されつつあります。
ウィッグや付け毛などのいわゆるカツラは種類も豊富です。
アレンジ次第では、円形脱毛症であっても好きな髪型を楽しめます。
ちなみに医療用ウィッグについてはミックス毛が使われています。
また男性は髪が短い分、ウィッグや付け毛であっても生え際が目立つので高いカット技術が必要です。
もし短髪ウィッグが必要であれば通販などではなく、ウィッグメーカーに直接相談してみることをおすすめします。
ヘアファンデーションは、地肌に色付けをして脱毛斑を馴染ませ隠す方法です。
脱毛斑が大きいと逆に悪目立ちしますが、軽症の単発型であれば自然なボリュームアップが期待できます。
最近のものは雨や風、汗にも強く、長時間ヘアスタイルをキープできる品質の高い製品がいくつもあります。
仕事などの理由で帽子などを被れない人や、ウィッグや付け毛に抵抗がある人は、ヘアファンデーションを試してみてください。
円形脱毛症は軽症であれば自然な回復を待つのも1つですが、人によっては脱毛が進行し悪化する可能性もあります。
重症化してくると治療も長引き、人によっては思うような効果が得られないこともあります。
QOL(生活の質)を下げないためにもウィッグなどでカバーしつつ、必ず医師に相談し必要な治療を受けるようにしましょう。