「酒さ(しゅさ)」は、顔の赤みや炎症が目立ちやすくなる皮膚のトラブルです。
特にほおや鼻周りに症状が出やすく、その症状から「赤ら顔」と呼ばれることもあります。
慢性的に続くため、見た目の変化に悩む方も少なくありません。
また、酒さ様皮膚炎と呼ばれる症状に似た疾患もあり、区別が難しいこともあります。
このページでは、酒さの原因や症状、治し方をわかりやすくまとめました。
さらに、日常生活でできるケア方法や酒さ様皮膚炎との違いについても解説しています。
自分の肌の状態を知り、適切なケアをはじめるきっかけにしてみてください。
酒さ(赤ら顔)とは
酒さとは、頬や鼻、額など顔全体に赤みや炎症が現れる慢性的な皮膚疾患です。
赤みが目立つだけでなく、小さな膿疱や毛細血管の拡張が見られることもあります。
また、敏感肌のように刺激に弱く、ヒリヒリ感やかゆみなどの不快感を伴うことも少なくありません。
顔に症状が集中するため、見た目にも影響を与えやすく、日常生活や心理面での負担を感じる方も多い病気です。
酒さ(赤ら顔)の原因
酒さの原因は、未だに明らかになっていません。
ただし、外部環境、内部環境、そして肌環境が複雑に絡み合うことで、酒さの発症や悪化に繋がると考えられています。
■ 外部環境
- 紫外線
- 気温の変化
- 風による刺激
- 熱いお風呂
■ 内部環境
- ストレス
- 食生活(香辛料の効いた食べ物、アルコール、熱い飲み物など)
- 運動による体温上昇
■ 肌環境
ニキビダニ/顔ダニ(デモックス)の過剰増殖
※ニキビダニは常在菌のため、過剰に増殖しない限りは無害です。
■ その他
肌質に合わない日焼け止めや化粧品
こうした普段の生活の中に酒さの原因があるとされ、何気ない日常的な行動や環境の変化が、発症や悪化のきっかけになる可能性があります。
酒さ(赤ら顔)の症状
酒さ(赤ら顔)は、その名のとおり、肌に赤みが現れるのがもっとも特徴的な症状です。
特に鼻や頬、額など、顔の目立つ部分に赤みが集中しやすい傾向があります。
また赤み以外にも、以下のようなニキビと似た症状が見られることがあります。
- 丘疹(きゅうしん) 毛穴周りが小さく盛り上がる
- 膿疱(のうほう) 膿を伴うブツブツができる
- 毛細血管の広がり 肌表面に血管が透けて見える
- 敏感肌のような症状 ヒリヒリ感、かゆみ、ほてりなどが起こる
酒さを発症しやすいのは30~50歳代で、特に女性に多い傾向があります。
顔だけに症状が集中するため、見た目の変化が心理的な負担となり、QOL(生活の質)に影響を及ぼしてしまうこともあります。
酒さ(赤ら顔)の分類4タイプ
酒さは、症状の特徴によって以下の4タイプに分類されます。
1型.紅斑毛細血管拡張型酒さ
持続的な顔の赤みと毛細血管の拡張が見られるタイプ。ほてりやヒリヒリ感を伴うことがあります。
2型.丘疹膿疱型酒さ
赤みのある肌に、ニキビに似た丘疹や膿疱が現れるタイプ。炎症が強くなる場合もあります。
3型.瘤腫型酒さ(鼻瘤)
特に鼻が肥厚して腫れ上がり、表面がでこぼこするタイプ。進行すると顎や耳などにも症状が広がることがあります。
4型.眼型酒さ
目の周りに症状が現れるタイプ。乾燥感、異物感、充血やまぶたの炎症が特徴です。
これらのタイプが複数当てはまる方もいれば、時間の経過とともに別のタイプが変化していくこともあります。
酒さ(赤ら顔)の症状の進行
酒さは、以下のようなステージを経て進行していくことがあります。
ステージ1
初期症状として顔が繰り返し赤くなり、ほてりを感じることがあります。
ステージ2
皮膚表面に毛細血管の拡張が見られ、持続的な赤みが現れます。
ステージ3
赤みやほてりに加えて、赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなブツブツが発生します。
ステージ4
鼻に赤みと肥大が見られ、鼻瘤(びりゅう)と呼ばれる症状が形成されることがあります。
酒さは進行度合いによって治療法が異なります。
酒さと酒さ様皮膚炎の違いと見分け方は?
酒さと酒さ様皮膚炎は、いずれも似たような皮膚症状が現れるため混同されがちです。
しかし、これらは原因や治療法が異なる部分もあります。
以下に酒さと酒さ様皮膚炎の違いを表にまとめました。
酒さ(赤ら顔) | 酒さ様皮膚炎 | |
---|---|---|
原因 | 明確な原因は不明。内部環境や外部環境、肌環境が影響すると考えられている。 | 主にステロイド外用薬(タクロリムス軟膏やデルゴチニブ軟膏など)の長期使用による副作用。 |
主な 症状 |
赤み、ヒリヒリ感、丘疹、膿疱など | 赤み、ヒリヒリ感、丘疹、膿疱など |
部位 | 顔の中心部(鼻、頬、額) | ステロイド使用部位(口周り、顎など) |
治療法 | 抗生物質の内服薬や外用薬、レーザーなど。 | ステロイドの使用中止、抗生物質の内服薬や外用薬。 |
酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用薬を長期間使用したことが主な原因とされています。一方、酒さ(赤ら顔)はステロイドの使用歴がなくても発症するのが特徴です。
この違いが、両者を見分ける際の重要なポイントとなります。
また、ステロイドの使用歴がある場合、酒さ様皮膚炎の可能性が高いものの、急に使用を中止すると症状が悪化するリスクが高まります。
自己判断はせず、必ず専門医に相談して適切な診断のもとで治療を受けることが推奨されます。
口周りにできると口囲皮膚炎になる
口囲皮膚炎は、口の周りや顎、鼻の下などに小さな赤いブツブツや膿疱が現れる皮膚疾患です。
これらの症状はヒリヒリ感やかゆみといった不快感を伴い、見た目にも影響を及ぼすことがあります。
主な原因として、ステロイド外用薬の長期使用があげられるほか、合わない化粧品の使用や紫外線の影響も発症のきっかけとなることがあります。
口囲皮膚炎は、特に妊娠可能な10代から60代の女性に多くみられる疾患です。
症状が現れた場合は、早めに皮膚科専門医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
酒さ(赤ら顔)の治療方法
酒さ(赤ら顔)は、ドラッグストアで販売されている市販薬では改善が難しいです。
そのため、医療機関で診察を受けて薬やサプリメント・漢方をもらうか、施術治療をすることが推奨されます。
酒さは単なる肌トラブルではなく、炎症や血管の異常が関与する「慢性的な皮膚疾患」であり、適切な治療を行わないと悪化してしまう可能性もあるからです。
以下に、主な治療や治療薬を表にまとめているのでご参考ください。
分類 | 有効成分/施術 | 特徴 |
---|---|---|
外用薬 | メトロニダゾール | 抗菌作用および抗炎症作用を持ち、紅斑や丘疹を改善 |
イベルメクチンクリーム | ニキビダニ(デモデックス)を抑制し、炎症を軽減する効果がある | |
アゼライン酸 | 角質異常や炎症を抑える | |
内服薬 | イソトレチノイン |
皮脂の分泌を抑え、炎症を軽減する ※特に、ニキビに似た「丘疹膿疱型酒さ」に有効とされる |
テトラサイクリン系抗生物質 (ミノサイクリン / ビブラマイシン) |
抗菌作用と抗炎症作用を兼ね備えている | |
機器治療 | レーザー (パルス色素 / YAG) |
毛細血管の拡張を抑えて赤みを軽減する |
漢方薬やサプリ (治療の補助) |
桂枝茯苓丸料加薏苡仁 (いしぶくりょうがんりょうかよくいにん) |
血行を改善し炎症を抑える作用により慢性的な炎症体質(ほてり)の改善 |
Lypo-C Vitamin C |
高濃度ビタミンCサプリメントで抗酸化作用を発揮し、皮膚の健康をサポート
血管を構成するコラーゲンやエラスチンの産生量を増加させ、毛細血管を強くするため酒さにも効果的 |
|
Lypo-C Vitamin C+D |
ビタミンCに加えてビタミンDを補い、皮膚免疫を強化
酒さの方に欠乏しがちな抗菌ペプチドであるカテリシジンを増加させる作用があるため、酒さにも間接的な効果が期待できる |
酒さは、タイプ(紅斑毛細血管拡張型、丘疹膿疱型など)によって適切な治療法が異なります。
また、各種治療に加えて、スキンケアや生活習慣の見直しも治療効果を高めるポイントです。
酒さ(赤ら顔)を悪化させないケア方法
酒さ(赤ら顔)は適切な治療だけでなく、日常生活でのケアが症状の悪化を防ぐために非常に重要です。
特に、普段の生活習慣や環境要因が酒さに影響を与えることが知られています。
ここでは、酒さを悪化させないための具体的なケア方法を、以下のポイントでまとめました。
これらのケアを日常に取り入れることで、症状をコントロールしやすくなります。
次で、それぞれのケア方法について詳しく解説します。
香辛料や乳製品、アルコールを避ける
酒さ(赤ら顔)の症状は、刺激の強い食べ物や飲み物によって悪化することがあります。
特に、辛い香辛料を使った料理は体温を上昇させ、ほてりや赤みを引き起こしやすいため注意が必要です。
アルコールも血管を拡張させる作用があり、赤みを増幅させる可能性があります。
他にも、乳製品が酒さに悪影響を及ぼす場合があるとされているので、牛乳やヨーグルトなどはお控えください。
これらの食品を避けることで、酒さの悪化を予防し、症状を落ち着かせる助けになります。食事内容に気を配りながら、肌の健康を意識した習慣を取り入れていきましょう。
気温の変化に気を付ける
急激な気温の変化や、極端な暑さ・寒さは酒さ(赤ら顔)の悪化を引き起こす要因のひとつです。
気温が低いと低温による血管の収縮と、その後の急激な拡張が繰り返されることで、顔の赤みが目立ちやすくなることがあります。
一方で、極端な暑さは体温の上昇を促し、ほてりや赤みをさらに強める場合があります。
こうした気温の変化による悪化を防ぐためには、以下のような工夫が役立ちます。
- 外出時には、マスクやスカーフで顔を保護する
- 急激な温度変化を避けるため、エアコンの温度設定に注意する
- 入浴時は熱すぎる湯を避け、ぬるま湯を選ぶ
こうした日常的な工夫を取り入れることで酒さの悪化を予防し、肌の健康を守ることにもつながります。
保湿を意識したスキンケアを心がける
乾燥は酒さ(赤ら顔)の症状を悪化させることがあるため、保湿を重視したスキンケアが重要です。
以下のポイントを意識したスキンケアアイテムを選びましょう。
-
アルコールフリーの保湿剤
刺激が少なく、敏感肌や酒さの方に適している -
セラミド配合のクリームやローション
肌のバリア機能を強化し、外部刺激から肌を守る -
ヒアルロン酸やグリセリン配合の保湿剤
高い保湿力を持ち、乾燥による悪化を防ぐ -
敏感肌用の低刺激スキンケア
「無香料」「無着色」「パラベンフリー」などの表記がある製品を選ぶ -
洗顔料(低刺激タイプ)
ゴシゴシ洗わず、泡で優しく洗えるタイプを選ぶことで乾燥を防ぐ
ご自身の肌に合った保湿ケアを見つけることが、肌の状態を安定させるための第一歩です。
紫外線を予防する
紫外線対策は、日常のスキンケアの中で欠かせません。
日焼け止めクリームは季節を問わず毎日使用しましょう。
敏感肌であれば、紫外線吸収剤を含まない低刺激の製品を使うことを推奨します。
また、外出時には帽子や日傘を活用して、肌に直接日光が当たらないように工夫することが大切です。
紫外線は一年を通して降り注ぐため、通年での対策が必要です。
特に春から夏にかけて紫外線量が増える時期には、こまめに日焼け止めを塗り直すなど、丁寧なケアを心がけましょう。
ストレスを溜めない
ストレスが酒さの症状に影響を与えることがあります。
忙しい日々の中でも、少し立ち止まる時間を意識的に作ることが大切です。
たとえば、以下のような方法が効果的です。
- 短時間でも趣味に没頭する
- 散歩やストレッチで気分をリフレッシュ
- 深呼吸や瞑想などのリラックス法を取り入れる
- 旅行などで環境を変えてみる
心身ともにリラックスすることが、酒さの症状を和らげる助けになります。
無理のない範囲で、ご自身にあったストレス解消法を見つけてみてください。
酒さは医療機関で症状をコントロールできる。悩まず相談しよう
酒さ(赤ら顔)は、適切な治療を受けることで症状をコントロールできます。
ただし、セルフケアだけでは改善が難しい場合もあるため、専門的な診断が重要です。
- 酒さ(赤ら顔)は慢性的な皮膚疾患
- 明確な原因は不明だが、外部環境、内部環境、そして肌環境が影響することがある
- 4タイプあり、進行するとタイプが変化することがある
- 治療法として内服薬や外用薬、レーザー治療、治療のサポートに漢方薬やサプリがあげられる
- スキンケアや生活習慣の見直しも治療効果を高める
酒さは放置すれば症状が進行し、治療にも時間がかかります。
早期に医療機関で診断を受け、適切な治療を始めることで、症状を和らげながら肌の健康を維持することが可能です。
肌の状態に悩んでいる場合は、ぜひ医師にご相談ください。
酒さ(赤ら顔)のよくある質問
-
- Q
酒さ(赤ら顔)は一生治らないのですか?
- A
酒さは慢性的な皮膚疾患であり、完全に治すことは難しいとされています。
ただし、適切な治療とケアを続けることで症状をコントロールし、目立たなくすることが可能です。
早期に医療機関を受診し、自分に合った治療法を見つけることが重要です。
- Q
-
- Q
酒さ(赤ら顔)を治す市販薬はありますか?
- A
市販薬のみで酒さを治すことは難しいです。
酒さには医療機関で処方される外用薬や内服薬が必要になる場合があります。
特に進行した症状には医師の診断を受け、適切な治療を受けることを推奨します。
- Q
-
- Q
酒さ(赤ら顔)はヨーグルトで悪化しますか?
- A
乳製品が酒さを悪化させる可能性があると言われていますが、全ての人に当てはまるわけではありません。
個人差があるため、ヨーグルトなどの乳製品で症状が悪化する場合は摂取をお控えください。
- Q
-
- Q
酒さ(赤ら顔)が治った人の特徴は?
- A
症状が改善した方は医療機関での治療に加えて、スキンケアや生活習慣の見直しを継続している場合が多いです。
特に、紫外線対策やストレス管理、適切な保湿ケアなどが症状緩和の助けになっているとされています。
- Q
その他よくある質問はこちらをご確認ください
特にステージ4まで進行すると治療に時間を要することが多いため、症状が軽度の段階で適切な診断を受け、早期に治療を始めることがポイントです。