ED・勃起不全

男性不妊になりやすい人とは|原因や治療法についても解説

こちらの記事はフィットクリニック服部圭太院長が監修しています。
男性不妊になりやすい人とは|原因や治療法についても解説 ED・勃起不全

不妊症は女性だけの問題と考えられがちですが、2017年に実施されたWHOの調査結果では、不妊症の48%は男性側にも原因があることが明らかになりました。

具体的には、不妊症のうち、男性・女性ともに原因がある割合が24%、男性のみに原因がある割合が24%になります。

不妊原因の割合

本記事では男性不妊になりやすい人の特徴や原因、治療法について解説しています。

男性不妊にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

■この記事を読んでわかること

※クリックすると説明に飛べます

男性不妊になりやすい人の特徴

男性不妊になりやすい人の特徴は、以下の3つにあらわれます。

以下、順に解説していきます。

見た目(睾丸の状態)にあらわれる特徴

睾丸の状態で判断できる特徴としては、以下が挙げられます。

■男性不妊の見た目の特徴
  • 睾丸が小さい、あるいは、思春期の頃より小さくなった
  • 睾丸を触ると柔らかい、ハリが無い
  • 睾丸の上に複数の血管のコブ(精索静脈瘤)がある
  • 睾丸の位置が陰嚢内の上方や鼡径(そけい)部にある人(睾丸が降りていない、停留睾丸)

精子は睾丸で作られるため、睾丸に異常があると精子が正常に作られず、不妊に発展する可能性があります。

特に睾丸の位置が上部にあると熱がこもりやすく、不妊の原因になるため治療が必要です。

手術歴や病歴にあらわれる特徴

以下の手術歴や病歴がある場合は、男性不妊のリスクが高まります。

■男性不妊になりやすい病歴・経験
  • 幼少期に鼡径(そけい)ヘルニアの手術受けている
    (精子は鼡径(そけい)管を通るため、手術の際ダメージを受けている可能性がある)
  • おたふく風邪に罹患後、精巣炎で睾丸が腫れた経験がある
  • 抗がん剤治療や放射線治療を受けたことがある
  • 高熱の際、睾丸近くに痛みを感じたことがある
など

精子を作る細胞は熱に弱い性質があります。

睾丸付近に炎症と痛みを伴う施術あるいは症状によって、精巣の中の精子を作る細胞が死んでしまい、男性不妊の原因となる可能性があります。

生活習慣や生活環境にあらわれる特徴

以下の生活習慣がある場合も、男性不妊を疑いましょう。

■男性不妊になりやすい生活習慣・環境
  • 精子形成や射精を障害する薬剤を服用している
    ※常用薬の影響に関しては医師にご確認ください
  • 喫煙者である
  • 過度にアルコールを摂取している
  • 火を扱う調理の仕事をしている
  • サウナや長時間の入浴を好む
  • 膝上でパソコンを使用する癖がある
  • 長時間自動車、自転車、バイクの運転をしている
  • タイトな下着やズボンを履いている(睾丸を圧迫している)
  • BMIが25以上(肥満)または18.5未満(やせ過ぎ)

前述の通り精巣は熱に弱く、温度が上昇すると精子をつくる造精機能が低下してしまいます。

精巣を長時間高温の環境に置くなど、男性不妊のリスクにつながる行為はできるだけ避けましょう。

※睾丸が垂れ下がっているのは
風通しよく、熱がこもらないようにするためです。

男性不妊の原因とメカニズム

男性不妊の原因には、以下の障害が密接にかかわっています。

男性不妊の要因となる障害

以下、順に解説していきます。

造精機能障害

造性機能障害とは、睾丸の機能異常により精子を上手く生成できず、精子濃度や運動率が弱まった状態を指します。

男性不妊の約80%が造精機能障害と言われています。

特徴としては

  • 精子がいない又は数が少ない
  • 精子の運動性が悪い
  • 精子が奇形である

などが挙げられます。

以下は、WHOが定めた造精機能の基準値です。
※画像はタップで拡大できます

 平均的な造精機能の数値

(2021年 WHO発表のマニュアルによる 造精機能は専門の医療機関で検査が可能です)

上記の数値未満の場合、造精機能障害と診断される可能性があります

射精した精液に精子が少ない場合(1ml中1,600万未満の場合)は「乏精子症」とも呼ばれ、多くは原因不明です。

この「乏精子症」は「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」の原因にもなります。

「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」は、陰嚢内の静脈が異常に拡張し血液が逆流することで、精巣のまわりに静脈のコブができてしまう状態です。

この症状は男性不妊症の40%前後に認められています。

精索静脈瘤によって精巣の温度が上昇すると精子生成が困難となり、結果として不妊を招きます。

また、精索静脈瘤は「非閉塞性無精子症(NOA)」の原因でもあります。

「非閉塞性無精子症(NOA)」も造精機能障害の一つであり、精子の生成が著しく少ない、または全くない状態のことです。

非閉塞性無精子症

男性不妊は複数の症状に起因するため、個人では特定できません。必ず専門医の診断を受けてください。

精路通過障害

精路通過障害とは睾丸では精子がつくられているにも関わらず、精管(精子の通り道)に異常があり精子が出せない症状です。

精子がない場合は「無精子症」と診断されます。男性不妊症の精液検査では、10人に1人くらいで精液に精子が認められず、無精子症と診断されている事実があります。

精路通過障害の主な症状は「閉塞性無精子症」です。

閉鎖性無精子症

精子が通る道が完全にふさがっている状態の事は「精管閉鎖」と呼ばれます。

射精管や精巣上体が閉塞し、精子が精液へ放出されていない状態です。

精路通過障害は先天的な要因の他、鼠径部ヘルニア、精管結紮術(パイプカット)の手術などに起因します。

性機能障害

性機能障害は、

  • 勃起障害(ED)
  • 射精障害
の2種類に分けられます。

勃起障害は「勃起が起こらない」または「維持できない」症状で、心因性のケースが多いです。

また、心因性EDは男性不妊にも影響します。

性行為に対するトラウマやストレスにより性行為の頻度が減り、その結果、妊娠のチャンスを逃してしまう可能性が高いです。

また、不妊治療の「タイミング法(最も妊娠しやすいタイミングを推測し、その周辺の時期に性交渉を行う方法)」で勃起しない場合も心因性EDに分類されます。

心因性の勃起障害に対しては、ED治療薬を試してみることや、成功体験を積むことが改善につながります。

医師と相談し、適切な治療を行ってください。

一方、射精障害の主な症状は「逆流性射精」です。

逆流性射精になった場合、通常は射精時に精液は尿道側を通り陰茎の先端部から放出されますが、内尿道口が開いたままになってしまうため、尿道ではなく膀胱側に精液が流れてしまいます。

結果、射精感はあっても陰茎からの精液の量が少なくなったり、全く出なかったりするという症状があらわれます。

逆行性射精の大半は原因不明とされますが、糖尿病や前立腺の手術も逆行性射精に起因すると言われています。

男性不妊の治療方法

男性不妊の治療方法は、不妊に至った原因によって異なります。

詳細は以下です。

次の章で順に解説していきます。

※当院は、ED治療薬を処方するクリニックです。精液検査などの男性不妊検査や男性不妊手術は行っておりません。

生活習慣に問題がある場合

運動(筋トレ)や食事、ストレス管理など、生活習慣を改めることで男性不妊の改善が可能です。

特に適度な運動は、精液所見の改善に良いということが研究によって示されています。

さらに精子の運動率だけでなく、精子DNA断片率の改善効果もあることが明らかになりました。

精⼦がDNAの損傷を受けている割合が⾼いと、受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が⾼くなったりすることが報告されています。

軽い運動から無理のない範囲で取り組んでいくことが、不妊改善への近道です。

また、禁煙も不妊の改善に有効です。

喫煙は精液に含まれる精子密度を13%~17%減少させることが研究でも明らかになっています。

できることから少しずつ、習慣を変えていきましょう。

造精機能に問題がある場合

原因不明の場合は、投薬治療として漢方薬やビタミン剤、抗酸化剤が用いられます。

造精機能の原因が精索静脈瘤と認められる場合には、根本的治療として手術を行う方法が一般的です。

また、パイプカットをされていた場合には再建術を行うケースもあります。

精索静脈瘤が認められない場合には、対症療法として人工授精・体外受精や顕微授精、精巣内精子採取術が行われます。

男性の精子数や運動率、精液の状態によって治療方法が異なるため詳細は医師に相談することが望ましいです。

精路通過に問題がある場合

精路通過障害の場合「精路再建術」といって、精管をつなぎ合わせる手術を行います。

鼡径(そけい)ヘルニア術後の場合に有効です。

ただし、精路が閉塞していた期間が長いと治療が難しいとされています。

また、精路通過障害を治療する場合は女性側の年齢や不妊原因の有無もふまえる必要があります。

加えて治療方法も原因により異なるため、手術の判断は医師に委ねましょう。

性機能に問題がある場合

精機能に問題がある場合は、以下の手段が有効です。

  • 人工授精
    性機能障害の治療を行っても無効な場合、あるいは希望しない場合や高齢の夫婦で妊娠を急がなければならない場合、人工授精を行うケースがある。
  • ED治療薬の服用
    勃起不全(ED)の治療薬として用いられ、EDが不妊原因の一つである場合に用いる。バイアグラやシアリスなどのED治療薬服用が一般的。
ED治療薬は、不妊治療で用いる場合保険適用となる可能性があります。ただし厚生労働省が定める諸条件があるため、適用の可否は入念にご確認ください。

ED治療薬の種類

当院で取扱いのあるED治療薬は以下の通りです。

  バイアグラ
バイアグラ
レビトラ(※ジェネリックのみの取扱い)
レビトラ(ジェネリック)
シアリス
シアリス
ステンドラ
ステンドラ
ザイデナ
ザイデナ
価格
(後発薬含む)
270円~1,600円 900円~1,200円 700円~1,600円 1,300円 1,000円
主な特長 一番ポピュラーなED治療薬 即効性と強い勃起力がある 持続時間が他の治療薬より長い バイアグラの効果はそのままに、より効果が持続 アジア人向けに作られた新しいED治療薬
勃起の強さ 強い 最も強い マイルド 強い やや強い
副作用 出やすい 出やすい 出にくい 出にくい 出にくい
効果持続時間 3~5時間 5~8時間 30~36時間 3~6時間 11~13時間
効果開始時間 30分~1時間 15~30分 1~4時間 15~30分 30分~1時間
食事の影響 受けやすい やや受けにくい 受けにくい 受けにくい 受けにくい
有効成分 シルデナフィルクエン酸塩 バルデナフィル塩酸塩水和物 タダラフィル アバナフィル ウデナフィル

※スクロールしてご覧ください
※感じ方には個人差があります

ED治療薬によって効果の持続時間や副作用の強さなど異なります。

自分に適したED治療薬を選択するためには、自己判断せず必ず医師の診察を受けましょう。

男性不妊になりやすい人のまとめ

ここまで、男性不妊になりやすい人の特徴を解説しました。

最後に記事の内容をまとめます。

  • 男性不妊は、見た目や病歴、生活習慣に特徴があらわれる
  • 男性不妊は生活習慣の問題や造精機能の問題、精路の問題、性機能の問題などさまざまの要因から成る
  • 男性不妊の治療や対処方法としては、生活習慣の改善や手術、人工授精、ED治療薬の服用などが挙げられる
  • 自分に適した治療法を知るためには、医師の診断が必要

男性不妊は、複数の要因が複雑に絡んでいるケースが多いです。

男性不妊の兆候がある方は、一度専門の医師に相談することを推奨します。

フィットクリニックでは、性機能障害に有効なED治療薬を取り扱っております。

ドクター
お悩みの方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

男性不妊の原因は何ですか?
男性不妊は、生活習慣の問題(喫煙、睡眠不足、肥満など)や精子濃度・運動率の低下、EDなどの性機能障害に起因しています。睾丸を圧迫するような下着や既往歴・手術歴、常用薬が関連している場合もあり、男性不妊の原因は人によってさまざまです。個人で原因を突き止めることは難しいため、心配な方は医師にご相談ください。
男性不妊になりやすい人の特徴は何ですか?
男性不妊になりやすい人の特徴は、以下の3つにあらわれます。

  • 見た目(睾丸の状態)
  • 手術歴や病歴
  • 生活習慣や生活環境

睾丸が人より柔らかかったり、鼠径ヘルニアの手術経験があったりすると男性不妊になりやすくなります。また、喫煙者や肥満あるいは痩せすぎの方も男性不妊になる傾向が高いです。さらに、長時間の入浴やサウナを好む方やタイト下着をつけている方も、男性不妊のリスクが高まります。睾丸は熱に弱く、温度が上昇すると造精機能が低下するためです。男性不妊について自覚症状がある場合は、一度専門医にご相談ください。
男性不妊を治す方法はありますか?
男性不妊を治す方法は、不妊の原因により異なります。生活習慣に問題がある場合は食生活や睡眠の質の改善、禁煙などが有効です。造精機能や精路通過に問題がある場合は手術や人工授精、精巣内精子採取術で不妊治療を行います。性機能に問題がある場合は、人工授精かED治療薬での治療が一般的です。治療方法は人によって異なりますので、必ず診察・検査を受けて医師の判断を仰ぎましょう。
EDは男性不妊の原因になりますか?
はい、ED(勃起不全)は男性不妊の原因となります。性機能の問題による男性不妊には「心因性ED」という緊張や不安、ストレスからなるEDが密接にかかわっています。この心因性EDの治療に有効なのがED治療薬です。ED治療薬には、不妊治療である「タイミング法」でのプレッシャーや、その他性行為によるトラウマや不安からくる勃起不全を改善する効果があります。妊活中には、パートナーとのマンネリ化やセックスレス、子作りへのストレスもEDの原因になる場合があります。