
クラミジアは5人に4人が自覚症状がないともされますが、日本のすべての性病の中で最も患者数の多い性感染症です。
このページではクラミジアの症状や感染の経路、治療などについて解説します。
また、無症状の際の特徴や注意点も紹介していますので、早期発見、早期治療にぜひお役立てください。
なお、性病の治療については以下のページで詳しく解説しています。 性病治療について 性病とは
クラミジア感染症とは
クラミジア感染症の基本情報
原因 | 細菌 (クラミジア・トラコマティス) |
---|---|
主な症状 | 尿道炎、子宮頸管炎など ※ただし多くは無症状 |
感染部位 | 性器、咽頭(ノド)、肛門(直腸)、目(クラミジア結膜炎) |
感染経路 | 性行為、出産による母子感染、体液の付着した手など |
1回の性行為での感染率 | 30〜50% |
クラミジア感染症は、日本で最も感染者数の多い性感染症(STD)です。
男性よりも女性の方に感染報告が多く、年代別では20代にもっとも感染者が多いとされています。
近年では初体験年齢の低下により、10代のクラミジアへの感染率の高さが危惧されています。
クラミジアは感染による自覚症状も少ないことから、知らずに他人へ感染させることも多い感染症です。
クラミジアの症状について
クラミジアの症状は、男女で症状が異なります。
別の性感染症である淋病と似た症状が見られますが、淋病に比べると症状が軽いのが特徴です。
それゆえに自覚しにくく、放置してしまうことで感染拡大にもつながりやすい病気と言えるでしょう。
また症状は性器だけに限らず、感染者の粘膜に触れる機会があれば喉(のど)や肛門、目などにも症状が現れます。
男性に感染した場合の症状
男性がクラミジアに感染すると尿道に炎症が起き尿道炎を起こすことがあります。
- 排尿痛
- 性器のかゆみ
- 尿道分泌液
など
尿道炎は尿道が炎症を起こすためもっとも痛みを自覚しやすい症状です。
痛みのほかには尿道からサラっとした分泌液が出るため、下着の内側が汚れていることで異変に気づくケースもあります。
また、尿道炎が進行すると睾丸内にまで炎症が広がり、精巣上体炎(副睾丸炎)になる場合があります。
- 睾丸の痛みや腫れ
- 軽い発熱
など
これらの症状に加え、精巣上体炎が悪化すると精子の通り道である精管をふさいでしまい、男性不妊(無精子症)の原因になることもあります。
女性に感染した場合の症状
女性がクラミジアに感染すると、子宮の入り口である子宮頸管に炎症を起こします。
初期症状として
- おりものの異常(臭いや量など)
- 下腹部の痛み
- 生理以外の出血(不正出血や性行為後の出血)
- 性行痛
- かゆみ
など
自覚しやすい症状である下腹部の痛みは生理痛にも似ているため、症状をクラミジアとは思わずにそのまま放置してしまう場合があります。
もし放置して治療を行わないと、子宮内膜、卵管、卵巣、骨盤内と、上部へと炎症が広がり「上行性感染」と呼ばれる状態になります。 様々な病気へと進行するので注意が必要です。
また、女性の性器にクラミジアが感染した場合、炎症が子宮内膜や卵管にまで到達してしまうと、不妊症のリスクを高めます。
実際に日本産婦人科医会の発表によれば、不妊の20%はクラミジアや淋病による炎症が大きく影響しているとされています。 女性のクラミジアの詳細
咽頭クラミジアの症状
咽頭クラミジアは喉(のど)周辺に炎症を起こすため、風邪に似た症状が現れます。
- ノドの痛みや腫れ
- 咳
- 痰(たん)
- 発熱
など
このような症状から、咽頭クラミジアに感染しても症状の似ている風邪と勘違いする方が多くなっています。
当然、風邪の治療をしても治らずに症状が進行し、咽頭炎や扁桃炎といった周辺に炎症を広げてしまう場合があります。
また、合併症として耳の詰まりを感じたり、鼻づまり、難聴、頸部リンパ節の腫脹、滲出性中耳炎などを起こすこともあります。 咽頭クラミジアの詳細
その他の症状
クラミジアは性器や喉(のど)以外にも、目や直腸にも感染します。
- 目の充血
- まぶたの腫れ
- 粘度の高い、膿んだ目やに
など
- 排便時の出血
- 粘血便
- 肛門痛
- 腹痛
- 下痢
など
この他にも母子感染によって、新生児が肺炎や結膜炎を起こすこともあります。 またクラミジアへの感染は、粘膜の炎症を起こすため普段よりウィルスが侵入しやすい状態です。 そのため、HIVへの感染リスクは3〜5倍も高くなることを覚えておきましょう。
クラミジアは男性の5割、女性の8割が無症状
クラミジアは症状が出ない、あるいは症状に気づかない場合が多く、無自覚のまま放置してしまう割合は男女で次の通りです。
クラミジアの症状が 出ない割合 |
男性:50% | 女性:80% |
---|
女性は男性に比べクラミジア感染の自覚症状が無い場合が多く、長期間に渡り感染を放置される事が多いと言われています。
無症状に気付かず感染した状態で何年も過ごすこともあり、特定のパートナーとしか性行為をしていないのにクラミジアに感染して相手の浮気を疑うというケースも報告されています。
深刻なのは、女性は男性にくらべると症状が軽度であるがゆえに、炎症が奥へと広がることで合併症や後遺症、不妊などにまで発展するケースです。
そのため、女性は予防の観点からも、定期的な検査を受けることが望ましいと言えます。
咽頭クラミジアは9割が無症状
咽頭クラミジアで無症状の人は87%と約9割にも上るとされ、明らかな変化を伴わないので自ら検査を受けないと見過ごしてしまうリスクが高くなっています。
オーラルセックスの一般化につれて咽頭クラミジアの感染者が増加しています。
性器に感染がなくとも、咽頭(のど)だけに感染している例もあります。
無症状の場合はもちろん、症状があっても風邪に似ているため治療を放置しやすいため注意が必要です。
クラミジアは無症状でも他人に感染する
クラミジアはたとえ無症状であっても他人に感染します。
無症状でも菌を持っているため、知らず知らずのうちに自分が感染源になり、クラミジアを蔓延させてしまうこともあるのです。
性器やのどに菌がいれば症状の有無に関係なく、粘膜や分泌物を介してパートナーにうつしてしまいます。
クラミジアは無症状でも病気は進行する
クラミジアは無症状であっても、自然に治ることはありません。
むしろ自覚できないまま症状が悪化していき、上行感染によって身体の奥へと感染が広がることで突然の激痛に見舞われて救急搬送されることもありえます。
- 男性の上行感染
⇒ 精巣上体炎により精子の通り道が狭まったり、無精子症のリスクがある - 女性の上行感染
⇒ 卵管の狭窄・閉塞・癒着、さらには子宮内膜の炎症で着床障害などのリスクもある
クラミジアの感染経路について
クラミジアの主な感染経路は性行為です。
その他の感染経路もまとめると以下が挙げられます。
- 膣性交
- オーラルセックス
- アナルセックス
- 感染者の体液が目に入る
- 産道感染(胎児)
など
どれも感染者の粘膜と直接接触してしまうのが原因です。
「性器⇨喉(のど)」のような性行為により、パートナーと感染部位が異なることもあります。
また性器感染したクラミジアが、リンパ腺から直腸に感染するケースもあります。
妊娠時に感染していると、胎児や出産時の新生児にクラミジアを感染(母子感染)させてしまう可能性があります。
実際、全国の妊婦約32.6万人を対象とした調査では、2.4%の人がクラミジアを有していたとの報告もあります。
クラミジア感染経路の詳細
再発の起こりやすい「ピンポン感染」
ピンポン感染とは、卓球のラリーのように相手にうつした病原菌がまた自分に戻って来るように、お互いを感染させ合う状態を指す言葉です。
部位によっても、性器は完治したが喉(のど)が治ってない状態でオーラルセックスをすれば、パートナーへ感染する可能性があります。
クラミジアは男女ともに無自覚なケースも多く、ピンポン感染に発展しやすいです。
パートナーのどちらかが感染に気づいた時点で、必ず2人で検査・治療を受けて完治させましょう。
クラミジアの病原菌が体内に潜伏する期間
クラミジアが体内に潜伏する期間 | 個人差はあるが1~3週間 |
---|
クラミジアに感染してから、はじめて症状が現れるまでの期間を潜伏期間と呼びます。
感染しても、すぐに症状が出ることはありません。
感染部位で時間をかけて原因菌であるクラミジア・トラコマティスが増殖し、慢性的な炎症が起こることで発症に至ります。
また、3週間以上が経過して無症状であれば問題ないというわけではありません。
なお、潜伏期間中であっても、感染部位にはクラミジアの菌が存在しています。
つまり、潜伏期間中の性行為により粘膜に触れてしまう機会を与えてしまうと、パートナーに感染させる可能性があります。
クラミジアの検査方法について
クラミジアの感染に気付くには検査を受けることが大切です。
クラミジアの検査には以下のような方法があります。
抗原検査 | ||
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確認内容 | クラミジア菌の遺伝子の有無 | |
検査可能時期 | リスク機会より24時間以上経過後 | |
種類 | 精密検査 (リアルタイムPCR法) | 即日検査 (イムノクロマト法) |
検査期間 | 2~4日 | 即日 |
検査精度 | 高い | 低い |
いわゆる「抗原検査」と呼ばれる簡易検査や精密検査(即日を含む)は、感染機会から24時間以上が経過していれば検査が可能になっています。
即日検査では20~30分ほどで結果が現れます。
もっとも精度が高いのは精密検査ですが、結果が出るまで時間がかかります。
そのため、症状が出ているのであれば簡易検査を選ぶなど、状況に応じた検査を受けるのがよいでしょう。
一方で、血液を採取し行う「抗体検査」もありますが、現在は補助診断として利用されることが多く、医療機関での検査ではあまり行われていない方法です。 性病の検査についての詳細
検査箇所により感染の有無が異なる
検査箇所によって感染の有無は異なるため、感染部位に合わせて検体を採取していきます。
尿道感染(男性) | 尿の採取 |
---|---|
膣感染(女性) | 患部(膣内側)を綿棒でぬぐう |
咽頭感染 | うがい液またはノドの粘膜をぬぐう |
肛門感染 | 細い綿棒を使って、肛門内をぬぐう |
患部をぬぐう方法は医師や看護師のレクチャーを受け自己採取も可能です。
また女性は生理中は血液が混じってしまい正確な結果が出ないこともあるので、生理終了後に検査を受けるようにしましょう。
クラミジアと淋病は似ているので同時検査する
クラミジアと淋病は、その症状や感染部位がとてもよく似ています。
淋病の特徴 | |
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男性の主な症状 | 尿道の違和感、かゆみ、排尿痛、尿道から分泌物 |
女性の主な症状 | おりものの変化、違和感、かゆみ |
感染部位 |
|
淋病も同じように性行為による粘膜の接触によって淋菌に感染し、感染部位に炎症を起こします。
男女とも喉(のど)の場合は多くが無症状です。
淋病の症状が出る場合、女性より男性のほうが症状が強く出る傾向にありますが、症状の感じ方には個人差があります。
また、クラミジアに感染した人の20〜30%は淋病を合併しているケースがあります。
疑わしい症状が出ている場合には、クラミジアと淋病の両方の検査を推奨します。
淋病の詳細
クラミジアの治療方法について
クラミジアの治療は、細菌感染に効果がある抗生物質を用います。
抗生物質
- アジスロマイシン(ジスロマック)
- クラリスロマイシン(クラリス、クラシリッド)
- シタフロキサシン(グレースビット)
- レボフロキサシン(クラビット)
例外として、治りが悪い場合や重症化しているケースでは、点滴によって治療することもあります。
また、治療の注意点として、抗生物質は処方された分を必ず飲みきるようにしてください。
理由は、症状が消えても菌が残っている可能性があることと、中途半端に服用してしまうと耐性菌といって抗生物質が効かない菌を増やす原因にもなるためです。
フィットクリニックで処方する クラミジア治療薬 |
ジスロマックジェネリック250mg 7,700円/(4錠) |
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クラビット500mg 7,700円/(7錠) |
クラミジアは自然に治らない
クラミジアが自然に治ることはありません。
放っておくと菌が増殖していき、体内に炎症を広げていくので悪化は免れません。
風邪をひいた際に抗生物質を使用してクラミジアも治るといったケースもまれにありますが、完治させないとクラミジア菌が体内に残り再び症状が現れる可能性があります。
治療後には再検査が必要
クラミジア治療は再検査により菌が残っていないかを検査して、陰性であれば治療が完了です。
完治までの期間のおおまかな目安は以下の期間です。
1〜7日(抗生物質の服用) + 2週間ほどあける(再検査) = 約3週間
ほとんどの人は一度の治療で治りますが、場合により1回の治療だけでは体内に菌が残っていることもあるので治療期間が伸びることはあります。
また、痛みや見た目の症状が消えても油断はできないので、再検査までがクラミジア治療であることは覚えておきましょう。
クラミジアの感染を防ぐ方法
クラミジアに対しての予防接種というものは存在しないため、感染を防ぐには以下の方法を取ります。
- 性行為をしない
- コンドームを使用する
- 性行為のパートナーを限定する
また、感染の可能性がある性行為を行って72時間以内という条件を満たした場合、抗生物質「ビブラマイシン」の服用でクラミジアを予防する効果があるとされます。
性行為をしないという選択以外は感染の可能性をゼロにはできないことも理解しておきましょう。
クラミジアの予防法の詳細
感染リスクを高める4つの危険因子
クラミジアが感染しやすい危険因子に以下があります。
4つの危険因子
- 新しいパートナーができた
- 性交渉する相手が多い
- コンドームを使わない
- 体調が悪い(疲労の蓄積など)時の性行為
いずれか1つでも当てはまっても、クラミジアの検査を受けることで早期の治療が可能となり、感染がないとしても安心につながります。
クラミジアへの感染状況
性器クラミジアの発生動向調査によると、2017年あたりから感染者数が増えつつあり、特に2021年から2023年にかけては男女ともに感染報告が急増しています。
時代が変わっても20代の感染者数は依然として多く、少子高齢化によって高齢の人たちに比べ若者の感染者数は更に増加する可能性があるとも見られています。
クラミジアに関するまとめ
日本の性感染症(STD)の中で感染者数が最も多い病気がクラミジアです。
1回の性行為での感染率は30〜50%と非常に高く、予防の意識を常に備える必要があります。
感染が起こった場合は無症状のケースもありますが、リスク行為のあとの検査と、感染の際の服薬治療でクラミジアの感染拡大を防ぐことができます。
クラミジアは淋病との同時感染の場合もあることからも性病検査はとても重要です。
対応する医薬品でしか性病は治療できないためです。
感染を放置しておくと重大な病気や男女の不妊へと進行し、自然に治ることはありません。
もしパートナーのどちらかに感染がわかった場合、必ず相手にも知らせ、検査・治療を一緒に受けてください。 性病治療について
クラミジアに関するよくある質問
-
- Qパートナーが感染しても、自分に症状が無ければ治療しなくても良いですか?
- Aパートナーが感染していれば、症状がなくとも感染している可能性は十分にあります。
まずはご自身もクラミジアの検査を受け、検査結果によっては必ずパートナーと一緒に治療を受けるようにしてください。
完治のタイミングを合わせることで、ピンポン感染の予防にも繋がります。
- Q
-
- Qどんな場合に検査を受ければ良いですか?
- A異変を感じる、感染部位に痛みや違和感を伴っていれば、検査を受けることをおすすめします。
ただし男性50%、女性80%は無自覚ともされているだけに、コンドームの不使用や不特定多数の人と関係があれば、定期的に検査を受けましょう。
- Q
-
- Q治療期間中にセックスできますか?
- A治療期間中のセックスはNGです。
治療後の再検査によって「陰性」の結果が出る前にセックスをしてしまうと、パートナーに感染させてしまいます。
また完治後も菌に対しての抗体はできないので、お互いが治るまではセックスを控えるようにしてください。
- Q
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