肥満と糖尿病の関係とは?発症のリスクや原因、予防策と改善策について

更新日:24/06/12
肥満と糖尿病の関係とは?発症のリスクや原因、予防策と改善策について

「肥満と糖尿病って関係あるの?」

「肥満だった場合、糖尿病を発症するリスクってどれくらいあるもの?」

「体重が減れば糖尿病のリスクも減るの?」

このような疑問にお答えするために、本記事では肥満が糖尿病の発症リスクをどのように高めるのか、その具体的な原因について詳しく解説します。

さらに、糖尿病を予防するための方法や、肥満による糖尿病を改善するための手段についても触れています。

肥満と糖尿病の関係について知りたい方や、予防や改善策を探している方は、ぜひ参考にしてください。

また糖尿病など肥満による健康障害を複数起こした場合、肥満症と診断されることがあります。詳しくは下記の記事を参考にしてください。

肥満は糖尿病になるリスクを上げている

結論として、肥満(太っている人)は糖尿病になりやすいです。

日本の糖尿病患者の90%以上を占める2型糖尿病の主な原因は、生活習慣にあるといわれています。

その中でも肥満は、特に糖尿病の発症に関わっていると考えられています。

また、ある研究からは、肥満が2型糖尿病を発症するリスクは8倍以上になるとの報告もあるほどです。

このように、肥満は糖尿病のハイリスク群と言えます。

肥満ではないものの、過体重や好ましくないライフスタイルを送っている方も、糖尿病のリスクは高くなるので覚えておきましょう。

肥満は糖尿病以外の病気にもなりやすい

肥満は糖尿病のリスクを高めるだけでなく、他のさまざまな病気になりやすいといわれています。

以下は、肥満と関連する主な健康障害です。

  • 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症や痛風
  • 冠動脈疾患
  • 脳梗塞や一過性脳虚血発作
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患
  • 月経異常や女性不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群や肥満低換気症候群
  • 運動器疾患(変形性関節症・膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
  • 肥満関連腎臓病
  • 悪性疾患(大腸がん、乳がん、膵臓がんなど)
  • 良性疾患(胆石症、静脈血栓症、男性不妊、精神疾患など)

肥満は、場合によっては命に関わったり、日常生活に支障をきたしたりすることがあるため、QOL(生活の質)を大幅に低下させる可能性があります。

そもそも肥満とは

肥満とは、体重が重いだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積された状態です。

肥満には「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2タイプがあります。

内臓脂肪型肥満
⇒お腹まわりの内臓に体脂肪が蓄積され、お腹がぽっこり出ている「りんごタイプ」

皮下脂肪型肥満
⇒皮膚のすぐ下に脂肪が蓄積され、下半身に集中する「洋ナシタイプ」

どちらも同じ肥満ではあるものの、内臓脂肪は血糖値や血圧を上昇させたり、中性脂肪を増やしたりします。

そのため、内臓脂肪型肥満は糖尿病をはじめとする生活習慣病を発症するリスクが高いことがわかっています。

ちなみに、肥満を見た目だけで判断するのが難しい場合もあります。

身長に対して体重は標準的でも、筋肉や骨と比べて脂肪の蓄積が多い「隠れ肥満」というタイプもあるためです。

体脂肪の測定には「BMI」が有効

肥満を判断するために有効なのが、肥満度の判定の国際的な指標となる「BMI(ボディマス指数)」です。

BMIが25を超えると肥満とされるので、以下に現在の身長と体重を当てはめてみてください。

BMI=体重kg ÷ (身長m)²

標準体重はBMI18.5〜25となり、糖尿病の予防や改善にはBMI20〜24を目指すのが理想とされています。

BMIは簡単でわかりやすい指標の1つですが、筋肉質なのか脂肪の蓄積なのかまでは判断できません。

あくまでも1つの目安としつつ、定期的に測定して増減を見るようにしてみてください。

肥満だと糖尿病になりやすい原因

肥満は代謝に大きな影響を与え、糖尿病の発症リスクを高める原因になります。

具体的には、以下の2つが主な原因として影響します。

  • インスリンの働きが鈍くなる
  • すい臓の機能が低下する

この2つの働きが悪くなることで、血糖値のコントロールがうまくいかなくなり、糖尿病のリスクが増大してしまいます。

ここからは、それぞれの原因について詳しく解説していきます。

インスリンの働きが鈍くなる

普段、食事から摂った栄養素の一部は、血液中に入り血糖となります。

そのため食後は血糖値が上昇するのが一般的ですが、すい臓から分泌されるインスリンの働きにより、一度上昇した血糖値は正常な範囲に戻ります。

しかし、肥満になるとインスリンの働きが鈍くなる「インスリン抵抗性」を起こします

インスリン抵抗性が糖尿病のリスクになる流れ

①インスリン抵抗性によりインスリンの働きが鈍くなる
血糖値が下がりにくくなる

②血糖値を下げるためにすい臓がより多くのインスリンを分泌
すい臓が過剰にインスリンを分泌して対応しようとする

③高インスリン血症を起こす
血液中のインスリン濃度が高まり、高インスリン血症が発生

④血糖値のコントロールが困難になる
高血糖の状態が続いて糖尿病を発症するリスクが高まる

このように、肥満はインスリンの働きを鈍くし、血糖値のコントロールを難しくしてしまいます。

その結果、血糖値が高い状態が続き、糖尿病を発症するリスクが高まります。

すい臓の機能が低下する

肥満によりインスリン抵抗性が生じると、すい臓は血糖値を下げるために通常よりも多くのインスリンを分泌しなければなりません。

この過剰なインスリン分泌が長く続くと、すい臓に過度の負担をかけ、次第に疲弊してしまいます。

すい臓の機能低下の流れ

①インスリン抵抗性によりインスリンの過剰分泌
血糖値を下げるために、すい臓が大量のインスリンを分泌

②すい臓のβ細胞が疲弊・損傷
過剰に働きすぎることで、すい臓のβ細胞が損傷しはじめる

③インスリン分泌量の低下
β細胞の損傷により、インスリンの分泌量が減少

④血糖値のコントロールが困難になる
高血糖状態が糖尿病のリスクを加速させる

このように、肥満はすい臓に余計な負担をかけ、最終的にはその機能を低下させます。

その結果、血糖値の管理が難しくなり、糖尿病のリスクが大幅に増加します。

肥満による糖尿病の予防策・改善策

肥満による糖尿病の治療の目的は、高血糖を持続させてしまう代謝異常を改善することです

それには減量が効果的であり、増えすぎた体重を落とすことで、インスリンの分泌や血糖値を正常値に近づけることができます。

血糖コントロール目標
HbA1c:6%未満

目標体重(65歳未満)
体重:(身長m)²×22kg

減量の基本は食事と運動となりますが、代謝コントロールが難しい場合にはこれらに薬物療法を組み合わせることもあります。

以下では、それぞれの具体的な方法について解説していきます。

食事療法

食事療法でポイントになるのが、適切なエネルギー量を維持しつつ、栄養素のバランスを取ることです。

適切なエネルギー摂取量としては、以下を参考に行うことがおすすめです。

エネルギー摂取量=目標体重×エネルギー係数※
※身体活動量:25〜30kcal/kg(軽い)・30〜35kcal/kg(普通)・35〜kcal/kg(重い)

また食事の際に意識したいのが、以下のようなことです。

  • 油ものや糖分の多い食べ物を避ける
  • 野菜や果物、全粒穀物を積極的に取る
  • よく噛む
  • 腹八分目を意識する
  • 間食を控える

過食を抑えるためにも規則正しく、時間をかけてゆっくりと食べるようにしてください。

また食事療法は一時的なものではないので、長期的に続けることが重要です。

長期的な視点でバランスの取れた食事を心がけることで、健康的な体重管理と血糖コントロールが可能になります。

運動療法

食事療法と並行して行いたいのが、運動療法です。

運動を行うことで急性効果(運動後24〜48時間)として血糖値が低下し、持続的な効果としてインスリン抵抗性が改善されます。

また、エネルギー消費量も増えることで減量効果も期待できることから、継続的に行える運動を取り入れることがポイントです。

運動例
  • 有酸素運動(ウォーキングやスロージョギングなど)
  • レジスタンス運動(スクワットや腕立て、ダンベルなど)

どちらか一方でも構いませんが、併用により効果がさらに高まるので、身体が運動に慣れてきたらセットで行うことをおすすめします。

また、運動による膝への負担が心配な場合、水中歩行が特におすすめです。

運動強度については、以下を目安にしてください。

運動強度
50歳未満:心拍数100〜120拍/分
50歳以上:心拍数100拍/分未満
頻度:週3回以上で2日以上空けない(有酸素運動)/連続しないスケジュールで週2〜3回(レジスタンス運動)

いきなり慣れない運動をするとケガの原因にもなるので、体力や健康状態に合わせながら無理なく続けることが重要です。

少しずつ運動量を増やしていき、体力がついてきたら強度もあわせて高めてみてください。

減量しない場合は薬物療法

食事療法や運動療法を用いても減量や血糖値のコントロールが不十分な場合、補助を目的に薬物療法を行うこともあります。

以下は、薬物療法に用いられる薬剤一覧です。

薬物療法に用いる薬剤
  • インスリン分泌非促進系
    α-グルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬
  • インスリン分泌促進系
    GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SU薬、グリ二ド薬、イメグリミン
  • インスリン製剤
    基礎インスリン製剤、追加インスリン製剤、混合型インスリン製剤、配合溶解インスリン製剤

しかし、肥満による糖尿病の場合の多くは、食事療法と運動療法で血糖値は改善される傾向にあります。

そのため、まずは短期的に体重を落とし、長期的に持続的な減量を目指すことが重要です。

はじめから薬物療法を行うことはないので、あくまでも基本の食事と運動だけでは不十分である場合のみ、薬物療法が追加されることを覚えておいてください。

自制するのが難しい場合は「メディカルダイエット」も検討

一口に減量といっても、普段の生活を変えて自己管理を徹底することは簡単なことではありません。

無理にダイエットを行った結果、失敗や挫折を味わうことは珍しくないので、そういった場合には当院のメディカルダイエットがおすすめです。

メディカルダイエットは、医師のサポートを受けながら、個々の健康状態やライフスタイルに合わせた治療薬を用いて減量を目指すダイエット治療の1つです。

厳しい食事制限や運動を行う必要がないので、ダイエットそのものがストレスになってしまう方に適した治療方法になります。

医師の指導のもと行うため孤独感もなく、続けるだけで健康的に目標体重の達成が見えてきます。

ダイエットの悩みがあったり、自己管理が苦手な方は、効率的に痩せられるメディカルダイエットも検討してみてください。

肥満と糖尿病の関係についてのまとめ

これまでの内容をまとめると、肥満と糖尿病には以下のような関係があります。

  • 肥満は糖尿病のリスクを高める
  • 原因は肥満による「インスリン抵抗性」と「すい臓機能の低下」
  • 予防や改善には食事と運動が基本
  • 肥満改善のための自己管理が難しい場合はメディカルダイエットも検討する

肥満は糖尿病のリスクを高めるだけでなく、さまざまな健康障害の引き金にもなりかねません

QOL(生活の質)を大幅に低下させてしまう可能性があるので、食事と運動を基本に、肥満の改善と血糖値をコントロールすることはとても重要です。

自己管理が難しい場合にはメディカルダイエットも検討しつつ、将来にわたる健康維持を意識してみてください。

肥満と糖尿病の関係についてよくある質問

Q1
肥満なのと糖尿病になりやすいのは関係がありますか?
A1
肥満の場合は糖尿病にもなりやすいため、関係はあるといえます。
近年の日本では、運動不足や食習慣の欧米化によって肥満の方が増加傾向にあります。
肥満は「万病のもと」といわれるほどで、糖尿病以外にもさまざまな病気の原因になりえます。
Q2
肥満を改善することで糖尿病のリスクは減りますか?
A2
肥満を改善することでインスリン抵抗性が改善され、糖尿病のリスクを減らすことができます。
適切な食事療法と運動療法を続けることで血糖値のコントロールがしやすくなり、糖尿病の予防にもつながります。
Q3
糖尿病になったら必ず薬物療法が必要ですか?
A3
糖尿病の治療は、食事療法と運動療法で血糖値をコントロールするのが基本です。
しかし、これらの方法だけでは十分な効果が得られない場合には、医師の判断で薬物療法が追加されることがあります。
Q4
メディカルダイエットはどのような人に向いていますか?
A4
メディカルダイエットは、自己管理が難しい方や、これまでのダイエットで成果が出なかった方に向いています。
医師のサポートを受けながら、個々の健康状態やライフスタイルに合わせた無理のない減量が可能です。
Q5
肥満と糖尿病以外に、肥満が原因で発症しやすい病気はありますか?
A5
肥満は糖尿病だけでなく、高血圧、脂質異常症、心疾患、脳血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、そして特定のがん(乳がん、大腸がんなど)のリスクも高めます。
その他、肥満妊婦は出産時のリスクが高まります。
これらの健康リスクを軽減するためにも、適切な体重管理が重要です。