受動喫煙のリスク|タバコの副流煙による健康被害について

更新日:24/06/24
受動喫煙のリスク パートナーや周囲への健康被害と対策

近年、タバコの健康被害に関する問題は喫煙者だけでなく、非喫煙者にも及んでいます。
その中でも特に注目されているのが受動喫煙です。

このページでは以下の内容についてまとめています。

  • タバコを吸わなくても害はある?
  • 受動喫煙による健康被害
  • 副流煙に含まれている有害物質
  • 受動喫煙の対策

受動喫煙とは、喫煙者が吐き出す煙やタバコの先から立ち上る煙を、非喫煙者が意図せずに吸い込んでしまうことを指します。

これらの煙には数多くの有害物質が含まれており、非喫煙者の健康にも重大な影響を及ぼすことが明らかになってきています。

受動喫煙による健康被害の深刻さを理解し、対策することは健康的な生活を送るために非常に重要です。

受動喫煙に関する知識を深め、大切な家族や周囲の方を意図しない喫煙から守るためにも、この機会を禁煙に踏み切るきっかけにしてみてください。

タバコを吸わなくても害はある?

タバコを吸わない人でも、周囲に喫煙者がいると健康被害を受ける可能性があります。

火のついたタバコの先端から立ち上る煙(副流煙)には、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」よりも多くの有害物質が含まれています。

タバコを吸わない方も、喫煙者の近くにいれば副流煙を自然に吸い込んでしまうので、非喫煙者であってもタバコを吸っているのと変わりません。

受動喫煙の被害は深刻で、タバコの害は喫煙者本人だけにとどまらず、周囲の人々の健康も害しています。

さらに、サードハンドスモーク(第三次喫煙)といって、タバコの煙が衣服や家具、壁などに残り、それが再び空気中に放出されることで非喫煙者が有害物質を吸い込んでしまいます。

煙にばかり目が行きがちですが、タバコには見えない健康リスクがいくつもあることは覚えておいてください。

受動喫煙による健康被害

受動喫煙は、喫煙者と同等あるいはそれ以上に健康に害が及んでしまうことがあります。

下記のような、受動喫煙のリスクがある人への影響について詳しく解説します。

喫煙者の方は、ご自身以外の他人にもタバコの害が及んでいることを理解する必要があります。

特に、子どもへの影響は大人以上に深刻になるケースもあります。

身近な方への影響を考えると、タバコは吸わないに越したことはありません。

子どもへの影響

子どもは両親と過ごす時間も多いため、どちらかが喫煙者であれば、受動喫煙の影響を特に受けやすいです。

受動喫煙による因果関係が「確実(エビデンスが十分)」とされている健康リスクと、「可能性がある」と考えられているのが以下のとおりになります。

健康リスク 因果関係レベル
喘息の既往 確実(レベル1)
喘息の発症・重症化 可能性あり(レベル2)
呼吸機能低下 可能性あり(レベル2)
中耳の病気 可能性あり(レベル2)
う蝕(虫歯) 可能性あり(レベル2)
学童期の咳・痰・喘鳴・息切れ 可能性あり(レベル2)

※出典:受動喫煙 – 他人の喫煙の影響  厚生労働省e-ヘルスネット

呼吸器への症状が目立ち、特に喘息は基本的に一生付き合っていかなければなりません。

場合によっては、受動喫煙が命に関わることもあるので、子どもの健康への影響は計り知れないと言えます。

妊娠中・赤ちゃんへの影響

妊娠中・赤ちゃんへの影響

妊娠中の喫煙や受動喫煙の影響は、お腹の中の赤ちゃんにも及んでしまいます。

健康リスク 因果関係レベル
乳幼児突然死症候群(SIDS) 確実(レベル1)
低出生体重・胎児発育遅延 可能性あり(レベル2)

※出典:受動喫煙 – 他人の喫煙の影響  厚生労働省e-ヘルスネット

また、この他にも早産や生殖能力が低下するリスクも高まるといわれています。

喫煙期間の長さや喫煙本数が多いほど赤ちゃんの健康リスクも上がるため、母親はもちろん父親もタバコをやめることが強く勧められます。

成人(身近な方)やパートナーへの影響

成人以降でも、身近な方やパートナーに受動喫煙の影響は及びます。

健康リスク 因果関係レベル
肺がん 確実(レベル1)
虚血性心疾患・脳卒中 確実(レベル1)
臭気・鼻への刺激感 確実(レベル1)
鼻腔・副鼻腔がん、乳がん 可能性あり(レベル2)
急性の呼吸器症状(喘息患者・健常者)
急性の呼吸機能低下(喘息患者)
可能性あり(レベル2)
慢性呼吸器症状、呼吸機能低下、喘息の発症・コントロール悪化、慢性閉塞性肺疾患
(COPD)
可能性あり(レベル2)

※出典:受動喫煙 – 他人の喫煙の影響 厚生労働省e-ヘルスネット

煙の影響をもろに受けてしまう呼吸器系の病気が目立ちますが、成人以降は発がんリスクも高まってきます。

なお、年間で約1.5万人が受動喫煙による虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くなっているとされています。

受動喫煙の健康リスクは、誰にとっても非常に深刻であることは覚えておいてください。

副流煙に含まれている有害物質

副流煙には、喫煙者が吸い込む主流煙よりも多くの有害物質が含まれていることがわかっています。

これはタバコの銘柄別にみても同様のことが言え、有害物質の濃度も高いことから、受動喫煙による健康を害する影響は大きいとされています。

以下の表は、副流煙に含まれる主な有害物質と、主流煙と比較してどのくらい多く有害物質が含まれているかをまとめたものです。

有害物質 主流煙との含有量比較 詳細
ニコチン 2.8~19.6倍 ニコチン依存症の原因となる物質。子どもが誤って口にすると中毒になる危険性がある。
タール 1.2~10.1倍 いわゆるヤニのこと。約70種類の発がん物質が集まった物質。
一酸化炭素 3.4~21.4倍 慢性的な酸素欠乏状態や、動脈硬化の進行を助長する。
アンモニア 294.2~2,565.5倍 目や鼻、喉などに痛みを引き起こす刺激性が強い物質。

※出典:たばこの煙と受動喫煙 厚生労働省e-ヘルスネット

タバコの煙には、「粒子成分」と「ガス成分」の大きく2種類に分られます。

粒子成分は4,300種類、ガス成分は1,000種類に及ぶ化学物質が含まれ、上記以外にも人体に有害とされるさまざまな物質を受動喫煙によって吸い込むことになります。

受動喫煙の対策

2020年4月より、受動喫煙を防ぐための健康増進法の改正法が施行されました。

この法律は、公共の場での受動喫煙を防止するための具体的な対策を示しています。

以下は、その主な内容です。

受動喫煙対策のルール
  • 学校、病院、児童福祉施設等の敷地内は全面禁煙
  • 屋内は原則禁煙(特定の条件を満たす喫煙専用室を設ける場合を除く)
  • 飲食店、事務所、工場などの屋内施設でも原則禁煙(喫煙専用室の設置が許可されている場合あり)

しかし、これらの対策をしても、受動喫煙を完全に防ぐことは難しい状況が続いています。
分煙では完全な無煙環境を作ることが難しく、これは日常生活においても同じことが言えます。

下記の対策をしても煙は防げない
  • 換気扇の下で吸う:煙が完全に排出されず室内に残留する
  • 窓を開けて吸う:煙が室内に逆流する
  • 部屋を分けて吸う:煙は空気の流れによって他の部屋に拡散する
  • 空気清浄機を置く:吸い込めるのは数十センチの範囲であり、有害物質の除去も難しい

タバコの煙は簡単に空気中に広がってしまうため、いくら気をつけていたとしても、タバコに火をつけた時点で同じ環境にいる方の受動喫煙は避けられません。

望まぬ喫煙を防ぐためには、1人でも多くの喫煙者が禁煙に積極的に取り組むことが何よりの対策となります。

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フィットクリニックでは、少しでも楽にタバコをやめられるよう積極的にサポートしています。

この外来では、禁煙補助薬を用いた治療プログラムにより、自力で行うよりも高い確率で禁煙を成功に導くことが可能です。

当院で処方する禁煙補助薬「チャンピックスジェネリック」は、ニコチンを含んでいないため、依存がタバコから薬に移ってしまう心配がありません。

禁煙でもっとも辛いとされる離脱症状だけでなく、タバコを吸いたい気持ちを抑えることができます。

禁煙を考えているようであれば、まずはフィットクリニックの禁煙外来までご相談ください。

医師と二人三脚で禁煙に取り組むことで孤独感も感じにくくなり、モチベーションを維持することで禁煙成功率はさらに高まります。

ご自身の健康のためだけでなく、身近な大切な方のためにもこの機会に禁煙にチャレンジしていきましょう。

まとめ:受動喫煙のリスクをなくすためにも禁煙を勧めるのもひとつ

このページのまとめは以下の通りです。

  • 受動喫煙は喫煙者と同等あるいはそれ以上の健康リスクがある
  • 副流煙には主流煙よりも高濃度の有害物質が含まれている
  • 虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)は、受動喫煙との関係が確実視されている
  • 一般的な対策では受動喫煙を完全に防ぐことはできない
  • 喫煙者自身が禁煙に取り組むことが受動喫煙対策として最も効果的

タバコは嗜好品として嗜まれてきましたが、煙に含まれる有害物質の影響は喫煙者本人だけでなく、周囲の方の健康を害すことがわかってきています。

受動喫煙対策の一環として分煙も行われていますが、それだけでは煙の害を完全に防ぐことはできません。

家族やパートナーの健康を守るために、禁煙をスタートしてみてはいかがでしょうか。
また受動喫煙のリスクをなくすためにも、相手に禁煙を勧めてみてください。

よくある質問

Q1
受動喫煙は体に害がありますか?
A1
受動喫煙は、喫煙者が吐き出す主流煙と、タバコの先端から立ち上る副流煙の影響を受けるため、望まない喫煙により体に害が及んでしまうことがあります。
特に、副流煙は有害物質の濃度が高いことから、健康を害する影響は大きいとされています。
Q2
受動喫煙はマスクで防げますか?
A2
受動喫煙をマスクで防ぐことはできません。
タバコの煙は「粒子成分」と「ガス成分」に大きく分けることができ、これらの成分はマスクを通過してしまいます。
有害物質をろ過する効果は期待できないので、受動喫煙対策としてのマスクは無効と考えてください。
Q3
受動喫煙で肺がんになることはありますか?
A3
受動喫煙による肺がんのリスクは「確実」とされており、受動喫煙のある人はない人にくらべ約1.3倍リスクが高まることがわかっています。