特に、お腹まわりに脂肪の蓄積がみられる内臓脂肪型肥満は、血圧を上げる原因になりやすいです。
肥満と高血圧の関係について|血圧が上がる原因と痩せたら下がるかについて
「肥満と高血圧は関係あるの?」
「血圧が上がる原因ってなに?痩せたら上がった血圧も下がるの?」
このような疑問に答えるために、本記事では肥満と高血圧の関係について詳しく解説します。
また、肥満が高血圧を引き起こすメカニズムや、体重管理によって血圧がどのように改善されるかについても触れています。
肥満は高血圧を含む生活習慣病のリスクを高めるため、健康維持のためにも日頃の体重管理が欠かせません。
高血圧など肥満による健康障害が複数起こった場合は肥満症となります。詳しくは下記のページをご確認ください。
肥満と高血圧の関係
肥満はさまざまな健康障害のリスクを含んでおり、高血圧もその1つです。
国民栄養調査の報告からは、肥満者は非肥満者に比べて高血圧の割合が2〜3倍多く、若いうちからの肥満傾向が高血圧に関係することがわかっています。
ちなみに、肥満には2つのタイプが存在します。
- 皮下脂肪型肥満:皮膚の下に脂肪が蓄積されるタイプ
- 内臓脂肪型肥満:内臓に脂肪が蓄積されるタイプ
同じくらいのBMI(体格指数)でも、内臓脂肪が多いと血圧が高くなるとの報告もあるため、「内臓脂肪型肥満」の方は高血圧のリスクに特に注意が必要です。
内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)とは
内臓脂肪型肥満とは、お腹を中心とした内臓まわりに脂肪が過剰に蓄積されている肥満です。
他の部位と比べてウエスト周りが目立って大きくなるため、その見た目から「リンゴ型肥満」とも呼ばれています。
このタイプの肥満は、男性に多くみられるのが特徴です。
- BMIが25以上
- ウエスト周りが85cm以上(男性)・90cm以上(女性)
また、見た目は太っておらず、BMIが正常範囲内であっても、体脂肪率が高い場合は「隠れ肥満」として内臓脂肪型肥満に含まれます。
健康障害のリスクが高く、特に糖尿病や高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病の発症リスクが高まるため、お腹がぽっこりと出てきたら黄色信号です。
内臓脂肪肥満型と高血圧について
脂肪細胞は体内の代謝に関わる物質をつくり、身体のエネルギーバランスをコントロールしています。
ところが、内臓脂肪が過剰になると糖や脂質の代謝に異常が現れ、結果として血圧を上昇させてしまいます。
①内臓脂肪の蓄積
体内の内臓脂肪量が増えると血液量も増加します。
②血管の圧迫
増加した血液は全身の血管に圧力をかけ、特に末梢血管が圧迫されることで血圧が上昇します。
③高インスリン血症の発生
肥満により高インスリン血症が起こると心臓から送り出される血液量が増加し、これがさらに血圧を上げる原因になります。
④血液の粘度増加
肥満の状態では血中の脂質が多く、ドロドロとした血液が細く圧迫された血管を通過することで心臓に大きな負担をかけて血圧を上昇させます。
内臓脂肪型肥満は、こうしたさまざまな要因が組み合わさることで高血圧を引き起こします。
肥満で高血圧になる原因
肥満は高血圧の原因になりやすく、主に2つの生理的な変化を通じて血圧を上昇させます。
血管の収縮
⇒交感神経を刺激し血管を収縮させることで血圧が上昇
体液量の増加
⇒体内に蓄積された余分なナトリウムや水分といった体液量の増加により血圧が上昇
これらの変化がどのように高血圧につながるのか、詳しい原因について解説します。
交感神経が活発になり血管が収縮する
肥満や過食が引き起こすインスリン分泌の増加は、交感神経の働きを活発にします。
これをきっかけに、副腎からはカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)という手や足の末梢血管を収縮させるホルモンが分泌されます。
①食べ過ぎやインスリン分泌の増加
↓
②交感神経の働きが活発になる
↓
③カテコールアミンが分泌され末梢血管を収縮させる
↓
④血圧の上昇
血管が収縮して血液の通り道が狭まってしまうと、心臓は血液を押し出すためにより多くの力を使う必要があります。
ホースの先をつまんで水流を強くした状態と同じになり、血管壁などにテンションがかかり続けることで血圧が上昇してしまいます。
過食等による循環血液の増加
肥満者は、過食による摂取カロリーの増加だけでなく、食塩の摂取量も多くなりがちです。
高塩分の食生活は血液中の塩分濃度を上げ、身体は濃度を調整するために余計な水分を保持しようとします。
その結果、血液量が増加して血圧が上がることになります。
塩分の摂りすぎ
↓
身体が水分を保持
↓
血液量の増加
↓
血圧の上昇
このプロセスは、蛇口を開けて流れる水の量を増やしている状態と似ています。
心臓には増えた血液量を全身に送り出すために多くの負荷がかかり、持続的に血圧が高い状態が続いてしまうことで高血圧を引き起こします。
インスリンが効きにくくなる
インスリンが効きにくくなることを「インスリン抵抗性」と呼び、この状態が続いてしまうと血糖値のコントロールが難しくなります。
コントロールするために、より多くのインスリンが分泌させようとしますが、これが高インスリン血症を引き起こします。
高インスリン血症を起こすと、以下のようなことから血圧にも影響を及ぼします。
交感神経の緊張が高まる
⇒血管を収縮させる
塩分調整障害を起こす
⇒血液量の増加
これらの影響により、インスリンの過剰分泌は血管や心臓に負荷をかけ、最終的には血圧を上昇させる原因となります。
減量すれば血圧は下がる?
体重を減らすことは、血圧の管理において非常に効果的な方法です。
一般的に、体重を1kg減らすと、血圧が約2mmHg下がるとされています。
これは、体重が減少することで血液の流れが改善され、心臓への負担が軽減されるためです。
しかし、無理な減量は逆効果となる可能性があります。
例えば、過度な食事制限や慣れていない強度の強い運動は、栄養不足や体調不良を引き起こし、結果的に健康を害してしまう恐れがあります。
健康的に減量するためには、計画的なアプローチが重要です。
急激に体重を落とそうとするのではなく、体重管理の基本である食事制限や適度な運動は、続けられるペースで行うことを推奨します。
目標としては、現在の体重から3%減らすのが理想的です。
健康的な減量を心がけることで、無理なく体重と血圧をコントロールでき、長期的な健康維持も期待できます。
肥満による高血圧の予防策・改善策
肥満による高血圧の予防・改善には、以下の2つが基本となります。
- 適度な運動
- 食生活の改善
これらの方法を実践することで、効果的な体重管理を行うと同時に、血圧を下げることにもつながります。
それぞれのアプローチを取り入れるにあたっては、適切な方法や注意点などがあります。
以下で詳しく解説していくので、日常生活に積極的に取り入れ、高血圧の予防・改善に役立ててみてください。
適度な運動
適度な運動は、肥満による高血圧の基本治療の1つです。
運動方法については、以下を参考にしてみてください。
運動時間:少なくとも1日30分(できれば毎日)
運動の強度:ややきつい(うっすらと汗をかく程度)
ただし、慣れない運動をいきなりはじめてしまうと、身体への負担も大きいです。
身体のことも考えると、掃除・洗濯・子供と遊ぶ・自転車で買い物にいくといった、生活環境の中で身体を動かす機会をできるだけ増やすようにしてみてください。
こうした日常的な活動でも身体を動かすことで血圧の低下は期待できます。
身体が慣れてきたタイミングから医師と相談しつつ、少しずつ有酸素運動に移行していきましょう。
食生活の改善
肥満の方は過食によるカロリーオーバーだけでなく、塩分も摂りすぎている傾向にあります。
塩分は血圧を上げる原因となるので、高血圧患者の減塩目標量は1日6g未満が強く推奨されています。
- 減塩料理の実践
- かけ醤油からつけ醤油に
- ラーメンの汁は残す
- むやみな調味料の使用を控える
- 香辛料や香味野菜を使う
- 外食や加工食品を控える
さらに、野菜や果物、大豆製品には、腎臓から食塩を排泄しやすくする「カリウム」が豊富に含まれているので積極的に取り入れてみてください。
普段の食事にひと手間くわえるだけで減塩しやすくなるので、料理を楽しみながら実践すると続けやすくなるはずです。
肥満と生活習慣病の関係
肥満による健康障害のリスクは高血圧だけではありません。
脂質異常症や糖尿病などを同時に引き起こすことが珍しくなく、併発することで動脈硬化のリスクが高まり、メタボリックシンドロームに進行することもあります。
肥満(特に内臓脂肪型)により、インスリンという血糖値をコントロールするホルモンの働きは弱まります。
その結果、血糖値が高くなりやすくなり、BMIが27を超えてくると糖尿病の発症リスクは2倍に増加します。
肥満(特に内臓脂肪型肥満)は、脂肪が過剰に溜まっている状態です。
そのため、血液中の脂質の量も増え、脂質異常症を発症しやすくなります。
またBMI29以上で高中性脂肪血症のリスクは2倍に、BMI29以上で高コレステロール血症のリスクも2倍に高まるという調査データもあります。
肥満に関連する生活習慣病はいずれも、一度発症すれば完治することはありません。
場合によっては生涯にわたって治療を続けなければならないこともあるので、早期にならないための対策を講じることが重要です。
【食事制限・運動不要】楽に痩せるならメディカルダイエット
肥満の方がいきなり食生活や運動を取り入れた生活に変えるのはストレスになりやすく、ダイエットの挫折の原因にもなります。
そんな方には、医師のサポートの元で行うメディカルダイエットが最適です。
メディカルダイエットは医師のサポートを受けながら行うダイエット法で、薬を用いて生活習慣に応じた太る原因にアプローチします。
厳しい食事制限や慣れない運動に励む必要もなく、治療を続けるだけで短期間でも一定の効果が期待できるのが特徴です。
また、メディカルダイエットによって肥満が解消されることで、肥満に関連するさまざまな健康障害のリスクも下げられます。
ストレスなく、効率的に痩せられるメディカルダイエットは、現代の忙しい生活にはおすすめのダイエット法です。
肥満と高血圧についてまとめ
肥満と高血圧は密接な関係があります。
- 肥満は高血圧のリスクを2~3倍に高める
- ぽっこりお腹の内臓脂肪型肥満は高血圧を引き起こしやすい
- 体重を1kg減らすと、血圧が約2mmHg下がる
- 塩分の摂りすぎに注意した食生活と適度な運動が高血圧の予防・改善に効果的
- メディカルダイエットを行うことで効率的に痩せられる
肥満の状態が続くと高血圧はもちろん、その他の生活習慣病の併発や肥満に関連した健康障害を引き起こす可能性もあります。
健康のために無理のない範囲で体重管理に取り組み、時にはメディカルダイエットも検討しつつ肥満解消を目指していきましょう。
肥満による高血圧に関するよくある質問
特に、お腹まわりに脂肪の蓄積がみられる内臓脂肪型肥満は、血圧を上げる原因になりやすいです。
血圧を正常範囲内にとどめるためにも、肥満解消のための適切な体重管理を行うことをおすすめします。
特に男性に多く見られ、高血圧やその他の生活習慣病のリスクが高まります。
減塩料理を心がけるだけでなく、食塩の排泄を促す「カリウム」が豊富に含まれる、野菜や果物、大豆製品なども積極的に取り入れるのがおすすめです。
厳しい食事制限や運動を必要とせず、いわゆるダイエット薬と呼ばれる医薬品を用いて短期間で効率的に痩せることができます。
これらの治療は体重管理・維持はもちろん、肥満の解消により関連する健康リスクを減らすためにも有効です。