喫煙は健康に多大な影響を及ぼすことが知られていますが、その中でも特に注目されるのが肺への影響です。
本記事では、以下の内容についてまとめています。
喫煙は健康に深刻な影響を与えますが、禁煙することで健康へのリスクを大幅に軽減できます。
この記事を通じて、喫煙と健康に関する知識を深め、より健康的な生活を目指していきましょう。
タバコによる肺の影響
喫煙を続けていると肺に多大な負担がかかり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や他の呼吸器疾患のリスクが増大します。
タバコの煙にはさまざまな有害物質が含まれており、ニコチン、タール、一酸化炭素などを吸い込むことで肺や呼吸器に深刻なダメージを与えます。
- 中枢気道:粘液を作る腺が大きくなり、痰が増える、細胞に異常が起こり、がんに発展するなど変化を起こす
- 末梢気道:粘液の過剰産生で気道に粘液が詰まりやすくなる、気道が狭くなり呼吸がしにくくなる
- 肺の変化:酸素を交換する小さな袋が壊れる、肺への血液の流れが減少する、酸素供給が不足する
上記の変化により、喫煙者は非喫煙者に比べて、咳、痰、喘鳴、息切れなどの症状が多くみられるようになります。
また、喫煙は気管支喘息のリスク因子でもあり、受動喫煙は小児の喘息に関連していることもわかっています。
喫煙を続けると肺の健康は失われていき、周囲にも呼吸器疾患を引き起こす可能性があることを覚えておきましょう。
喫煙者の肺が黒くなる理由
喫煙者の肺が黒色になる理由は、タバコに含まれるタールが原因です。
タバコの煙に含まれるタールは粘着性が高く、吸い込むことで肺に付着し蓄積されていきます。
家庭内の喫煙スペースの壁紙や家電が黄色あるいは茶色に変色するのと同じように、タールの蓄積が長期間続くと肺は黒く変色してしまうのです。
「タバコを吸うと肺が真っ黒になる」というのは嘘ではありません。
また、タールは黒い色素を沈着させるだけでなく、肺組織にダメージを与え、正常な機能を阻害します。
タバコは肺が黒くなるだけでなく、肺機能にも悪影響を及ぼすものです。
喫煙者の肺がんのリスク
喫煙を続けると、肺がんのリスクが大幅に上がります。
厚生労働省の報告によると、喫煙男性は非喫煙男性に比べて肺がんで死亡する確率が約4.5倍も高いといわれています。
これはタバコに含まれる化学物質が肺細胞の遺伝子(DNA)を直接傷つけ、細胞が異常に増えすぎてしまうためです。
また、喫煙者の肺がんの死亡についてのリスクを示すデータもあります。
非喫煙者を1とした時、喫煙者の肺がんで死亡するリスク
喫煙本数 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
35本以上 | 8.4 | ‐ データなし |
25〜34本 | 7.1 | ‐ データなし |
15〜24本 | 5.4 | 3.1 (15本以上) |
5〜14本 | 3.3 | 2.5 |
1〜4本 | 2.5 | 1.9 |
出典:喫煙の健康影響について(厚生労働省)
1日1箱以上タバコを吸っている人は、肺がんで死亡するリスクが高まることがわかります。
また、肺だけでなく、タバコの煙が通り道となる、口腔、喉、気管、気管支でもがんのリスクは高まります。
これらの呼吸器系は肺と同様に、タバコの有害物質に直接さらされるため、がん細胞の発生リスクが上がってしまうのです。
その他の病気のリスク
喫煙は肺の他にも、さまざまな病気を引き起こすリスクが高くなります。
部位 | 病気 |
---|---|
悪性腫瘍 | 全身のがんのリスク |
呼吸器系 | COPD(肺気腫、慢性気管支炎)、気管支喘息、間質性肺疾患など |
循環器系 | 狭心症・心筋梗塞(虚血性心疾患)、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、ビュルガー病 |
神経系 | 脳出血、脳血栓、くも膜下出血、脳萎縮、睡眠障害 |
内分泌系 | インスリン非依存型糖尿病、糖尿病性腎症、HDLコレステロールの低下 |
消化器系 | 潰瘍(胃、十二指腸)、慢性萎縮性胃炎、クローン病、肝硬変、慢性膵炎、胆石症 |
感覚系 | 白内障、難聴 |
外科・麻酔科系 | 術後の合併症増加 |
整形外科系 | 骨粗しょう症 |
歯科系 | 歯周病、口内炎 |
その他 | 皮膚のシワ増加、ED、老化促進、免疫機能低下 |
がんに次いでリスクの割合が高いとされているのが、循環器系の病気です。
非喫煙者を1とした時、1日1箱前後(15~34本)で、虚血性心疾患のリスクは3倍、心筋梗塞は3.6倍にもなります。
心臓に関わる病気は日本の3大死因でもあるので、タバコが発症の確率を引き上げてしまいかねないので注意が必要です。
喫煙者の肺は元に戻る?
喫煙による肺のダメージは、完全には元に戻らないことが多いものの、禁煙を続けていくことで一部のダメージは改善されていきます。
長期間の喫煙により引き起こされた損傷は、禁煙後も残る可能性が高く、肺の機能低下やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のリスクは完全には消えません。
しかし、禁煙を続けていくと少しずつ呼吸が楽になり、咳や痰の症状が和らいでいきます。
軽度・中等度のCOPDのある人では、禁煙から1年後には肺機能の改善がみられることがあります。
さらに、5〜9年で肺がんのリスクも明らかに低下し、禁煙してから10〜15年後には病気のリスクが非喫煙者と変わらないレベルにまで近づきます。
タバコを吸い続けている限り、1本吸うごとに肺の健康は失われていきます。
50代ですでに80代と同じレベルの肺機能しか残っていない方もおり、肺の健康は「今」がもっとも良い状態と考えられています。
どこまで健康な肺を残せるかが重要なので、早期の禁煙がより良い回復をもたらすことは覚えておいてください。
健康のためにも禁煙は効果的
禁煙によって得られる健康効果は、肺や呼吸器だけにとどまりません。
タバコを数時間やめるだけで身体機能は回復しはじめ、数日で味覚や嗅覚、睡眠の質が改善されるのを実感できます。
さらに禁煙を続ければ、免疫力が上がり風邪などの感染症にかかりにくくなることや、心臓や血管といった循環機能も改善されていき、日々健康に向かっていきます。
全身の健康が上向いていき、QOL(生活の質)も高まるため、禁煙にはメリットしかありません。
フィットクリニックの禁煙治療
フィットクリニックの禁煙治療では、チャンピックスジェネリックを治療薬として処方しています。
チャンピックスはニコチンを含まない「非ニコチン製剤」と呼ばれる薬で、喫煙による満足感や離脱症状を減少させることで禁煙時のストレスを大幅に軽減できます。
当院の禁煙治療は通常12週間にわたり行い、オンライン診療を実施しているので、初診から通院不要で禁煙治療をスタートさせることが可能です。
禁煙治療薬を用いた治療は、薬を飲むだけというシンプルな方法でありながら高い禁煙成功率を誇っています。
また、「1本だけお化け」と呼ばれる禁煙後のタバコを吸いたくなる衝動に対応するため、1ヶ月ごとの定期配送プログラムも用意しています。
禁煙後までサポートできる環境が整っているので、自力でタバコをやめるのが難しいと感じている方はフィットクリニックまでお気軽にご相談ください。
まとめ:喫煙は肺がんや病気のリスクが上がる
この記事のまとめは以下のとおりです。
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)や他の呼吸器疾患のリスクが増大する
- タバコに含まれるタールが肺を黒くする原因
- 肺がんで死亡する確率は非喫煙者の約4.5倍
- がんをはじめ、タバコは全身の病気の原因となりうる
- 禁煙を続けることで身体機能が戻っていき、病気のリスクも明らかに低下する
タバコを1本吸うたびに健康は脅かされていきます。
直接影響を受ける肺や呼吸だけでなく、その害は全身にまでおよび、受動喫煙により周囲の方の健康にも悪影響を及ぼします。
自分自身と大切な方の健康を守るためも、必要に応じて禁煙治療を受けながら卒煙の一歩を踏み出しましょう。
よくある質問
タールは粘着性が高く、吸い込むことで肺に付着し蓄積され、肺が黒く変色します。
従来のタバコよりは有害物質が少ないとされますが、健康リスクがないわけではありません。
その約70種類は発がん性物質とされ、こうした物質がのどや肺だけでなく、血液を通じて心臓や血管など全身に悪影響を及ぼすことがわかっているためです。
その1年後には軽度・中等度のCOPDのある人でも肺機能が改善されていき、5〜9年で肺がんリスクは明らかに低下し、10〜15年後にはリスクが非喫煙者と同じレベルに近づきます。
このように肺が元に戻るまでには時間がかかるので、早めの禁煙が重要です。