糖尿病とED、この2つの症状は一見するとなんの関係もないように思えます。
しかし糖尿病はEDのハイリスク群とされ、勃起できない、あるいは維持できないといったEDの症状は糖尿病患者の多くに見られます。
なぜ糖尿病になるとEDになりやすいのか、その理由や改善に必要な方法についても詳しく解説していきます。
なぜ糖尿病になるとEDになりやすいのか?
糖尿病になるとED(勃起不全)になりやすいとされるのは、「血管」と「神経」にダメージとなるためです。
糖尿病により、血糖をコントロールできないと血管と神経に損傷が起こり、ペニスへの血流を妨げ、性的興奮や刺激の伝達がしづらくなります。
勃起には必須条件があり、「脳」「神経」「血管」「海綿体(ペニス)」、これら4つが正常に機能することで初めて勃起できます。
それだけに神経あるいは血管を損傷させる糖尿病がEDになりやすいというのは、なんとなくでもイメージしやすいはずです。
血管や神経のダメージがどうしてEDへとつながっていくのか、ここからもう少し詳しく見ていきましょう。
動脈硬化になりやすい
糖尿病が危険視される症状としてあげられるのが、全身の血管に起こる動脈硬化です。
動脈硬化は血管が硬くなり弾力が失われ、さらに狭窄(狭くなる)するので、血流が悪くなることで十分な血液を送り届けることができなくなります。
さらに、この症状は細い血管から弾力が失われるのが特徴です。
陰茎動脈 | 直径約1〜2mm |
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冠動脈(心臓の血管) | 直径約3〜4mm | 内頸動脈(脳へとつながる血管) | 直径約5〜7mm |
ペニスに血液を送り込むための陰茎動脈は、他の血管にくらべても細いため、動脈硬化の影響を受けやすいとされています。
そのため勃起しようにもペニス内が血液で十分に満たされず、勃起できない、あるいは維持できないといったEDの症状が現れます。
EDは動脈硬化のサイン
このように、EDの原因が動脈硬化の場合があるため、ある意味EDの症状が現れるのは、動脈硬化のサインとも言えます。
動脈硬化が進むのは糖尿病以外にも、以下が原因とされています。
- 喫煙
- 肥満
- 糖尿病以外の生活習慣病
- 心血管系の病気 など
このように日頃の不摂生はもちろん、隠れた病気に心当たりがあり、EDの症状がある場合は動脈硬化を疑いましょう。
また動脈硬化を自覚しやすいのが、朝勃ちの頻度です。
朝勃ちは寝ている間に4〜5回ほど繰り返しており、勃起機能を維持するためのメンテナンスをしています。
動脈硬化による血管へのダメージで朝勃ちの頻度も低下するため、男性の健康バロメーターの1つとして毎朝チェックしてみましょう。
神経障害を起こす
糖尿病で多いとされる合併症の1つが神経障害です。主に 以下の3つの末梢神経の代謝に異常が起きます。
感覚神経 | 物に触れて感じる神経 |
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運動神経 | 手足を動かす | 自律神経 | 身体の機能を調整する神経 |
手足のしびれや痛み、こむら返りが増えるなどの症状は、糖尿病による神経障害が原因です。
その中でも自律神経にダメージが及ぶと、広範囲な症状の1つとしてED(勃起不全)を起こします。
さらに糖尿病による神経障害が進行すると、神経に傷がつき性的な刺激や興奮が伝わらなくなってしまう、「完全ED」と呼ばれる重症例に発展する場合もあります。
完全EDになってしまうと、ED治療薬でも効果が出にくいこともあります。
そのため、神経が傷つく前に血糖をコントロールする治療が望まれます。
自律神経の症状を見逃さない
自律神経は文字通り、本人の意識から独立して身体をコントロールする神経です。
そのため本人が自律神経の症状を糖尿病の合併症と気づかない場合が多く、勃起がうまくいかないのは「年のせい」と見過ごしてしまいます。
自律神経に障害があると、主に以下のような症状が現れます。
- 下痢
- 便秘
- 胃もたれ
- 発汗異常 など
合わせてEDなどの不調が続くと感じる時は、自律神経のトラブルを疑ってみましょう。
また、自律神経の障害は前触れなく急な低血糖を起こすことがあります。
さらに低血糖が進行すると、昏睡やけいれんなど命に関わるため、注意が必要です。
このように、神経障害は非常に危険な糖尿病の合併であることは覚えておきましょう。
糖尿病性EDの特徴とは?
糖尿病性EDにはいくつかの特徴があり、糖尿病を患っていない男性に比べるとそのリスクは大きく異なります。
満足に勃起できないことで性行為に苦労するのはもちろん、若くして発症してしまうと将来的に子作りにも影響が出る場合があります。
糖尿病はEDのハイリスク群とされているだけに、ここからはデータを用いながらそのリスクについて見ていきましょう。
EDの発症率が高い
これは米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の調査からわかったことで、糖尿病ではない男性にくらべてEDのリスクはぐっと高まります。
他にも、糖尿病の男性は正常な方に比べ10〜15年も早くEDを発症する可能性があると指摘しています。
以下は一般的な糖尿病患者のEDの割合を示したものです。
糖尿病患者のEDの割合 | 30代:30% 40代:50%以上 |
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少なくとも3人に1人以上がEDを患っていることになります。
こうしたデータからも糖尿病とEDは深い関係があることがわかります。
そのため、EDが糖尿病の早期発見につながることもあります。
混合性EDが多い
混合性EDとは、器質性ED(からだ)・心因性ED(こころ)・薬剤性ED(くすり)の3つの原因がさまざま組み合わさって起こるEDです。
糖尿病性EDの場合、以下の組み合わせが多く見られます。
糖尿病性EDは、からだとこころの両方に原因を抱えていることが多く、加齢により起こる傾向にあります。
特に心因性EDについては、表面上に出てこないため、原因を突き止めるのに時間を要することもあります。
また混合性EDは勃起が満足にできないことが、更なるストレスやプレッシャーとなるといった悪循環に陥るケースも珍しくありません。
糖尿病性EDになりやすい人の特徴とは?
糖尿病性EDになりやすい人の特徴として以下があげられます。
- 高齢
- 血糖値の管理をしてない
- 長く糖尿病を患っている
- 糖尿病の合併症や動脈硬化がある など
その他、EDのリスクは日常生活の中にも潜んでいます。
食生活、喫煙、過剰な飲酒といった、他の要素も糖尿病性EDのリスクを高めるため、治療の一環として生活習慣も見直すことが望まれます。
ED以外の合併症「射精障害」
糖尿病はED以外にも合併症があり、その1つに「射精障害」があります。
射精障害はEDも含めた、性機能障害の1つです。
一般的な射精障害には、「膣内射精障害(遅漏)」、「神経性射精障害」、「逆行性射精障害」、「早漏」の4つがあり、糖尿病で見られる射精障害は主に「逆行性射精障害」です。
糖尿病による射精障害 | 症状 |
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逆行性射精障害 | 膀胱に精子が逆流し、精子が出てこないまたは減少する症状 |
これは、糖尿病により末梢神経に障害が起こり、通常の射精時に起こる陰嚢や膀胱頸部の収縮反応が無くなることで現れる症状です。
射精障害はEDと並び、糖尿病でお悩みの方に多い症状です。
こちらの症状は専門医に相談し、適切な治療を行うことで改善が期待できます。
糖尿病性EDの改善
糖尿病性EDは、今の医学の力では残念ながら完治させることはできません。
これはEDという症状が現れた時点で、元の状態に戻すことができないためです。
ただ完治こそ難しいものの、治療することで性行為時にEDの症状を改善することは可能です。
また糖尿病やEDの進行を予防するためにも、血糖をコントロールする必要もあります。 つまり、どう糖尿病性EDと付き合っていくのかがとても大切なのです。
糖尿病とEDに必要な治療は異なってくるため、ここからは改善に必要ないくつかの治療方法について見ていきましょう。
ED治療薬を使用する
ED治療薬は、主に「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3種類が処方されています。
いずれも血管を拡張させる作用をもった同じお薬になり、性行為の1時間ほど前の服用によって勃起をサポートしてくれます。
ED治療薬は糖尿病性EDに対しても有効とされていますが、
- 神経障害が進行している人
- 血管障害が進行している人
- 血糖がコントロールできていない人
こうした人には効きにくいとされており、糖尿病性EDに悩む人すべてに効くわけではありません。
特に不安や緊張があると効果が出にくいケースもあるだけに、1種類を3〜4回以上は試し、ご自身にあったED治療薬を見つけてみてください。
当院では、糖尿病性EDなどさまざまなタイプのEDに対応するED治療薬の処方を行っております。
スマホがあれば簡単にご自宅からでもできる、オンライン処方にも対応しています。
EDの改善をお求めの方は、是非お気軽にご相談ください。
血糖のコントロールをする
糖尿病の合併症をおこさない、または悪化させないためには、血糖をコントロールする必要があります。
その際に1つの目安となってくるのが、血糖コントロール目標です。
目標 | 血糖値の正常化を目指す | 合併症予防 | 治療強化が困難 |
---|---|---|---|
HbA1c(%) | 6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 |
一般的には、HbA1cを7%未満に保つのが良いとされています。
ただ身体の状態に応じて必要な治療内容は変わってくるため、
- 年齢
- 罹患期間
- 臓器障害
- 低血糖の危険性
- サポート体制
こうしたことも考慮にいれて、主治医とそれぞれの目標を設定していきます。
他の合併症の治療を行う
糖尿病の合併症を大まかにまとめると以下のようになります。
⇨ 網膜症・腎症・神経障害のことを指し、細い血管にダメージを受けると起こります。
⇨ 太い血管に障害が起こることで、狭心症・脳卒中・下肢の動脈硬化などを起こしやすくなります。
⇨ 高血糖が著しいと身体の抵抗力が弱まり、感染症にかかりやすくなります。
いずれも命に関わるため、医師の指示に従い身体の状態に合わせた治療を受けましょう。
また厚生労働省の発表によれば、糖尿病の約30%にうつ症状があるとの報告があります。
これは厳しい自己管理や長引く治療がストレスになってしまうことで、うつ病を併発すると考えられています。
合併症のリスクも高まり、さまざまな関心が低下することで糖尿病の治療効果に影響を及ぼす可能性もあります。
うつ病になると死亡率が1.6倍上がるだけに、糖尿病治療ではメンタルケアもとても重要になってきます。
まとめ
- 糖尿病によって"血管"と"神経"にダメージが及ぶとEDになりやすい
- 糖尿病でない男性にくらべ、糖尿病男性がEDになるリスクは2〜3倍にまで高まる
- 糖尿病性EDは完治しない
- 必要に応じた治療を受け、それ以上症状が進まないよう予防する
また糖尿病は、脂質異常症や高血圧といった他の生活習慣病を併発する方が少なくありません。
高血圧の状態によっては、ED治療薬が服用できないケースもあるので、自己判断ではなく必ず医師と相談しながら治療方法を検討してください。
フィットクリニックでは、糖尿病性EDの方からのご相談もお受けいたしております。
診察により、それぞれの患者様に合わせたED治療薬をご提案しております。
スマホがあれば簡単にご自宅で出来る、オンライン処方にも対応しています。 お悩みの方は、是非お気軽にご相談ください。