こちらの記事はフィットクリニック服部圭太院長が監修しています。

器質性EDは、神経障害や血管障害による勃起不全の総称です。
主に糖尿病や動脈硬化など神経や血管に異常をきたす疾患が原因となり発症します。
器質性EDは放置していると症状が悪化し、勃起自体ができない「重度のED」になる可能性があります。
本記事では器質EDの原因となる病気や症状について詳しく解説しています。
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器質性EDの原因
⇒神経障害、血管障害、内分泌機能低下など -
器質性EDの改善方法
⇒ED治療薬を利用する、原因となる疾患を治療する、生活習慣の見直し
また、器質性EDの主な治療で服用するED治療薬をはじめとした治し方や、心因性EDとの判別方法もお伝えします。
自分が器質性EDかもしれない、と不安を感じている方や、器質性EDの改善法・治療法について詳しく知りたい方は、参考にしてください。
なお、ED(勃起不全)に関する詳細は以下のページでご確認ください。 ED(勃起不全)とは
器質性EDとは
器質性EDとは、神経障害や血管障害といった身体的な原因によって引き起こされる勃起障害です。
以下は、器質性EDの特徴です。
- 性交時に勃起しない、または時間がかかる
- 勃起時に十分な硬さが得られない
- 朝立ちをしない
- 中折れする
- 特定の病気の罹患や手術後に勃起しにくくなった
- 【重度】全く勃起が起こらない
なお、重度の器質性EDの場合、完全に勃起が起こらなくなくこともあるため、早期の治療が重要です。
器質性EDの原因
器質性EDは、身体的な原因によって引き起こされます。
具体的には、神経障害、血管障害、内分泌機能低下が主な原因です。
これらの身体的なトラブルにより、陰茎への血液流入が阻害され、十分な勃起が得られない状態となります。
神経障害による器質性ED
神経障害は、神経に障害が生じることで、脳が興奮を感じても勃起命令が伝達しないために起こります。

器質性EDを発症しやすい神経障害は、以下の通りです。
神経障害による器質性EDの原因 | |
---|---|
不慮の事故![]() |
自動車やバイク事故などで脊髄損傷や骨盤を損傷し、神経が傷ついたり断裂してEDを発症 |
椎間板ヘルニア![]() |
椎間板の組織が脊髄や神経を圧迫することで、中枢からの神経伝達に影響が出てEDを発症 |
外科手術![]() |
前立腺がん、直腸がんなどの骨盤内外科手術の手術の際に神経が切断されてEDを発症 |
糖尿病![]() |
糖尿病により骨盤神経の障害(糖尿病性抹消神経障害)が起こると、脳からの興奮が伝わりづらくなりEDを発症 |
脳梗塞![]() |
脳梗塞を経験したことで精神的なストレスやうつ状態になり、その結果性欲の減退や身体機能の低下が起こりEDを発症 |
パーキンソン病![]() |
ドパミンの減少による運動障害。疾患に付随する肉体的なストレス及び精神症状(うつ・不安・無感動)によりEDを発症 |
多発性硬化症![]() |
中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患。神経に損傷があり、陰茎まで通常通りに信号が送られずEDを発症 |
以上の表のように、器質性EDでも発症の要因は多岐にわたります。
中でも、糖尿病の患者のED発症率は高いです。
米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の調査によれば、糖尿病患者のEDの発症率は、健常者の2〜3倍に昇り、さらに糖尿病ではない男性に比べて10〜15年も早くEDを発症する可能性があるとされています。
糖尿病をはじめとする神経障害とEDには、深い関係があるのです。
血管障害による器質性ED

血管が細くなり血流が悪くなることで、性器の海綿体に十分な血液が流れ込まなくなり、器質性EDを引き起こします。
この障害の主な原因は動脈硬化です。
動脈硬化は、陰茎の海綿体内の微細な血管でも起こります。
脂質異常症(高脂血症・高コレステロール血症)も血管障害の一因です。
脂質異常症により血液がドロドロになり、血流が悪化してEDを引き起こします。
具体的な仕組みについては、以下の図1を参照ください。

さらに、糖尿病は神経障害だけでなく、血管障害による器質性EDの原因にもなります。
糖尿病によって動脈硬化や高血圧が起こり、血管が細くなることでEDに繋がるという仕組みです。
内分泌機能低下による器質性ED
EDの原因として挙げられるのが、内分泌機能の低下です。
内分泌機能の低下は、男性ホルモンのテストステロンが減少することで起こります。
テストステロンが減少する主な原因は、加齢やストレス、喫煙、飲酒などです。
テストステロンが低下することで起こる症状をまとめて「LOH 症候群(男性更年期障害)」と呼びます。
男性更年期障害による勃起力の低下については以下のページでも詳しく解説しています。 男性更年期障害とEDについて
器質性EDは20代も発症するのか
20代であっても、器質性EDの発症の可能性はあります。
生活習慣が極端に悪かったり、極度の肥満であったりすることが主な原因です。
これらの因子があると、糖尿病や高血圧のリスクが高まり、結果的に器質性EDにもつながります。
発症する主な原因
- 生活習慣が極端に悪い
- 肥満
- 糖尿病
- 高血圧
若いからと油断せず、健康に配慮した生活習慣を身に付けていきましょう。
器質性EDと心因性EDを判別する方法
ED診療ガイドラインによると、心因性EDと器質性EDの判別には夜間勃起現象(nocturnal penile tumescence: NPT)での評価が有効であるとされています。
- 夜間勃起減少は睡眠中に数回の勃起を繰り返す現象
- 3晩連続、または最低2晩測定する
- 測定にはリジスキャンプラスという測定器を使用する
- 陰茎遠位で10分以上持続する少なくとも60%以上の硬度が得られれば正常と判定できる
- 正常と判定できない場合は器質性EDの疑いがある
ただし、器質性EDの判別ができても、心因性EDも併発した「混合性ED」や、全く別の薬剤性EDといった可能性もあるため、自己判断で完結せずに、医師に相談しましょう。 心因性EDについて
器質性EDの治し方
器質性EDの改善には、原因となる疾患の治療や生活習慣の改善が必要です。
ただし、それらの根本治療には時間がかかるため、ED治療薬との併用が有効です。
器質性EDの治し方は、以下の3つです。
以下、順に説明していきます。
ED治療薬の服用
ED診療ガイドラインでも「EDのファーストライン治療はPDE5 阻害薬(ED治療薬)である」とされるとおり、器質性EDの治療にはED治療薬が最も効果的です。
その有効率は器質性、心因性を問わず70~80%が治療可能であるとされています。
また、生活習慣改善も並行して行うことでより改善が見込めます。
- 加齢によって血流の流れが悪くなっている場合や動脈硬化などの場合も有効
- ED治療薬にはバイアグラ、レビトラ、シアリス、ステンドラ、ザイデナ(ジェネリックを含む)などがある
- 有効成分により勃起の強さや効果発現時間、持続時間が異なる
ED治療薬は血流促進効果が高いため、脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヶ月以内の方は服用できません。
症状を確認してED治療薬を使用する必要があるので、必ず医師の判断を仰ぎましょう。

ED治療薬についての種類や比較の詳細は以下のページをご覧ください。 ED治療薬の種類と比較
原因となる疾患の治療
糖尿病や高血圧など、原因となりうる疾患の治療を行うことで器質性EDを改善できる可能性があります。
糖尿病の場合、食事や運動、薬物療法などによる血糖管理が重要です。
また、高血圧の場合も同じく、適切な薬物療法や生活習慣の改善が必要となります。
これらの治療を行うことで、血管や神経の健康を維持することが可能です。
ただし、個々の症例によって治療方法や効果は異なります。
まずは専門の医療機関で検査を行い、根本の原因が何かを診断してもらいましょう。
生活習慣の見直し
生活習慣を見直すことでも器質性EDは改善できます。
- 栄養バランスの良い食事を心がける
- 睡眠の質を向上させる
- ストレスを解消する
- 飲酒を減らす
- 禁煙する
など
小さな試みでも、日々の積み重ねがEDの改善に繋がります。ぜひ今日から生活習慣の改善を心掛けましょう。
器質性ED以外のEDについて
EDは器質性EDをはじめ、以下のような原因に分類できます。
【EDを引き起こす原因】
名称 | 原因 |
---|---|
器質性ED | 動脈硬化や神経の損傷 |
薬剤性ED | 特定の薬剤の服用や薬剤の過剰摂取 |
心因性ED | 心理的、精神的なストレス、精神疾患 |
混合性ED | 器質性EDと心因性EDの原因が合わさったもの |
糖尿病ED | 糖尿病が原因と考えられるED |
男性更年期ED | 男性更年期障害が原因と考えられるED |
器質性EDについてまとめ
ここまで、器質性EDの原因や治し方について解説してきました。
最後に本記事の内容をまとめてお伝えします。
- 器質性EDは、神経障害、血管障害、内分泌機能障害によるEDのことを指す
- 主な原因として、ヘルニア、糖尿病、脳梗塞、男性ホルモンの低下などが挙げられる
- 夜間勃起現象の測定で器質性EDと心因性EDを判別できる
- 20代でも器質性EDになる可能性がある
- 生活習慣の見直しやED治療薬の服用によって、器質性EDは改善できる
なお、ED治療や当院のオンライン診療については以下のページをご覧ください。 当院のED治療
器質性EDについてよくある質問
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- Q
器質性EDの治し方はどのような方法ですか?
- A
器質性EDは、ED治療薬の使用と生活習慣の見直しによって改善できると考えられています。
ただし、生活習慣の見直しによるED改善は時間を要するため、投薬治療と併せて行いましょう。
また、器質性EDは糖尿病や脳梗塞などの疾患が潜んでいる場合もあるため、自己判断してはいけません。
必ず医療機関に相談の上、ED治療を行ってください。
- Q
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- Q
器質性EDはどの科を受診すればいいですか?
- A
器質性EDを治療するためには、泌尿器科や男性専門のクリニックを受診しましょう。
器質性EDの場合、脳梗塞や糖尿病などの潜在的な健康問題が関与していることがあります。
そのため、医師の専門的な判断が欠かせません。
自己判断は避け、必ず医療機関で適切なED治療を受けましょう。
- Q
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- Q
神経障害はEDの原因になりますか?
- A
神経障害はEDの原因のひとつです。また、神経障害によるEDを「器質性ED」と呼びます。神経に障害が生じることで、脳が興奮を感じても勃起命令が伝わらずEDを引き起こすのです。
器質性EDとなりうる神経障害は、糖尿病やヘルニアなどの身近な疾患も含まれます。
- Q
-
- Q
器質性EDの特徴はなんですか?
- A
器質性EDは、神経障害や血管障害による勃起不全の総称です。
具体的な特徴としては、- 性交時に勃起しない、または時間がかかる
- 勃起時に十分な硬さが得られない
- 朝立ちをしない
- 中折れする
- 特定の病気や手術のあと勃起が起きにくくなる
器質性EDはEDの中でも原因がさまざまで自己判断が難しいため、必ず医療機関で医師の診断を受けましょう。
- Q
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- Q
糖尿病が器質性EDの原因なのはなぜですか?
- A
糖尿病が、血管障害や神経障害を引き起こすからです。
糖尿病によって動脈硬化や高血圧が起こり、血管が細くなることでEDを発症します。
また、糖尿病はこのような血管障害だけではなく、骨盤神経の障害(糖尿病性抹消神経障害)も引き起こします。
神経の損傷により脳からの興奮が伝わりづらくなり、EDを発症するという仕組みです。
- Q
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- Q
器質性EDの判別方法はありますか?
- A
器質性EDと心因性EDの判別方法の1つに夜間勃起現象を測定する方法があります。
測定器を用いて3晩計測し、陰茎遠位で10分以上持続する少なくとも60%以上の硬度が得られれば正常と判定できます。
ただし、EDは心因性を併発する混合性EDなどもあるため、最終判断は医師の診察を受けましょう。
- Q
その他よくある質問はこちらをご確認ください
参考サイト
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この記事の監修

(はっとり けいた)医師
【略歴】
- 平成17年
- 医療法人財団 河北総合病院 勤務
- 平成29年
- ゴリラクリニック 池袋院 管理者
- 令和5年~
- フィットクリニック院長 勤務
器質性EDは糖尿病や高血圧といった基礎疾患や、直腸がん、前立腺がんの手術で発症率が上がることから、加齢により発症リスクが上がる傾向にあります。