レバチオは厚生省指定難病に指定されている肺動脈性肺高血圧症治療薬です。シルデナフィルクエン酸塩を成分としています。
このページではレバチオ錠20mg、ODフィルム、懸濁用シロップの効果、副作用、併用禁忌、併用注意、服用方法といった基本情報を解説します。
レバチオとは
レバチオについての基本情報は以下の通りです。
レバチオの概要
レバチオ錠 レバチオODフィルム |
レバチオ懸濁用シロップ | |
錠形 | 【レバチオ錠】 白色のフィルムコート錠剤 【ODフィルム】 薄赤色の口腔内崩壊フィルム |
赤色の粒子を含む白色 シロップ(懸濁して用いる) |
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有効成分 | シルデナフィルクエン酸塩 | |
効能または効果 | 肺動脈性肺高血圧症の治療 | |
副作用 | 頭痛、めまい、潮紅、消化不良、腹痛、低血圧、色視症など 過量投与で有害事象の頻度と重症度は上昇 |
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併用禁忌 | 硝酸薬及びNO供与薬、リトナビル含有製剤、ダルナビル含有製剤、イトラコナゾール、コビシスタット含有製剤、sGC刺激剤 | |
併用注意 | CYP3A4阻害薬、CYP3A4誘導薬、ボセンタン、降圧薬、α遮断薬、カルペリチド、ビタミンK拮抗薬、アミオダロン塩酸塩 | |
用法・用量 | 【成人】1回20mgを1日3回経口投与 【1歳以上の小児・体重20kg以上】1回20mgを1日3回経口投与 【1歳以上の小児・体重8kg以上20kg以下】1回10mgを1日3回経口投与 |
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薬価 | 【レバチオ錠】 742.2円/錠 【ODフィルム】 742.2円/錠 |
625.6円/mL |
製造販売元 | ヴィアトリス製薬 |
レバチオは2005年に欧米で肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension:PAH)治療薬として20mgが承認され、わが国でも2008年に承認されました。
2017 年 6 月現在PAH 治療薬として承認を受けている国は、欧米を含む 50 カ国を超えます。
肺動脈性肺高血圧症は致死性疾患であり、小児では成人に比べてより予後不良となることが報告されていることから、小児患者を含め、錠剤を飲み込むことが困難な患者が服用しやすい剤形として本薬のドライシロップ剤が開発され、2012年に欧米において承認されています。
その後わが国でも小児 PAH 患者に対する用法・用量の追加が目的で、「レバチオ錠20mg」を製造販売承認事項一部変更承認申請、ならびに「レバチオ懸濁用ドライシロップ900mg」、「レバチオODフィルム20mg」の製造販売承認申請(剤形追加)が行われています。
また、2023年6月より、レバチオのジェネリック医薬品である、シルデナフィル錠20mgRE「JG」が処方箋医薬品として販売されています。
シルデナフィル錠20mgRE「JG」 | |
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剤形 | 白色のフィルムコーティング錠 |
有効成分 | (1錠中) シルデナフィルクエン酸塩 28.090mg (シルデナフィルとして 20mg) |
添加剤 | 無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、ヒドロキシプロピルセルロース、タルク |
貯法 | 室温保存 |
有効期間 | 3年 |
レバチオの有効成分シルデナフィルクエン酸塩について
レバチオの有効成分シルデナフィルクエン酸塩とはホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬です。
cGMP(サイクリックGMP)分解酵素の「ホスホジエステラーゼ(PDE)5」を阻害して、cGMP濃度を上昇させる作用により血管を弛緩し、血流を通常よりも増幅させます。
シルデナフィルクエン酸塩は勃起不全治療薬(ED治療薬)のバイアグラと共通の成分です。
レバチオの効能または効果
レバチオの効能・効果は肺への血液循環改善による肺動脈性肺高血圧症への治療効果です。
肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)とは、心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)が狭くなることにより、血流が悪くなり、肺動脈の血圧が極端に高くなる難治性呼吸器疾患(指定難病)です。
肺への血液循環の悪化により少しの運動での息苦しさ、疲労、失神が主な症状です。
シルデナフィルクエン酸塩の作用により肺動脈平滑筋細胞内でPDE5を阻害しcGMP濃度を上昇させることで、肺動脈平滑筋が弛緩させ、血流を良くし、肺への血液循環を改善させます。
WHO機能分類クラスⅡ〜Ⅲ(中等度からやや重い)に対してレバチオはもっとも推奨度の高い治療薬とされています。
シルデナフィルクエン酸塩の肺動脈性肺高血圧に対する臨床試験
肺動脈性肺高血圧症の成人患者21名を対象に、シルデナフィル20mgを1日3回12週にわたって経口投与した臨床試験の結果は以下のとおりです。
肺動脈圧(mmHg):平均4.7の低下
肺血管抵抗係数(dyne・sec/cm5/m2):平均382の低下
歩行距離は延長され、肺動脈圧や肺血管抵抗も低下したことから、シルデナフィルの肺動脈性肺高血圧症への有意性が報告されています。
レバチオの副作用
副作用として現れやすい主な症状は以下の通りです。
5%以上 | 1%以上5%未満 | 1%未満 |
頭痛(30.6%)、めまい、潮紅、消化不良、腹痛、悪心、下痢 | 錯感覚、低血圧、ほてり、嘔吐、胃炎、四肢痛、筋痛、色視症(青視症、黄視症など)、霧視、結膜充血、そう痒症、発疹、浮腫、胸痛、疲労、発熱、食欲不振など | 片頭痛、感覚鈍麻、失神、血管障害、腹部不快感、便秘、頚部痛、咽喉頭疼痛、鼻咽頭炎、結膜炎、眼部不快感、網膜出血、耳鳴、難聴、多汗症、疼痛、無力症、倦怠感、動悸、頻脈、不整脈、不眠症、貧血、自発陰茎勃起、勃起増強、持続勃起症、体重減少、ALT増加、AST増加など |
副作用が出たときの対処法
頭痛や胃痛の対処にはロキソニン、バファリン、イブプロフェンといった頭痛薬、胃薬、整腸剤の使用も可能です。
重篤な副作用が発現した際は速やかに医療機関を受診してください。
レバチオの併用禁忌
レバチオの併用禁忌は以下の通りです。
- 硝酸剤及びNO供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等)
- sGC刺激剤(リオシグアト)
- リトナビル含有製剤(ノービア、カレトラ、パキロビッド)
- ダルナビル含有製剤(プリジスタ、プレジコビックス)
- イトラコナゾール(イトリゾール)
- コビシスタット含有製剤(スタリビルド、ゲンボイヤ、プレジコビックス)
レバチオの併用注意
レバチオの併用注意は以下の通りです。
- CYP3A4阻害薬(エリスロマイシン、シメチジンなど)
- CYP3A4誘導薬(ボセンタン、リファンピシンなど)
- 降圧剤
- α遮断剤
- カルペリチド
- ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)
- アミオダロン塩酸塩
また、一酸化窒素吸入療法とシルデナフィルクエン酸塩を併用する場合は、緊急時に十分対応できる医療施設で肺動脈性肺高血圧症の治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとでの慎重投与とします。
レバチオの用法・用量
肺動脈性肺高血圧症の治療にレバチオを用いる場合、服用方法は以下のとおりです。
1回20mgを1日3回経口投与
<小児(1歳以上)>
体重20kg超:1回20mgを1日3回経口投与
体重8kg以上20kg以下:1回10mgを1日3回経口投与
低出生体重児、新生児、乳児または8kg未満の幼児および小児に対しては臨床試験が実施されていません。
また、本剤のヒト母乳中への移行が確認されていることから、授乳婦への投与は避けること、やむを得ない投与の際は授乳の中止が推奨されます。
まとめ
最後にレバチオについてのまとめをお伝えします。
- レバチオは肺動脈性肺高血圧症治療薬
- 錠剤、ODフィルム、シロップがある
- 有効成分シルデナフィルクエン酸塩はバイアグラの成分としても知られる
- 副作用は頭痛が約30%で、頭痛薬でも対応できる
- 重篤な副作用が出たら速やかに医療機関を受診すること
- 成人は1日3回経口投与
- 小児も1日3回経口投与だが、体重で投与量が異なる
- 授乳婦への投与は避ける
よくある質問
レバチオについてのよくある質問を以下にまとめてお伝えします。
バイアグラ:25mgまたは50mgを1日一回投与
⇒レバチオ:20mgを1日3回投与
※小児は10mgを1日3回
共通点は成分が同じシルデナフィルクエン酸塩(Sildenafil Citrate)であるという点です。