ED(勃起障害・勃起不全)とは
ED(勃起障害・勃起不全)とは、満足な性行為を行うために十分な勃起が得られない、または維持できない状態を指します。
原因は「心因性ED」「器質性ED」「薬剤性ED」「混合性ED」と4つに分類されます。
本記事では、EDの原因や症状の段階、EDを診断する方法をわかりやすく解説します。
当院のED治療やED治療薬に関する情報は下記をご覧ください。
EDとは
EDとは「Erectile Dysfunction」の略で、勃起障害、勃起不全という意味です。
「満足な性行為を行うための勃起に至らない、または勃起を維持、持続できない状態」を指します。


- 性的刺激で脳が興奮を感じ、神経に勃起の信号を送るがうまく伝わらない
- 陰茎海綿体の動脈が拡張しにくくなる
- 血液が十分に流入しない
- 陰茎が膨らまない、もしくは勃起はしても維持できない
EDの原因

EDの原因には、身体的要因(器質性ED)、心理的・精神的なストレス(心因性ED)、服用中の特定の医薬品による薬剤性ED、そしてこれらが複合する混合性EDがあります。
心因性ED | 心理的、精神的なストレスが原因で起こるED 20~40代に多い |
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器質性ED | 動脈硬化や神経の損傷などが原因のED 年齢に関係なく発症するが、加齢によりリスクは高まる |
薬剤性ED | 特定の薬剤の服用で起こるED 年齢関係なし |
混合性ED | さまざまな原因のEDが密接に関わったED 40~60代に多い |
精神的なストレス(心因性ED)
心因性EDは、精神的ストレスや不安などが原因で起こるEDです。
身体的異常がないことが特徴で、朝立ちやマスターベーションが可能でも性行為が難しい場合に疑われます。
主な原因には、仕事やSNSなどのストレス、過去のトラウマ、うつ病、性へのプレッシャーなどがあり、これらが性的刺激の伝達を妨げ、勃起困難や中折れを引き起こします。
最近では、20〜30代の若年層に心因性EDで悩む方も増えています。
心因性EDについて
血管や神経の障害(器質性ED)
器質性EDは、血管や神経、ホルモンの障害によって勃起が困難になる状態です。
主な原因は動脈硬化、生活習慣病(糖尿病や高血圧など)、神経損傷、テストステロンの減少などです。
陰茎の血管や神経は繊細で、動脈硬化や神経障害の影響を受けやすい傾向にあります。
テストステロンの減少の原因は、加齢や運動不足、睡眠不足が挙げられます。
また、喫煙はテストステロンの分泌に悪影響を及ぼすため、タバコが性欲減退につながる可能性もあります。
器質性EDについて
男性の更年期障害について
糖尿病とEDについて
特定の薬剤が原因(薬剤性ED)
薬剤性EDは、服用中の医薬品の副作用によって起こるEDです。
原因となる薬剤には、抗うつ薬、睡眠薬、降圧剤、男性ホルモン抑制剤などがあります。
ただし、該当する薬を服用していたからと言って、必ずEDを引き起こすわけではありません。
EDの症状が出ていても、器質性や心因性が原因の可能性もあるため、自己判断せずに必ず医師に相談してください。
薬剤性EDについて
複数の原因が重なっている(混合性ED)
混合性EDは、心因性・器質性・薬剤性の複数の要因が重なって起こるEDです。
たとえば、加齢による動脈硬化と医薬品の副作用、そこにストレスや不安が加わるケースなどです。
特に中高年層では、器質性EDや薬剤性EDの発症リスクも高く、そこから心因性EDにつながる場合もあります。
EDの原因が複雑化するため、改善には時間がかかることがあります。
混合性EDについて
EDの症状
EDの定義として、性行為時に勃起の維持または持続ができない状態も含まれるため、中折れや硬さの低下もEDの症状に当てはまります。
EDの初期症状
EDの初期症状には、以下のような症状がみられます。
- 朝立ちしない日がある
- たまに中折れすることがある
- 勃起時の硬さの低下
- 性行為に対する意欲の減退
EDの定義として、性行為時に勃起の維持または持続ができない状態も含まれるため、中折れや硬さの低下もEDの症状に当てはまります。
また、朝立ちしない日が続いている場合は、血管や神経、内分泌系の障害による「器質性ED」の可能性があります。
中折れの原因と改善方法
中程度のED症状
- うまく性交できない場合のほうが多くなる
- 勃起できる回数がさらに減少
- 性交中の勃起維持力がさらに減少
- 初期EDでの性行為の失敗により更に消極的になる
EDの初期症状と比べ、勃起できる回数や勃起維持力がさらに弱まります。
性欲もあり完全なEDではありませんが、勃起させるまでの時間を要するようになるなど、うまく性交できる回数自体が減少します。
重度のED
- 性的興奮があっても勃起しない
- 性行為に必要な勃起力を維持できない
- 一度も勃起したことや勃起を持続できたことがない(原発性ED)
重度のEDは、事故による神経の損傷や病気、心理的な原因により、勃起が困難または全く勃起ができなくなる状態です。
こうした場合もED治療薬の服用で効果を得られることがあります。
ED治療薬で改善しない場合は、低衝撃波治療や幹細胞治療といった血管再生治療を行い、ED治療薬が効く状態へと回復を目指します。
一時的にEDとなるケース
一方、以下のケースは一時的なEDである場合もあります。
飲酒後勃起しにくい | 自身の飲酒量に見合わない多量の飲酒により中枢神経の働きが抑制され、勃起をするための信号が性機能に上手く伝わらなくなる |
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過激なポルノ画像・映像への依存 |
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コンドーム装着段階でEDを発症 |
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これらは一時的なEDの場合もある一方、すでにEDが進行している場合や心因性EDである可能性もあります。
EDは人により改善する場合もありますが、必ずしも自然治癒するわけではありません。
放置するとEDの症状が悪化する恐れもあるため、早めの治療が望ましいと言えます。
EDを診断する方法
EDを診断する方法には問診や診察といった身近なものから、心理テスト、内分泌検査、生理的勃起機能検査、神経系検査、血管系検査など専門的な検査もあります。
また、EDの症状をご自身で診断する目安に、国際勃起機能スコア(IIEF-5)や、Sexual Health Inventory for Men(SHIM)があります。
日本人は性行為の機会が少ないため、ED診療ガイドラインでは国際勃起機能スコアよりも0点の項目を持つSHIMを用いて診断するのが適格とされています。
Sexual Health Inventory for Men(SHIM)
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
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勃起を維持する自信は どの程度ありますか |
非常に低い | 低い | 中くらい | 高い | 非常に高い | |
性的刺激によって勃起した際、どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりますか | 性的刺激は なかった |
ほとんど、 又は全くない |
たまに (半分よりかなり低い頻度) |
時々 (ほぼ半分の頻度) |
しばしば (半分よりかなり高い頻度) |
ほぼいつも、 又はいつも |
性交の際や挿入後、どれくらいの頻度で勃起の維持ができましたか | 性交を 試みなかった |
ほとんど、 又は全くない |
たまに維持 (半分よりかなり低い頻度) |
時々維持 (ほぼ半分の頻度) |
しばしば維持 (半分よりかなり高い頻度) |
ほぼいつも、 又はいつも維持 |
性交の際や性交を終了するまで、勃起の維持はどれくらい困難でしたか | 性交を 試みなかった |
極めて困難 | とても困難 | 困難 | やや困難 | 困難でない |
性交を試みた際、どれくらいの頻度で性交に満足できましたか | 性交を 試みなかった |
ほとんど、 又は全く満足できない |
たまに満足 (半分よりかなり低い頻度) |
時々満足 (ほぼ半分の頻度) |
しばしば満足 (半分よりかなり高い頻度) |
ほぼいつも、 又はいつも満足 |
※スマホでは横にスクロールします
重症度分類 | 合計点(25点満点) |
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重度ED | 5~7点 |
中程度ED | 8~11点 |
軽度~中程度ED | 12~16点 |
軽度ED | 17~21点 |
EDではない | 22~25点 |
※性交機会があった場合のみこの分類が当てはまります。
EDを改善する方法
ED治療の第一選択は、ED治療薬を使った薬物療法です。
薬の服用で効果が得られない場合やEDの原因に応じて、以下の治療が用いられる場合もあります。
- 心理療法(カウンセリング・認知行動療法)
- CPAP(シーパップ)
- 投薬中の薬の変更
- 血管再生治療
EDは適切な治療を行うことで、改善が期待できる病気です。
また、血流の悪化やストレスが原因でEDを引き起こしている場合は、生活習慣の見直しにより改善することもあります。
日本国内のED全国調査データ
日本性機能学会の臨床研究促進委員会が、2023年に「勃起障害(ED)に関する調査」を実施しました。
この調査では、国内成人男性の約3人に1人がEDであるということが示されています。
2023年 | 1998年 | |
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日本国内 ED有病率 |
約1,400万人 | 1,130万人 |

世代別のEDの割合を見ると、50代、40代の中高年に多いイメージだったEDが、20代でも3割弱という高い比率で発症していることがわかりました。
若年層は体力的には性的活動に支障ない人が多い一方、性行為の経験不足や仕事・生活環境のストレスといった心因性EDの発症が多いとされます。
また、近年の不妊の原因が男性にある場合が多いことも認知されてきました。
不妊治療の性行為に必要なタイミングでのプレッシャーや、妊娠の失敗からくる焦りで、心的負担から生じる心因性EDになる場合もあります。
ED(勃起障害・勃起不全)についてまとめ
EDの症状や原因についてのまとめは、以下の通りです。
- EDとは「十分な勃起が得られない、維持できない状態」を指す
- EDの原因は心因性、器質性、薬剤性、混合性に分類される
- EDは初期症状からEDを疑うことができ、中程度ED、重度EDで症状に違いがある
- EDは放置すると症状が悪化する可能性がある
- 一時的なEDの場合もED治療薬での改善が期待できる
ED(勃起不全)は、適切な治療や生活習慣の見直しにより、改善が期待できます。
当院では、ED治療薬によるED治療を行っておりますので、少しでも気になる症状があればぜひご相談ください。
ED(勃起不全)についてよくある質問
-
- Q
EDはなんの略で読み方はなんですか?
- A
「ED」とは、英語「Erectile Dysfunction」の略称で勃起障害・勃起不全のことです。
「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」を指します。
- Q
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- Q
朝立ちしますが、中折れするときがあるのはEDですか?
- A
朝立ちは問題なく、性行為時のみ中折れしてしまう場合は、心因性EDの可能性があります。
朝立ち(夜間勃起)は精神的な影響が受けにくい現象となり、朝立ちできていれば身体的には問題ないと考えられます。 中折れの原因と改善方法
- Q
-
- Q
急に勃たなくなったのはなぜですか?
- A
ED(勃起障害・勃起不全)にはさまざまな原因があります(ストレス、生活習慣の変化、薬の副作用、過剰な飲酒や喫煙、その他の健康問題)。
ただし、自己判断で原因を特定するのは危険なため、異常を感じたら医師に相談しましょう。
EDの治療法は人によって異なるため、自分に合った解決策を見つけることが大切です。
- Q
-
- Q
EDはどのようにしてなりますか?
- A
ED(勃起障害・勃起不全)は、心理的なストレスや身体的な健康問題、不健康な生活習慣などが原因で起こります。
血管の問題や病気も関与している可能性もあるので、性機能に異常を感じた場合は自己判断せず、医師に相談しましょう。
- Q
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- Q
EDになりやすい人はどんな人ですか?
- A
EDになりやすいのは、以下の特徴を持つ人です。
- 高血圧や糖尿病、心臓病を抱えている
- 運動不足や肥満、喫煙など生活習慣が不健康である
- うつ病を患っているなど精神的な負担が大きい
改善のためには生活習慣を正す方法はもちろん、ED治療薬で性機能を向上させる方法が有効です。
- Q
-
- Q
EDの症状にはどのようなものがありますか?
- A
EDの主な症状として、勃起しない又は勃起状態が続かない、性的な興奮を感じない、勃起時に硬くならない、などが挙げられます。
これらの症状が長期間続く場合は、医師の診断と治療が必要です。
- Q
-
- Q
ED改善にサプリメントは有効ですか?
- A
EDを改善するという触れ込みでEDサプリメントが販売されていますが、サプリメントは副作用も少ない反面、長期間飲み続け体質を改善させていくといった利用方法の栄養補助食品で、明確な治療効果を持つ医薬品とは違います。
- Q
-
- Q
コロナEDとはなんですか?
- A
コロナEDとは新型コロナウイルス感染症の後遺症によると考えれるEDです。
コロナ後遺症はまだ未知の領域ながら、後遺症として現れる人がいるという点を除けば、症状は通常のED(勃起不全)と同様と考えられます。
- Q
-
- Q
コロナワクチン接種とED治療薬の併用はできますか?
- A
コロナワクチンとED治療薬の併用について、接種前後の服用に問題があるという報告はありません。
ただし服用には体調を優先させ注意し、接種前後2日は服用を控えることをお勧めします。
- Q
-
- Q
EDを対策する方法はありますか?
- A
EDは症状に合わせ適切な治療をおこなうことで改善につながります。ED治療薬は一時的に症状を改善する効果が期待できます。精神的な原因によるEDでは、ED治療薬を服用して性行為の成功を重ねていくことで自信につながり、結果としてEDの根本的な治療に繋がる可能性があります。
- Q
-
- Q
タバコをやめるとEDは治りますか?
- A
タバコをやめることは、ED改善に役立つことがあります。
喫煙がEDの一因である場合、禁煙によって血管や神経の健康が改善され、それがEDの状態を良くする可能性があるためです。しかし、EDの原因は多岐にわたるため、禁煙がすべての人のEDを治すわけではありません。
- Q
-
- Q
ED・早漏・射精障害・インポテンスの違いはなんですか?
- A
ED・早漏・射精障害・インポテンスは以下の違いがあります。
・ED:勃起を維持、持続できない男性器の症状
・早漏:挿入後1分以内で射精、もしくは挿入前に射精してしまう症状
・射精障害:さまざまな原因により射精できない症状
(膣内射精障害、神経性射精障害、逆行性射精障害など)
EDとインポテンスはほぼ同義ですが、現在は「ED」が一般的に使われています。
EDの以前の呼称が「インポテンツ」「インポテンス」「インポ」と呼ばれており、差別的な意味合いで使われることから、EDが一般的となりました。
- Q
-
- Q
タバコはEDの原因になりますか?
- A
喫煙によってEDになるとは断言できませんが、タバコがEDの原因になる可能性は十分に考えられます。
タバコに含まれるニコチンなどの有害物質が正常な勃起を困難にする場合があります。
また、喫煙は血流や男性ホルモンであるテストステロンの分泌に悪影響を及ぼし、性欲減退につながる恐れもあります。
- Q
その他よくある質問は
こちらをご確認ください
参考サイト
- Cigarette smoking and erectile dysfunction among Chinese men without clinical vascular disease
- Effect of 1 Week of Sleep Restriction on Testosterone Levels in Young Healthy MenFREE
- Smoking and risk of erectile dysfunction: systematic review of observational studies with meta-analysis
- @press「一般社団法人日本性機能学会のプレスリリース」
- 夜間睡眠時勃起現象 (NPT) を用いたインポテンスの鑑別診断
この記事の監修

(はっとり けいた)医師
【略歴】
- 平成17年
- 医療法人財団 河北総合病院 勤務
- 平成29年
- ゴリラクリニック 池袋院 管理者
- 令和5年~
- フィットクリニック院長 勤務