フラジール内服薬のトリコモナスへの効果や用法・副作用などについて解説

フラジール内服薬のトリコモナスへの効果や用法・副作用などについて解説

このページでは、トリコモナスの治療に用いるフラジール内服薬について詳しく解説しています。

効果や副作用をはじめ、飲み方、服用上の注意点についても触れているので、トリコモナスへの感染の疑いがある方は治療の参考にしてください。

フラジール内服薬とは?

フラジール内服薬の概要

フラジール内服薬 250㎎
性病名 トリコモナス
薬品名 フラジール内服薬 250㎎
処方数 20錠
治療期間 10日
処方価格 10,000円 ※検査キットとのセット処方で2,000円引き
用法・用量 1回250mgを1日2回、10日間経口投与する
副作用 末梢神経障害 、 四肢のしびれ 、 四肢異常感 、 中枢神経障害 、 脳症 、 痙攣 、 錯乱 、 幻覚 、 小脳失調 、 ふらつき

フラジール内服薬は、メトロニダゾールを有効成分とした「抗原虫薬」とも呼ばれるニトロイミダゾール系抗菌・抗原虫剤です。

細菌感染症に使用する他の抗菌薬とは異なり、寄生性のある原虫や嫌気性菌(粘膜に存在する常在菌など)の異常増殖を抑える治療にも用いられます。

古くからトリコモナスの治療の第一選択薬とされ、膣にピンポイントで作用する膣錠もありますが、性器以外への感染リスクも考慮し全身に作用する内服薬を選ぶのが一般的です。

なお、フラジールの内服薬や膣錠は、「医療用医薬品」に分類されています。

医師の診断に基づいた処方が必要となる処方箋薬のため、薬局やドラッグストアなどで市販薬としての購入はできません。

トリコモナスの疑わしい症状が出ている場合には、まずは医療機関にご相談ください。

細菌性膣症にも有効

フラジール内服薬は、2012年に「細菌性膣症」への適応が認められています。

細菌性膣症とは、膣内にいる常在菌のバランスが崩れて異常繁殖することで起こる膣感染症です。

トリコモナスや性器カンジダ症と似た症状が見られ、おりものの異常や膣の炎症、かゆみなどが起こります。

細菌性膣炎・膣トリコモナス・性器カンジダの特徴

  細菌性膣炎 膣トリコモナス 性器カンジダ症
原因 嫌気性菌・好気性菌 トリコモナス原虫 真菌(カビの一種)
おりものの性状 カッテージチーズ状・ヨーグルト状 膿性の泡沫状 灰色のさらさらした状態
アミン臭
(魚が腐ったような臭い)
あり 時にあり なし

また、細菌性膣症はトリコモナスと合併する場合もあるのでご注意ください。

フラジール内服薬のトリコモナスへの効果

フラジール内服薬は、トリコモナスの原因である原虫を駆除する効果があります

<フラジール内服薬の作用>

フラジール内服薬の服用

有効成分メトロニダゾールが原虫の中に取り込まれる

タンパク質の合成を阻害、DNAの切断が行われる

DNAの切断、タンパク質の合成を阻害

複製・細胞分裂が妨げられ、感染部位で繁殖した原虫が駆除される

一般的な抗菌薬のように細菌細胞を壊すのではなく、フラジール内服薬は原虫の遺伝子に働きかけることで殺菌作用を示します。

なお、人にもDNA(遺伝子情報)がありますが、殺菌作用の影響を受けるのは原虫に対してのみ(選択毒性)です。

トリコモナスの特徴

トリコモナスの特徴

出典:CDC Public Health Image Library

トリコモナスは、主に性行為などでトリコモナス原虫に感染して起こる性感染症です。
正式な病名は膣トリコモナス症です。

原虫が感染源のため、性行為の経験がない方や幼児が日常生活(下着、タオル、検診台、便器、浴槽など)で感染するケースもあります。

必ずしも性感染症とは言い切れない一面もあるため、感染時には他の方に感染させないよう十分ご注意ください。

またその他の特徴として、男女で症状の現れ方に差があります。

■男性

症状:尿道炎(排尿時のかゆみや痛み)

無症状なことが多く、症状があっても一過性です。

尿道に感染しているだけであれば、排尿時に原虫が洗い流されることもあります。

ただし、前立腺にまで感染が広がってしまうと、自己感染を繰り返す難治例に発展することもあるので症状を問わず治療が必要になります。

■女性

症状:膣炎、膀胱炎、おりものの変化(異臭など)、性交時の痛み

おおむね20〜50%は無症状となり、その3分の1は6ヶ月以内に症状が現れます。

また重症度もさまざまで、人によっては骨盤内(卵管、卵巣など)にまで感染が広がることもあります。

放置すると不妊の原因になることや、妊娠中は流産や早産を招く危険性もあるので早期発見・治療が大切です。

男女ともにフラジール内服薬により治療できるため、医師の指示に従い服用を行ってください。

フラジール内服薬の服用方法

フラジール内服薬の服用方法は、次のとおりです。

フラジールの服用方法

用量:1回250mg
服用回数:1日2回
服用日数:10日間

服用するタイミングですが、特に指定はありません。

食前・中・後を問わず服用できますが、飲み忘れ防止のため決まった時間の服用を心がけてください。

なお、服用日数は10日間を1クールとし、追加の治療が必要であれば1週間空けた後に同じ服用方法で治療を再開します。

10日間の服用で90〜95%の方が治りますが、治癒と診断するためには治療後2週間以上を空けてから再検査が必要です。

フラジール内服薬の治療期間

10日(服用期間)+2週間以上空けて再検査=約1ヶ月

トリコモナスの治療は約1ヶ月かかるので、その間は性行為やそれに類似するような行為はお控えください。

フラジール内服薬の副作用

フラジール内服薬の副作用として起こりやすいのが、次のような症状です。

フラジール内服薬の主な副作用
  • 舌苔
  • 食欲不振
  • 胃腸障害
  • 悪心・吐き気
  • 胃部不快感
  • 軟便
など

舌苔(ぜったい)とは、舌の表面に付着する白いコケ状のものです。

これは薬の影響で、口の中にいる常在菌のバランスが変わるのが原因で発生します。

また、その他の症状として胃腸への症状が見られますが、軽い症状で済む場合が多く、大きな心配はありません。

上記以外にも気になる症状がある際は、医療機関にご相談ください。

稀に現れる副作用

フラジール内服薬を服用中、重い副作用が生じることがあります。

特に服用期間が10日を超える場合や1500mg/日以上の高用量投与時には、以下の症状には十分にご注意ください。

フラジール内服薬の稀に現れる副作用
  • 末梢神経障害
    ⇨ 手足のしびれ、痛み、感覚のまひ など
  • 中枢神経障害
    ⇨ ふらつき、歩行障害、けいれん、意識障害、幻覚 など
  • 無菌性髄膜炎
    ⇨ 発熱、頭痛、吐き気・嘔吐 など
  • 中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群
    ⇨ 発熱、水ぶくれ、眼や口など粘膜のただれ、全身の発赤 など
  • 急性膵炎
    ⇨ 吐き気、急激な腹痛、背中が痛む など
  • 白血球減少、好中球減少
    ⇨ 発熱、のどの痛み、さむけ など
  • 肝機能障害
    ⇨ 倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる など
  • QT延長、心室頻拍(トルサード・ド・ポアントを含む)
    ⇨ めまい、動悸、気を失う、胸の不快感 など

また重い副作用ではないものの、フラジール内服薬の作用により「膣カンジダ症」が誘発される場合があります。

これは菌交代現象と呼ばれ、成分が膣内にいる常在菌のバランスが変化するために起こると考えられています。

使用上の注意点

フラジール内服薬を使用する上で、いくつか注意点があります。

適切な治療を行うためにも、以下のことには注意してください。

■医師に処方された分は飲み切る
飲み忘れや自己判断による服用中止は、症状のぶり返しや耐性菌を発生させる原因になります。
薬に耐性がついた菌が増えると十分な治療効果が得られず、治療を難しくする恐れがあります。
医師に処方された薬は必ず飲み切ってください。

■特定の持病を抱えている方
血液疾患や腎・肝臓障害、脳腫瘍などの持病がある場合、有効成分の吸収量が低下する、副作用が出やすくなるなど、安全な治療ができないことがあります。
持病がある方は、診察の際に医師に申告するようにしてください。

■アレルギーのある方
これまでにフラジールを服用して過敏症(アレルギーの症状)が出たことがある方は服用できません。

■脳・脊髄に器質的疾患のある方
服用すると中枢神経症状が出る場合があります。

妊娠中の内服薬の使用は禁止

妊娠中(3ヶ月以内)または妊娠の可能性がある女性は、フラジール内服薬の使用が禁止されています。

成分が胎盤を通して胎児に移行するため、血液中に成分がほとんど移行しないことが確認されている膣錠により治療を行います。

ただ、最新の報告によると、以下の妊娠時期であれば内服薬の安全性が確立されています。

第2三半期:妊娠14週0日〜27週6日

第3三半期:妊娠28週0日以降

そのため、妊娠3ヶ月以降では「治療するメリットがリスクを上回る」と医師が判断した場合にのみ内服薬による治療を行うこともあります。

妊娠中は、膣の自浄作用の低下により、よりトリコモナスに感染しやすくなるのでご注意ください。

併用禁忌・併用注意

フラジール内服薬といっしょに服用してはいけない併用禁忌薬はありませんが、飲み合わせに注意が必要な併用注意はあります。

<併用によって効果が増強あるいは減弱する薬>
  • ワルファリン
  • ブスルファン
  • 5-フルオロウラシル
  • シクロスポリン
  • フェノバルビタール
<併用による症状が報告されている薬>
  • アルコール
  • リトナビル含有製剤(内用液)
  • ジスルフィラム
  • リチウム

併用禁忌や併用注意があると、安定した治療が行えなくなる場合や、薬によっては体調を崩す原因にもなります。

服用中だけでなく、フラジール内服薬を服用中に薬を追加する場合にも医師への申告が必要です。

治療中のアルコールは禁止

フラジールの服用中および服用後3日間は、アルコールの摂取は禁止です。

フラジールの有効成分メトロニダゾールは、アルコールを分解する酵素(アルデヒド脱水素酵素)の働きを阻害します。

つまり、治療期間中にアルコールを摂取すると、悪酔いの成分「アセトアルデヒド」の分解が遅れ、血液中に溜まることで以下の症状が現れます。

フラジール服用中のアルコール摂取による症状
  • 悪心
  • 頭痛
  • 腹部の仙痛(キリキリとした痛み)
  • 嘔吐
  • 動悸
  • 潮紅

フラジールの服用中および服用後3日、顔面潮紅、血圧降下、動悸、悪心・嘔吐、などの二日酔いに似た症状が出るのでご注意ください。

治療後は再検査で完治を確認する

トリコモナスが完治したと判断するためには、フラジールの服用後に再検査を行い原虫が消えたか確認が必要です。

再検査のタイミングは男女により異なるため、治療後は以下の期間を目安に再検査を受けるようにしてください。

男性

⇨ 服用後2週間以上が経過
女性

⇨ 服用後2週間以上が経過した次回生理後

女性の場合は生理中に菌が増殖する恐れがあるため、次回の生理後に再検査を受けるのが望ましいです。

トリコモナスは、自覚症状が消えただけでは完治ではありません。

自己判断で治療を中止すると感染をぶり返すことや、わずかに残った原虫によりパートナーに感染させてしまうリスクもあります。

トリコモナス治療は、再検査で陰性が出るまでが治療であるとお考えください。

トリコモナスの検査キットについて

トリコモナスの検査は、検査キットを購入すれば医療機関に通院せずに自宅でも行うことができます。

  1. 検査結果をWeb上で確認

    1検査キット購入

  2. 検体の採取(男性:尿 / 女性:膣分泌物)

    2検体の採取(男性:尿 / 女性:膣分泌物)

  3. 検体を返送

    3検体を返送

  4. 検査結果をWeb上で確認

    4検査結果をWeb上で確認

検査キットのみを販売しているサイトもありますが、感染の可能性がある場合そのまま治療が行えるオンライン診療に対応したクリニックがおすすめです。

オンライン診療であれば、フラジール内服薬の郵送も可能なため、検査〜治療まで完結できます。

なお、フィットクリニックでも、検査キットやフラジール内服薬の郵送処方に対応しております。

また検査は、感染の不安がある方だけでも対応可能ですので、当院までお気軽にご相談ください。

このページのまとめ

最後に、このページの重要なポイントをまとめをしておきましょう。

フラジール内服薬のまとめ
  • フラジール内服薬はトリコモナス治療の第一選択薬
  • 薬局やドラッグストアで市販薬として購入できない
  • 治療期間は再検査を含めると1ヶ月前後かかる
  • フラジール内服薬の服用中と服用後3日間は飲酒できない
  • 妊娠中のトリコモナス治療はフラジール膣錠を使うのが一般的
  • 検査キットを使えば自宅からでもトリコモナスの検査が可能

フラジール内服薬を使えば、通常1回の治療で90〜95%の方はトリコモナスが完治します。

ただし、男女ともに自覚症状に乏しいので、医療機関に受診する機会を失う方も多くいます。

早期発見・治療に繋げるためにも、「いつもと違う」と感じた場合はすぐに医療機関にご相談ください。

よくある質問

Q1
フラジール内服薬は市販されていますか?
A1
フラジール内服薬は医師の診断に基づき処方される「処方箋薬」のため、ドラッグストアや薬局などで市販されていません。
検査によりトリコモナスへの感染の有無を確認するためにも、一度医療機関にご相談ください。
Q2
治療中に性行為してもいいか?
A2
治療中の性行為はお控えください。
薬を服用しても菌がすぐに消えることはありません。
さらに、菌の数が減っても感染力を失っていない可能性があります。
Q3
どんな性病に効果的か?
A3
フラジール内服薬は、トリコモナスや細菌性膣症などの治療に効果的です。
Q4
トリコモナスはフラジール内服薬で完治しますか?
A4
フラジール内服薬はトリコモナスの特効薬とされ、通常1回の治療で90〜95%の方が完治します。