低用量ピルは、数ある避妊方法の中でも、高い避妊率が認められています。
避妊方法の定番にはコンドームが思い浮かびますが、低用量ピルはコンドームよりもはるかに高い避妊効果が期待できるとされています。
そんな低用量ピルの避妊効果はいったいどれくらいなのでしょうか。また妊娠する確率はどれくらいあるのでしょうか。
本記事では、低用量ピルの避妊効果や妊娠リスクについて解説します。低用量ピルを服用する予定の方や内服中で具体的な避妊効果を知りたいという方は、ぜひご確認ください。
低用量ピル(OC)とは
低用量ピルとは、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を含んだ経口避妊薬です。
経口避妊薬は英語で「Oral Contraceptives」ということから、頭文字をとって「OC」とも呼ばれています。低用量ピルの効果や副作用は下記です。
低用量ピルの効果(副効果)・副作用
効果(副効果) |
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副作用 |
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低用量ピルに含まれる2種類の女性ホルモンが、高い避妊効果を発揮します。
最近では避妊以外にも、月経痛の緩和や月経周期の安定化、月経前症候群(PMS)の改善や子宮体癌などのがん予防にも役立てられているなど、あらゆる副効果も期待できます。
低用量ピルの副作用は、わずかに血栓症のリスクが上がる点です。また低用量ピルを飲み始めて体が慣れるまでの1~2ヶ月は、不正出血や頭痛などといったマイナートラブルが見受けられます。
体が低用量ピルに慣れると、これらの副作用は徐々に低下するといわれていますが、定期的に婦人科の検診を受けることを推奨します。
超低用量ピルとは
低用量ピルと似たお薬に、超低用量ピルがありますが、こちらは月経痛や子宮内膜症などの治療を目的とした「LEP」というお薬です。
主に卵胞ホルモン(エストロゲン)の含有量が、0.03mg以下のものを指します。
低用量ピルに比べると含まれているホルモンの量が少ないので、副作用が起こりにくいのが特徴です。
LEPの中には日本国内では避妊効果を確かめる実験が行われていないお薬もあるので、避妊目的で服用するのであれば、超低用量ピルよりも低用量ピルの方がより効果的だといえます。
低用量ピルによる避妊効果の仕組み
低用量ピルに含まれている女性ホルモンは、妊娠中に分泌されるホルモンと近く、服用することで脳が妊娠したと錯覚し、排卵を止めて避妊する仕組みです。
女性が生まれながらに持つ仕組みを薬で再現したものが、低用量ピルというわけです。
それぞれの役割について詳しく解説します。
排卵の抑制
低用量ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が含まれており、この2種類のホルモンが脳下垂体から卵巣へ排卵しないよう抑制する働きがあります。
一般的に排卵は、卵胞を発育させる「卵胞刺激ホルモン」と排卵を促す「黄体形成ホルモン」の2種類によって行われますが、低用量ピルの内服でホルモンバランスが変化し、排卵するのに必要なホルモンの分泌を止めることができます。
FSH(卵巣刺激ホルモン)
⇒卵巣に作用し、卵胞を発育させるホルモン |
LH(黄体形成ホルモン)
⇒発育した卵胞に作用し排卵を促すホルモン |
これらのホルモン分泌が止まれば受精卵は精子と出会わず、妊娠することを防げるという仕組みです。
受精卵の着床を阻止
低用量ピルを服用すれば、子宮内膜に受精卵が着床するのを防げます。
通常排卵日が近づくと、子宮内膜は受精卵が着床しやすいように分厚くなっていきます。
しかし低用量ピルを内服していれば、低用量ピルに含有されているホルモンが子宮内膜を薄くし、万が一受精卵になったとしても子宮内膜に着床できず、妊娠を避けることができるのです。
精子の侵入を阻止
通常
精子が子宮に入りやすい |
ピルの服用時
子宮に精子が入りにくい |
低用量ピルに含まれている黄体ホルモン(プロゲステロン)が、子宮の入口にある子宮頚管(けいかん)の粘液を変化させ、精子の侵入を阻止します。
膣と子宮を結ぶ管「子宮頚管」は排卵日が近づくと、粘液の粘度がさらっとし、精子が子宮や卵管に入りやすい状態へと変化します。
ただし低用量ピルを服用していれば排卵そのものが抑えられ、粘液の粘度は高いままです。つまり子宮に精子が入りにくい状態を維持でき、避妊することができます。
低用量ピルの避妊効果はどれくらい?
低用量ピルの避妊効果は、正しく服用すればおよそ99.7%といわれています。
飲み忘れやアクシデントがなければ、望まぬ妊娠を高い確率で回避できます。
そのほか避妊法の避妊効果は以下でご確認ください。
-
- 低用量ピル
- 0.3人
-
- 男性用コンドーム
- 2人
-
- 女性避妊手術
- 0.5人
-
- 男性避妊手術
- 0.6人
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- 外出し(膣外射精)
- 4人
現在最も頻繁に利用されている避妊法「コンドーム」の避妊率は、およそ98%です。
一見避妊率は低用量ピルとさほど変わらないと思うかもしれませんが、コンドームは途中で破れたり、外れたりといった人為的ミスが起こりやすく、そうすると妊娠リスクも大幅に上がります。
また低用量ピルは自分の意志で避妊ができること、避妊についてパートナーに依存しないことなど避妊効果以外のメリットが多いのも特徴です。
低用量ピルを服用していても妊娠するリスク
低用量ピルを服用していても妊娠する理由としてあげられるのが、次のようなケースです。
このように誤った服用を続けていると、いくら高い避妊率を誇る低用量ピルでも妊娠の可能性は十分にあります。
また、低用量ピルの休薬期間は排卵が終わった時期にあたるため、妊娠の可能性は極めて低いですがゼロではないことを覚えておきましょう。
ここからは、低用量ピル服用中の妊娠のリスクに対しての対処方法をもう少し詳しく見ていきましょう。
低用量ピルの飲み忘れ
低用量ピルは毎日決まった時間に1錠服用するのが理想的とされており、飲み忘れは避妊率の低下や不正出血を起こしやすくします。
もし飲み忘れてしまったときは、以下の方法を実践してください。
1錠飲み忘れたとき | 2錠飲み忘れたとき |
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気づいた時点で直ちに1錠服用+残りは通常通りの時間に服用 | 気づいた時点で直ちに2錠服用+翌日以降は通常通りの時間に服用 |
2錠飲み忘れると人によっては出血を起こす場合があるものの、服用を続けて問題ありません。連続服用7日目から避妊効果が戻るといわれています。
万が一を考え、服用再開から7日間については、以下のいずれかの方法で避妊すると安心です。
- コンドームなどの避妊具の併用
- 性行為は控える
低用量ピルの飲み始めのタイミング
低用量ピルの飲み始めのタイミングは、生理初日(1日目)もしくは生理開始から2~5日の間です。
生理初日に飲み始めるのが一般的ですが、出血が生理なのか、不正出血なのか区別がつかない場合には、服用開始のタイミングを生理5日目まで伸ばすことができます。
そのため生理が始まったら、しっかり出血があるのか確認することが大切です。
生理開始初日よりあと(2日目以降)に服用を始めた場合、飲み始めから7日間は避妊効果が得られません。
連続服用から8日経つまでは妊娠する可能性があるため、妊娠しないためにはコンドームなど別の避妊法の併用が望まれます。
低用量ピルの副作用による体調不良(嘔吐や下痢)
低用量ピルには、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類の女性ホルモンが含まれており、服用することでホルモンバランスが変化します。
それに伴い、嘔吐や下痢といった症状が出ることがあります。
もし嘔吐や下痢が内服後2時間以内に起こると、低用量ピルの成分が体内に吸収される前に排泄され、避妊効果が得られない可能性があるので下記の方法で対処してください。
内服から2時間以内 | 内服から2時間以上 |
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できる限り早く1錠を追加服用 | 翌日通常通り1錠服用 |
下痢の場合、軟便であれば問題ないとする意見もありますが、念のため上記の時間を目安に服用しましょう。
低用量ピルと相性の悪い医薬品・サプリメントの服用
低用量ピルには飲み合わせが悪いお薬があり、併用すると避妊効果を弱めてしまうものがあります。
またサプリメントなどの食品はほとんど問題ありませんが、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)を含んでいる食品に限っては同じように効果を弱めてしまいます。
薬品の種類 | 成分 |
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抗生物質 | ペニシリン アンピシリン セファロスポリン テトラサイクル系 クロラムヘニコール |
抗結核薬 | リファンピシン |
抗真菌薬 | グリセオフルビン |
抗原虫薬 | メトロニダゾール |
抗てんかん薬 | フェニトイン バルビツール酸塩 プリミドン エトスクシミド カルバマゼピン |
睡眠鎮痛薬 | ニトラゼパム トリアゾラム |
精神・神経用薬 | クロルジアゼポキシド |
鎮痛薬 | アセトアミノフェン アスピリン フェニルブタゾン |
相性の悪い医薬品は種類も多いので、お薬の追加が必要になった際には必ず、処方されるクリニックの医師に相談してください。
低用量ピルで避妊できたか不安な方はアフターピルで緊急避妊
低用量ピルを正しく服用できれば高い避妊率を誇りますが、
- 飲み忘れ
- 嘔吐や下痢による吸収阻害
こうしたケースでは、どうしても高い避妊率を維持することは難しくなります。
また人為的なミスを避ける絶対の方法もないため、不安がある時に限りアフターピルという選択肢もあります。
緊急避妊薬と呼ばれるもので、避妊具のトラブルがあった性行為後に服用するタイプのピルになります。
アフターピルに関しては性行為後からの時間経過によって避妊率が変わるため、早めに服用できるよう万が一の備えとして覚えておいてください。
フィットクリニックでのアフターピル処方
フィットクリニックでは、アフターピルの処方をしており、2つのタイプをご用意しています。
72時間タイプ
レボノルゲストレル |
120時間タイプ
エラ |
7,000円/2錠(海外製) | 8,000円/1錠 |
12,000円/1錠(日本製) |
低用量ピルの避妊効果についてよくある質問
低用量ピル服用中に妊娠しているか不安になったときは、性行為後に服用するタイプのアフターピルを検討しましょう。アフターピルは性行為から服用までの時間が短いほど高い避妊効果を発揮するお薬なので、早めに利用することで妊娠を防げる可能性が高いです。
まとめ
避妊法には、コンドームや避妊手術など様々な方法がありますが、中でも低用量ピルは高い避妊効果を誇ります。
しかしながら低用量ピルにも「絶対」はありません。
飲み忘れてしまった場合や体調不良で下痢・嘔吐をしてしまった場合などには、避妊効果に影響が出る可能性が少なからずあります。
リスクのある性行為後、妊娠したかも…と不安な場合は、性行為後に利用できる緊急避妊薬アフターピルの利用も検討してみてください。
アフターピルは、性行為後から服用まで早ければ早いほど高い避妊効果を発揮します。
タイムリミットがあるので、利用するか否かの検討はできるだけ早く行うのが賢明です。
アフターピルを服用しようか迷ったときは、医師に相談してみてください。