更新日:2025/09/29
バイアグラのEDに対する有効性と作用機序

バイアグラは、世界初のED(勃起不全)治療薬です。
1998年に米国大手製薬会社ファイザーより発売、国内では翌年1999年から処方が開始されました。
ここでは臨床試験のデータに基づき、バイアグラの有効性を解説します。

当院では、バイアグラ以外のED治療薬も処方を行っていますので、気になる方は以下よりご確認ください。 当院のED治療とED治療薬の種類

バイアグラとは

バイアグラとは、米国大手製薬会社ファイザーが開発したED治療薬で、有効成分はシルデナフィルクエン酸塩です。
もともと虚血性心疾患(狭心症)治療薬としてファイザー社により研究開発が進められましたが、試験参加者から勃起改善の副作用が報告されたことでED治療薬の開発が進められました。

米国では1998年にFDAによりED(勃起不全)の治療薬として承認され、同年には欧州(EMA)で販売承認されました。国内では、1999年に厚生省から製造販売が承認されています。
世界各国でED治療薬として用いられ、特許が切れた現在は、バイアグラジェネリックが流通しています。

バイアグラのオンライン診療による処方や効果などの基本情報は以下のページで分かりやすく解説していますのでぜひ確認してみてください。 バイアグラ処方と基本情報

バイアグラのEDに対する有効性

バイアグラのEDに対する有効性は、国内外の臨床試験データで示されています。
国外の経口シルデナフィル(25、50、100mg)とプラセボ(有効成分を含まない偽薬)を比較した試験では、性交試行の成功率がシルデナフィルが69%、プラセボが22%と有意な改善が見られました。[1]
同様に国内で行われたシルデナフィル(25、50、100mg)とプラセボを比較した試験でも改善が確認されています。

また、シルデナフィルは、糖尿病や高血圧などの合併症があっても有効性が示されています。
糖尿病患者単独の無作為化試験では、12週時点で勃起改善を報告した割合は、シルデナフィルが56%に対しプラセボは10%で、少なくとも1回の成功性交は61%と有意に改善しました。[2]
さらに、合併症別の42試験プール解析では、合併症なし77%、高血圧・心血管疾患71%、糖尿病63%で、いずれもプラセボを上回りました。[3]

年齢別の有効性を比較した試験では、全ての年齢層(<65、65-74、≧75歳)のED男性で勃起機能と性行為満足度を有意に改善を示しています。改善率は年齢上昇によりやや低下するものの、75歳以上でも有効であると報告されています。[4]

長期的な有効性として、2年間の有効性に関する評価では、初年度の使用で74%の患者が性交可能な勃起を得ました。
2年後の追跡でも半数以上の患者が治療を継続し、約20%は効果維持のために用量増加が必要、17%は効果減少により中止する例がありましたが、副作用による中止は少数に限られました。[5]

国内外の臨床試験データから、バイアグラ(シルデナフィル)は、年齢や基礎疾患を問わず幅広い患者に効果が期待できると考えられます。

バイアグラの効果については以下のページで分かりやすく解説しています。 バイアグラの効果

シルデナフィルクエン酸塩の作用機序

シルデナフィルクエン酸塩の作用機序は、陰茎海綿体におけるホスホジエステラーゼ5(PDE5)を選択的に阻害し、cGMPの分解を抑制することです。
これにより、平滑筋弛緩作用が持続し、勃起が促進されます。

シルデナフィルの作用機序を図解:PDE5を阻害して血流を改善し、勃起を維持しやすくする

PDE5阻害薬とは、ホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)を選択的に阻害する薬剤です。
性的刺激により放出される一酸化窒素(NO)がcGMPを産生しますが、PDE5はcGMPを分解します。
PDE5阻害薬はこの分解を抑制し、cGMP濃度を維持することで陰茎平滑筋を弛緩させ、血流を増加させ、勃起を促進します。

勃起の仕組みと
シルデナフィルクエン酸塩の作用機序
  1. 性的刺激によりNO(一酸化窒素)が放出
    性的刺激で陰茎内の神経末端や血管内皮細胞からNOが放出されます。
  2. cGMPの生成と平滑筋弛緩
    NOは平滑筋内のグアニル酸シクラーゼを活性化し、cGMPを生成します。
    cGMPは平滑筋を弛緩させ、海綿体への血流を増加させます。
  3. PDE5阻害によるcGMP分解抑制
    シルデナフィルはPDE5を阻害し、cGMPの分解を抑制します。
    これにより平滑筋弛緩作用が持続し、勃起が促進されます。

心因性ED・器質性EDに対する効果

バイアグラ(シルデナフィル)は、心因性および器質性EDの両方に対して有効であるとされています。
器質性、心因性、または混合性EDの男性を対象とした、プラセボとの比較試験では、シルデナフィル群で74%の患者が勃起の改善を報告し、性交成功率も有意に高かったとされています。[6]

バイアグラの用法用量

バイアグラは、性行為の約1時間前に空腹時に水またはぬるま湯とともに服用します。
食事の影響を受けやすいため、空腹時に服用することが重要です。

バイアグラの用法用量
  • 空腹時に1錠を水やぬるま湯で服用
  • 性行為の1時間前に服用
  • 食後の場合は2時間空けて服用
  • 服用後、次回の服用までは24時間以上間隔を空ける
    ※水やお湯がない場合はお茶でも服用可

空腹時に服用することで吸収が速く、血中濃度のピーク到達が早くなり、効果発現までの時間が短縮されます。
食後(特に高脂肪食後)に服用すると、吸収が遅れ効果の発現が遅れる場合があります。[7]
バイアグラを服用する際は、高脂肪な食事を避け、食後に服用する場合は、2時間以上は時間を空けてください。

服部院長

バイアグラの飲み方については以下のページで分かりやすく解説しています。
バイアグラの飲み方

バイアグラ使用上の注意

バイアグラの注意点として、副作用や併用禁忌薬があります。

バイアグラ使用上の注意

服用前に必ずご確認ください。

主な副作用の発現頻度(頭痛・ほてり)

シルデナフィル(バイアグラ)の最も頻度の高い副作用は、頭痛と顔面紅潮(ほてり)です。
これらは、PDE5阻害による血管拡張(cGMP増加に伴う血管拡張作用)が原因と考えられています。

主な副作用
  • 顔の火照り、潮紅 (発生率:5.78%)
  • 頭痛(発生率:3.87%)
  • 鼻づまり(発生率:0.1~1%未満)
  • 目の充血(発生率:0.1~1%未満)
  • 動機(発生率:0.1~1%未満)
  • 胸やけ・消化不良(発生率:0.1~1%未満)

など

重大な副作用として、持続勃起や非動脈性前部虚血性視神経症(NAION)、網膜色素変性症などによる視力低下、視覚喪失、心筋梗塞などの心疾患が報告されています。

バイアグラの副作用については以下のページで分かりやすく解説しています。
バイアグラの飲み方

併用禁忌薬:硝酸薬・一部抗不整脈薬など

バイアグラの併用禁忌薬には、硝酸剤及びNO供与剤、アミオダロン塩酸塩、sGC刺激剤などがあります。

  薬剤名
併用禁忌薬 硝酸剤及びNO供与剤
(ニトログリセリン・亜硝酸アミル ・硝酸イソソルビド・ニコランジル等)
アミオダロン塩酸塩
(アンカロン錠)
sGC刺激剤
(リオシグアト/アデムパス錠)
併用注意薬 チトクロームP450
3A4阻害薬
(リトナビル・エリスロマイシン・ケトコナゾール等)
チトクロームP450
3A4誘導薬
(ボセンタン等)
降圧剤
α遮断剤
カルペリチド

高齢者や肝・腎障害例ではシルデナフィル血中濃度が上昇するため、25mgから開始が推奨されます。
重度心疾患例では、性行為自体が禁忌であり投与は避けるべきです。

服部院長

バイアグラの併用禁忌・注意については以下のページで分かりやすく解説しています。
バイアグラの併用禁忌・併用注意

バイアグラの見た目と種類

バイアグラには一般的な錠剤タイプと、水なしで服用できるODフィルムタイプの2種類があります。

バイアグラ錠25mg バイアグラODフィルム25mg
剤形 フィルムコート錠 口腔内崩壊フィルム剤
色調 青色 うすい赤色
質量 154.88mg 短辺16mm・長辺24mm・厚み約0.2mm
識別
コード
表面:Pfizer、裏面:VGR 25 該当しない
有効
成分
1錠中シルデナフィルクエン酸塩
35.12mg
(シルデナフィルとして25mg)
1フィルム中
シルデナフィルクエン酸塩
35.12mg
(シルデナフィルとして25mg)
添加剤 結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、乳糖水和物、酸化チタン、トリアセチン、青色2号 クロスポビドン、スクラロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、マクロゴール 400、酸化チタン、三二酸化鉄、l-メントール

国内で承認されているバイアグラの用量は、25mgと50mgの2種類です。
海外では100mgも承認されています。※国内では未承認です

バイアグラジェネリック「シルデナフィル錠」との違い

バイアグラジェネリックである「シルデナフィル錠」の有効成分はシルデナフィルクエン酸塩であり、先発薬のバイアグラとジェネリックで効果や安全性に大きな差はありません。

先発薬とバイアグラジェネリックの違い

  先発薬バイアグラ バイアグラ
ジェネリック
有効成分 シルデナフィル
服用
タイプ
錠剤、ODフィルム 錠剤、OD錠
錠剤:青
ODフィルム:薄いピンク
錠剤:青、白、薄いピンク
OD錠:白
錠剤

ODフィルム
薄いピンク
錠剤
青、白、薄いピンク
OD錠
形状 錠剤:ひし形
ODフィルム:フィルム状
錠剤:楕円、ひし形、丸型
OD錠:丸形
錠剤
ひし形
ODフィルム
フィルム状
錠剤
楕円、ひし形、丸型
OD錠
丸形
効果 勃起のサポート、
ED(勃起不全)の改善
(ほぼ同じ)
効果時間 3~5時間
(ほぼ同じ)
副作用 血管拡張作用による症状
(ほてり、紅潮、頭痛など)
(ほぼ同じ)
価格 1,300~1,600円 342~1,100円

※価格は当院の処方価格です

シルデナフィル錠は先発薬と異なる添加物を使用できるため、色や形状、味が異なる場合があります。
また、後発薬のため先発薬よりも安価で流通しています。

生物学的同等性試験(血中濃度の推移を比較)

生物学的同等性試験の条件
  • 対象製品:シルデナフィル錠50mgVI「DK」とバイアグラ錠50mg
  • 対象者:健康な成人男性20名
  • 試験方法:クロスオーバー法
  • 投与条件
    • 各製剤を1錠ずつ(シルデナフィルとして50mg)絶食時に単回経口投与
    • 血漿中のシルデナフィル濃度を測定
  判定パラメータ 参考パラメータ
AUC0-24
(ng・hr/mL)
Cmax
(ng/mL)
Tmax
(hr)
t1/2
(hr)
シルデナフィル錠
50mgVI「DK」
570±220 196±95 1.2±0.8 2.6±1.4
バイアグラ錠
50mg
550±235 191±83 1.4±0.8 2.4±0.5

(平均値±標準偏差、n=20)
※血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性があります

薬の体内動態パラメータ(AUCやCmax)を統計的に解析したところ、信頼区間が「log(0.80)〜log(1.25)」の範囲に収まり、生物学的に同等であることが証明されています。
つまり、先発薬とジェネリックが同等の効果を期待できるということの証明です。

国内製・海外製ジェネリックの違い

シルデナフィル錠には大きく分けて国内製・海外製の2つに分けられます。

シルデナフィル錠の種類
  • 国内製シルデナフィル錠
    「シルデナフィル錠 VI『製薬会社名』」のように、名称が統一されています。
    ※VIはVIAGRA(バイアグラ)の頭文字です
  • 海外製シルデナフィル錠
    「カマグラ」など製品ごとに異なる名称があることがほとんどですが、日本では「シルデナフィル錠」と総称されることがあります。
    ※当院では、「シルデナフィル錠」もしくは「バイアグラジェネリック」と呼んでいます。

国内製と海外製の主な違いは、価格と医薬品副作用被害救済制度の適用の有無です。

種類 価格 医薬品副作用
被害救済制度
国内製 高価 適用
海外製 安価 適用外

個人輸入で海外製のシルデナフィル錠を入手した場合、偽造品や粗悪品が混入しているリスクがあるため注意が必要です。

注意が必要な海外製シルデナフィル錠

ここでは、個人輸入いわゆる個人輸入代行(海外通販)サイトで販売されている代表的なバイアグラジェネリックを紹介します。

注意が必要な
海外製バイアグラジェネリックの例

製品名 製薬会社 用量 特徴
カマグラ・カマグラゴールド アジャンタ・ファーマ社 50/100mg 錠剤、ゼリー、チュアブルタイプなどがある。
スーパーカマグラ アジャンタ・ファーマ社 160mg 早漏防止薬の成分ダポキセチンも含まれる
バイスマ アスレ製薬 50/100mg 先発薬と同等のED改善効果を低価格で実現
カベルタ サンファーマ 50/100mg 先発薬と同等のED改善効果を低価格で実現

ここで紹介したのは海外製バイアグラジェネリックのほんの一例にすぎません。
これらの海外医薬品は、本物であれば効果は同等が期待できますが、個人輸入では偽物混入リスクが高いため注意しましょう。

他のED治療薬(シアリス・レビトラ)との比較

ED治療薬で代表される、シアリス(タダラフィル)やレビトラ(バルデナフィル)もPDE5阻害薬に分類されるため同様の作用機序になりますが、それぞれ特徴が異なります。

効果発現時間 持続時間 副作用
バイアグラ
(シルデナフィル)
30分〜1時間 3~5時間 頭痛 3.87%
ほてり、潮紅 5.78%
レビトラ
(バルデナフィル)
15~30分 5~8時間 頭痛 5.59%
ほてり 15.66%
※国内のデータ
シアリス
(タダラフィル)
1~3時間 30~36時間 頭痛 1%以上
潮紅 1%以上
ほてり 0.2~1%未満

当院ではレビトラやシアリスのほか、アバナフィルやウデナフィルも処方しています。

それぞれのED治療薬の有効性についての詳細は、以下で解説しています。 ED治療薬の有効性

バイアグラはED治療における第一選択薬のひとつ

バイアグラ(シルデナフィル)は、世界的に使用実績が豊富で、有効性を裏付ける臨床エビデンスも多数報告されているPDE5阻害薬です。
心因性・器質性を問わず幅広いED患者に効果が確認されており、ED治療の第一選択薬のひとつとして国内外で推奨されています。

一方で、硝酸剤およびNO供与剤などの併用禁忌薬が存在し、頭痛・ほてり・消化不良など一定の頻度で報告される副作用についても理解が必要です。

高い有効性に加え、安全性に関する十分な理解が必要であり、医師の指導のもとでの使用を推奨します。

以下のページではバイアグラの処方や購入について詳しく解説しています。 バイアグラ通販・処方と基本情報

この記事の監修

服部圭太院長画像
服部 圭太
(はっとり けいた)医師

【略歴】

平成17年
医療法人財団 河北総合病院 勤務
平成29年
ゴリラクリニック 池袋院 管理者
令和5年~
フィットクリニック院長 勤務

参考サイト