避妊の方法や種類について

性行為の際に行う避妊方法は、コンドームだけではありません。
コンドーム以外にも、時と場合に合わせた避妊方法がたくさんあります。
望まない妊娠は、特に女性にとって身体的・精神的に大きな苦痛をもたらします。
女性はもちろん、パートナーである男性も、避妊の方法について正しい知識を身につけておきましょう。
性行為前に行う避妊方法
性行為前にできる避妊方法を、以下の3種類に分けてご紹介します。
一般的な避妊方法
日本で多く使われる避妊方法を、パール指数やおおよその費用と合わせてご紹介します。
100人の女性がその避妊方法を1年間続けたときに妊娠する数の目安。
この数字が低いほど、妊娠する可能性は下がる。
ちなみに避妊をしなかった場合のパール指数は85です。
避妊方法 | パール指数 | 費用 |
---|---|---|
コンドーム | 2~18 | 10個で約700円~ |
低用量ピル | 0.3~9 | 1シート約2,200~3,000円 |
Intrauterine device(IUD) | 0.6~0.8 | 約30,000~40,000円 |
Intrauterine system(IUS) | 0.2 | 約40,000~55,000円 |
リズム法 | 3~24 | なし |
コンドーム(パール指数2~18)

コンドームは精子の子宮内への侵入を物理的に防ぎます。
日本では最もポピュラーな避妊の方法ですが、確実に妊娠を防ぐことはできません。
ただ、性感染症の予防ができるため、ほかの避妊法と併用することで安心して性交渉ができます。
- コンビニやドラッグストアで安価に購入できる
- 粘膜の接触を防ぐことで性感染症の予防に高い効果を発揮する
- 素材のアレルギー以外の副作用がほとんどない
- 避妊の成功率は他の避妊方法に比べて低い
- 使用には男性側の理解と協力が必要
低用量ピル(パール指数0.3~9)

低用量ピルは女性ホルモンを調整する医薬品です。
毎日飲み続けることで、排卵を抑制し妊娠が起こらないようにします。
また、子宮頸管(しきゅうけいかん)粘液の粘度を高めて精子の侵入を防いだり、子宮内膜の増殖を抑えたりすることで、受精卵の着床を起こりにくくする効果もあります。
生理痛や生理不順を軽減するために服用する女性も多いです。
- 正しく服用を行えば高い避妊効果がある
- ニキビの改善、生理痛、生理不順、月経前症候群(PMS)の軽減にも効果がある
- 子宮内膜症、子宮体がん、卵巣がんなどの婦人病の発生率を下げる
- 毎日忘れずに服用する必要がある
- 喫煙者の服用は血栓症のリスクが上がるために、禁煙を行う必要がある
- 軽度であるが、吐き気やむくみなどの副作用が一時的に現れることもある
低用量ピルは海外で多く使われています。
主にヨーロッパでは高い使用率で、フランスでは33.1%、ドイツでは31.7%です。
一方日本では2.9%、韓国では3.3%と、アジアでの使用率は低い状態です。
また、日本でのコンドームの使用率が34.9%と欧米諸国に比べてかなり高いことからも、男性主体の避妊に任せてしまっていることが伺えます。
※コンドームは性病予防に大切なアイテムです。ほかの避妊方法との併用が効果的です。
IUD(パール指数0.6~0.8)

IUDは子宮内に入れるT字型の小さな器具です。
子宮内避妊具や子宮内リングと呼ばれることもあります。
子宮内膜に軽度な炎症を起こすことで受精卵の着床を阻害し、妊娠を防ぎます。
- 一度装着してしまえば2年ほどは交換不要で、高い避妊効果を発揮する。
- ホルモンによる作用がないので、授乳中であっても使用ができる
- 医師による装着や除去、交換が必要
- 装着後は定期的な検診が必要
- 出産経験のない女性には勧められない
- 不正出血や、感染症の原因となる場合がある
- 子宮外妊娠を防ぐことはできない
IUS(0.2)

IUSはホルモンの放出により避妊の効果を発揮する、子宮内設置型の小さな器具です。
子宮内で継続的に黄体ホルモンを放出することで子宮内膜の増殖を抑制し、着床を防ぎます。
また、子宮頸管(しきゅうけいかん)粘液の粘度を高めることで精子の侵入を防ぎます。
IUDよりもさらに高い効果が長期に渡って持続するのが特徴です。
- 装着後は5年ほど交換不要で、高い避妊効果を発揮する
- 生理痛、生理不順の軽減にも効果がある
- 血栓症のリスクなどで低用量ピルが服用できない方でも使用できる
- 医師による装着や除去、交換が必要
- 装着後は定期的な検診が推奨される
- 出産経験のない女性には勧められない
- 不正出血や、感染症の原因となる場合がある
リズム法(パール指数3~24)

リズム法には月経周期日から排卵日を予測する「オギノ式」、毎日基礎体温を計測することで排卵日を予測する「基礎体温法」があります。
どちらかというと、避妊ではなく妊娠のために使われる考え方です。
妊娠は、排卵日とその前後の数日に最も起こりやすくなります。
排卵日を予測し、妊娠しやすい時期を避けて性行為をするのがリズム法を使った避妊方法です。
ただ月経周期は乱れる場合があるため、リズム法での避妊はあまり確実とは言えません。
- 副作用がない
- 自分の月経周期を把握できる
- 月経周期の乱れや体調の変化もあるため確実な予測は困難
- 生理不順の女性には適さない
- 基礎体温法では毎朝体温を量る必要がある
その他の避妊方法
避妊方法には、ほかにもペッサリーや殺精子剤を用いた方法があります。
ペッサリー(パール指数6~12)

ペッサリーは子宮の入り口に蓋をすることで精子の侵入を防ぐプラスチックやゴム製のドーム型の器具です。
パール指数は6~12とあまり確実性がなく、日本ではあまり普及していません。
- 性行為の事前に余裕を持って装着できる
- 洗浄して繰り返し使用ができる
- 避妊の成功率が低い
殺精子剤(パール指数18~28)

殺精子剤は精子を死滅させる効果がある薬品で、性行為の前に膣内に入れて使用します。
ゼリーやフィルム、錠剤などの形状があります。
コンドームやペッサリーなど他の避妊方法との併用が効果的ですが、日本ではあまり普及していません。
- 簡単かつ手軽に避妊できる
- 副作用がほとんどない
- 性感染症の予防にも一定の効果がある
- 避妊の成功率は他の避妊方法と比べて低い
- 体位によっては薬剤が流れ出してしまう
- 効果の時間が限られている
海外で使われるその他の避妊方法
海外ではほかにも以下のような避妊方法が用いられています。
- 女性用コンドーム
- 避妊注射
- 避妊インプラント
- 避妊パッチ
しかし避妊注射や避妊インプラントなど、ホルモン剤の注射や体内への埋め込みによって行う避妊は日本では認可されていません。
性行為後に行う避妊方法
避妊は、できる限り性行為の前に行うことが望ましいものです。
しかし、コンドームによる避妊に失敗してしまう、衝動的に避妊をせずに行為に及んでしまう、不幸にも性暴力の被害にあってしまうという可能性もゼロではありません。
その際に望まない妊娠を防ぐためには、性行為後の緊急避妊が必要になります。
アフターピル(緊急避妊薬)

アフターピルの服用は性行為後に行える唯一の避妊方法です。
多量のホルモンを含んだ錠剤を服用することで体内のホルモンバランスを一時的に乱し、排卵前であれば排卵の遅延、排卵後であれば子宮内膜の剥離を起こすことで受精や着床を防ぎます。
従来は、中用量ピルを合計4錠服用する「ヤッペ法」が多く用いられていましたが、近年では「レボノルゲストレル」「エラ」という緊急避妊薬が多く用いられています。
アフターピルはあくまでも緊急的な避妊方法であり、常用すべきではないことは心に留めておきましょう。
また、当院ではアフターピルの処方も行っております。
受診をご希望の方は、こちらからご予約が可能です。
それでは、各避妊薬について解説します。
レボノルゲストレル

レボノルゲストレル錠は1錠の服用で済む点、副作用が少ない点などがヤッペ法に比べて優れています。
レボノルゲストレルの避妊率は、
- 24時間以内の服用で99%
- 48時間以内の服用で98%
- 72時間以内の服用で97%
- 96時間以内の服用で75%
とされます。
- 性交後に避妊できる
- 24時間以内の服用で99%の高い避妊率がある
- 吐き気や頭痛、下腹部痛、乳房の張り、不正出血などの副作用が起こる場合がある
- 性行為後4日以上経過すると十分な効果が得られない
エラ

エラは、避妊効果がレボノルゲストレルよりも長く続く特徴があります。
エラの避妊率は、
- 24時間以内の服用で99%
- 48時間以内の服用で99%
- 72時間以内の服用で99%
- 96時間以内の服用で98.9%
- 120時間以内の服用で98.9%
- 120時間以降の服用で75%
とされています。
- 性交後に避妊できる
- 5日経っても75%の高い避妊率がある
- 吐き気や頭痛、下腹部痛、乳房の張り、不正出血などの副作用が起こる場合がある
- 性行為後6日以上経過すると十分な効果が得られない
間違った避妊方法

ここまでは避妊の方法を説明してきました。
確率に差はあれ、どれも一定の効果を持つ避妊の方法です。
それらとは別に、誤った避妊の方法も一部では信じられています。
特に10代の若年層や、ITリテラシーの低い中年以降の世代には間違った避妊の方法や知識が広まりやすいと言えます。
以下にあげるような方法は、医学的に避妊の効果があるわけではなく、避妊を行ったつもりでも妊娠してしまう可能性が大いにあります。
避妊については誤った知識を持たないようにすることも大切です。
- 膣外射精
膣外射精は、誤った避妊の方法として多く行われています。
男性が射精の直前にペニスを抜いても、射精を行う前から分泌されるカウパー腺液にも精子は含まれているため、妊娠の可能性があります。
- 生理中の性行為
生理中であれば排卵がないので妊娠しない、という認識もよくされがちですが、これも間違いです。
排卵が早まる可能性は十分あり、精子は最長で5日ほど生き伸びることがあるので、生理中に射精された精子が次の排卵まで残っている可能性もあります。
さらに性感染症のリスクも高まるために、安全な行為とは言えません。
- コーラや炭酸水、シャワーで膣内を洗う
コーラや炭酸水には精子を殺すような働きはありません。
また、精子は膣内で射精された後にすぐに卵子へ向かうため、シャワーなどの水圧でも洗浄できる可能性はほとんどありません。
- 使用済みコンドームの再利用
一度使用したコンドームを洗ってから再利用しても、新しいコンドームのような避妊の効果は得られません。
ゴムが伸びてしまうため精子が漏れたり、耐久性が落ちるために穴が開く可能性も高くなります。
また、使用期限を過ぎたコンドームも耐久性が低下しているために使用を避けるべきです。
まとめ

様々な避妊の方法がありますが、どなたにも勧めやすく、安全かつ確実に避妊を行うのであれば、性行為前の対策を組み合わせた「低用量ピルの服用+コンドームの装着」が理想的です。
低用量ピルの正しい服用でほぼ妊娠を防ぐことができることに加え、コンドームによって性感染症も高い確率で防ぐことができます。
このように事前の確実な避妊ができていれば申し分はありませんが、万が一にも妊娠のリスクのある性行為があった場合は、直ちにアフターピルによる緊急避妊を行う必要があります。
アフターピルによる避妊の確率は時間が経つほど低下してしまうため、早急な対応が何よりも求められます。
フィットクリニックではアフターピルオンライン診療も行っていますので、緊急の際はご連絡ください。
この記事の監修
田中 彩
(たなか あや)医師
- 2015年
- 千葉大学医学部卒業

- 日赤医療センターで産婦人科専門医取得
-
所属学会:日本産科婦人科学会、日本女性医学学会
河北総合病院勤務