一方、自由診療の医療機関の治療費用は全額自己負担となるため、10,000円〜30,000円程度になることがあります。
保険適用かどうかは事前に医療機関に確認することを推奨します。
梅毒は感染すればほぼ死に至る病として恐れられてきましたが、現在は早期に治療を行えば完治が可能です。
この記事では、梅毒の治療法や治療期間、保険適用の有無、完治後の予防策に関する情報を詳しく解説します。
日本の梅毒感染者数は急増しています。
治療が遅れて深刻な健康問題に発展させないためにも、疑わしい症状や心当たりがある時は、すぐに検査を受けて早期発見・治療につなげていきましょう。
※フィットクリニックでは梅毒の治療は行っておりません。
梅毒の治療方法は、特別な理由がない限り、ペニシリン系の抗菌薬(抗生物質)を第1選択薬とするのが基本です。
いずれの抗菌薬も細菌性の感染症への有効性が認められており、細菌の破壊や増加の抑制に効果的です。
梅毒治療の基本であるペニシリン系抗菌薬は、梅毒の原因となる病原体の「梅毒トレポネーマ」の構造(細胞壁)を破壊し、増殖を抑えて殺菌的作用を示します。
また、同じ系統の薬であっても、注射や点滴、内服薬など種類はさまざまです。
症状や梅毒の病期に合わせて、適切な剤形が選択されます。
ここからは剤形ごとに、どんな薬が選ばれるのか詳しく見ていきましょう。
海外では、梅毒の標準治療薬として用いられてきたのが注射薬です。
「ステルイズ(ベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤)」という薬で、筋肉注射によりペニシリンを直接体内に投与することで抗菌作用を発揮します。
日本では、長らく飲み薬(内服薬)が梅毒治療の主流とされてきました。
しかし、2022年に国内でもステルイズの販売が開始され、梅毒の治療環境は大きく変わりつつあります。
梅毒の完治にかかる期間は飲み薬とほぼ同じですが、1日3回2週間の内服に対して、注射は1回で同等の抗菌作用が得られます。
治療の負担が大幅に軽減され、飲み忘れによる再発・再燃の心配もほとんどありません。
梅毒の原因である梅毒トレポネーマが中枢神経系に侵入してしまった場合、注射や内服薬による治療はできません。
このような「神経梅毒」と呼ばれるケースでは、点滴入院が必要です。
病院での点滴治療は10〜14日ほどの入院が必要となり、ペニシリンGカリウム(ベンジルペニシリンカリウム)というペニシリン系抗菌薬を投与します。
薬剤を直接血管内に薬剤投与することで、速やかに全身に行き渡り、すぐの効果が期待できます。
そのほか、点滴薬が用いられるケースは以下の通りです。
第3期に移行した梅毒 | ゴム腫や手足の麻痺、心血管系の病気を起こす重症例 |
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先天梅毒 | 胎内感染によって引き起こされる梅毒 |
なお、神経梅毒は、梅毒の病期(第1〜4期)を問わず起こる可能性があります。
早期神経梅毒(第1〜2期)であれば脳に炎症を起こすことがあり、後期神経梅毒(第3期〜)になると、進行麻痺や脊髄癆(せきずいろう)といった命に関わる深刻な症状を引き起こすため注意が必要です。
日本の梅毒治療の標準治療とされてきたのが、内服薬(飲み薬)です。
アレルギーなど服用できない特別な理由がない限りは、ペニシリン系抗菌薬(抗生物質)である「サワシリン(アモキシシリン)」が第一選択薬として使用されます。
もしペニシリンアレルギーなどからサワシリンを使用できない場合には、以下のような薬剤が用いられます。
ただし、世界的にマクロライド系抗菌薬に耐性を持つ菌が広がっており、十分な抗菌作用が期待できない場合があります。
そのため、ペニシリンが使えない場合には、基本的にテトラサイクリン系抗菌薬が第2選択薬となります。
マクロライド系抗菌薬は、胎児への影響を回避する目的で妊婦の方に用いられる場合が多いです。
梅毒の治療期間は病期によっても異なりますが、通常は2〜4週間(14〜28日)です。
注射薬や内服薬であっても期間はほとんど変わらず、正しく治療すれば完治が可能となっています。
注意点として、治療中に一時的に症状が消えたように見えても、そこで治療をやめてしまうと再発・再燃の原因になりかねません。
「症状がない=完治」ではないので、症状の有無に関係なく、医師の指示に従って治療を続けるようにしてください。
また、治療期間後は治癒確認が必要になるので、1ヶ月ほどの間隔をあけてから血液検査が必要になります。
梅毒は、性器以外にもさまざまな部位に病変を作ります。
また4つの病期で症状が変化していき、その症状もさまざまであり、他の病気と間違われることもあることから「偽装の達人」とも呼ばれています。
■第1期
梅毒トレポネーマに感染した部位に、硬性下疳(無痛の硬いしこり)がみられます。このしこりは自然に消えることがありますが、まれに潰瘍になってしまうことがあります。また、鼠蹊部(太もものつけ根あたり)に腫れが見られることもあります。
■第2期
全身のリンパ節が腫れるほか、発熱、倦怠感、関節痛といった風邪に似たような症状が現れることがあります。特に「バラしん」と呼ばれる赤い発心が手足の裏から身体中に広がり、顔にまで広がることもあります。なお、この発疹は治療しなくても消えますが、回復を意味するわけではないので注意が必要です。
■第3期
この時期に入ると、皮膚などの表面的な症状にとどまらず、筋肉や骨などにゴム腫が発生します。
■第4期
臓器にも腫瘍が発生し、脳や脊髄、神経を梅毒トレポネーマに侵されます。命に関わる臓器や器官に異常が起こるため、症状によっては死に至ることもあります。
梅毒は死に至ることもある非常に恐ろしい感染症ではあるものの、ペニシリンという特効薬により第3期、第4期に進行することは稀です。
疑わしい症状や異常を感じた際には、速やかに医療機関で検査を受けるようにしてください。
梅毒の治療費用は、医療機関によって異なります。
以下は、保険適用の有無による一般的な目安です。
保険適用であれば、診察料や検査費用、治療費用を含めて5,000円前後が目安です。
◾️保険適用外の場合保険適用になるのは、保険診療を行う病院に受診し、以下の条件を満たす場合です。
予防的に検査を受けたり、自由診療のクリニックに受診した場合は保険が適用されません。
詳しい治療費を知りたい場合には、医療機関に直接問い合わせすることを推奨します。
また、神経梅毒であった場合、入院となると費用が高額になることもあるので覚えておいてください。
梅毒は、感染機会から2〜4週間以上が経過すれば検査可能です。
主に以下の2種類の検査を受けます。
梅毒に感染した際に作り出される「カルジオリピン」という脂質抗体を用いた検査です。
梅毒の感染の有無と、その活動性を確認できるので、症状が認められている方の確定診断のためだけではなく、入院や検査の際も感染の確認のためにも実施されます。
■TP検査原因である梅毒トレポネーマそのものの抗体を調べる検査です。
この検査は感染初期だと陰性を示すことがあるので、まずはSTS(RPR)検査を行い、陽性であった場合にTP検査を用います。
これらの検査を組み合わせることで、より正確に梅毒の診断が可能です。
※梅毒に該当する症状が現れて心配な方は、検査キットで感染の有無を確認することを推奨します。梅毒の治療後、おおむね1ヶ月の間隔をあけて治癒したかどうかの再検査が必要です。
症状が消えたからといって完治とはならず、抗体検査(血液検査)により梅毒トレポネーマ抗体の値が低下傾向にあれば治癒と判断されます。
しかし、梅毒の抗体検査による判断の解釈は難しいとされています。
抗体の値は体に起きた反応を後から追いかけているようなものであり、検査結果が陰性でも症状がみられるケースもあるからです。
そのため、治療が終了しても、おおむね4週間ごとに検査を受け、可能であれば1年間のフォローアップが推奨されています。
再検査は、梅毒検査キットを用いてセルフチェックも可能です。
再発や再感染のリスクを早期に発見し、適切な対応を取るためにも積極的に行うようにしてください。
梅毒は完治しても免疫ができることはありません。
感染者との接触機会があれば何度も感染するので、再発を予防するためには以下の方法が有効です。
これらの方法で100%の予防はできませんが、感染機会を減らしたり、感染部位との粘膜や皮膚の接触を抑えることが可能です。
また、抗生物質の1つであるビブラマイシン(ドキシサイクリン)は、梅毒の予防に一定の効果があるとして報告されています。
特に、MSM(男性同性間性的接触者)やトランスジェンダーの女性に対して予防効果が確認されています。
不安な性行為後72時間以内にビブラマイシンを服用することで、梅毒や他の性感染症のリスクも減らすことができます。
フィットクリニックでもビブラマイシンの処方を行っております。
詳しくは以下のリンクをご覧ください。
梅毒はペニシリンという特効薬が発見されて以来、病期が第3期以降に進行してしまうケースは稀です。
しかし、病期を問わず、神経梅毒によって日常生活に大きな支障を来たすこともあるので、検査による早期発見と治療がとても重要になります。
検査キットを用いれば自宅でセルフチェックもできるので、疑わしい症状は放置せずに積極的に調べるようにしてください。
フィットクリニックでも、検査キットを取り扱っております。
オンライン診療で診察から検査結果の確認までを済ませられるので、医療機関へ直接相談することに抵抗感がある方でもプライバシーを守りながら早期発見に役立てられます。
梅毒の疑わしい症状があるだけでなく、パートナーが変わった際や、不特定数との性行為がある場合も、当院にお気軽にご相談ください。
第1期:2~4週間程度
第2期:4~8週間程度
第3期:12週間程度
治療後も再発の恐れがあるため、定期的な検査が必須です。
心配な方は検査キットを利用したセルフチェックもできます。