
このページでは、ニコチンガムやニコチンパッチの効果と副作用など、主にニコチン製剤について解説します。
チャンピックスとニコチンパッチの違いの解説のほか、どちらが合っているか確認できるチェックリストもありますので、ぜひご利用ください。
※当院ではニコチンパッチ・ニコチンガムは取り扱っておりません
禁煙の薬に関する基本的な情報は以下のページをご確認ください。
ニコチンガムとは

ニコチンガムとは、ニコチンを口腔粘膜から吸収するガムタイプの禁煙補助薬です。
1個につき2mgのニコチン成分が含まれており、ゆっくり噛むことで約0.8〜1mgを口腔粘膜から吸収します。
数週間かけてガムの量を減らすことで、ストレスなく禁煙を成功させる仕組みです。
ニコチンガムの効果により、自力で禁煙するよりも成功率が1.5倍上がるといわれています。
2001年6月から一般用医薬品として認可され、薬局でも購入できるようになりました。
ニコチンパッチとは

※引用:ニコチネルTTS|GSK-グラクソ・スミスクライン
ニコチンパッチとは、ニコチンを皮膚から吸収する、貼るタイプの禁煙補助薬です。
第一類医薬品となっており、薬局で購入できる市販薬と医療機関での処方があります。
どちらも基本的には同じ薬ですが、パッチ1枚あたりに含まれるニコチン量に違いがあります。
ニコチンパッチのニコチン含有量
処方薬:52.5mg /35mg / 17.5mg
市販薬:35mg / 17.5mg
タバコへの依存度によっては、高用量の処方が可能な医療機関での処方を検討しましょう。
また、施設基準を満たした保険医療機関で患者基準を満たした場合、ニコチンパッチは保険が適用されます。
ニコチンパッチの仕組み
ニコチンパッチは「経皮吸収ニコチン製剤」にカテゴリされる薬になり、肌に貼ることでタバコよりも少量のニコチンを摂取します。
パッチは多層構造になっており、各層が異なる役割を果たすことで、長時間の使用でも血中内のニコチン濃度が一定に保たれるよう設計されています。

ニコチンパッチの多層構造
-
支持体
パッチの形状を保ち、他の層に水分や異物が入るのをブロックする層 -
マトリックス層
ニコチンの放出をコントロールする層 -
薬物貯蔵層
有効成分であるニコチンを蓄えている層 -
粘着層
長時間でも肌から剥がれないよう固定するための層 -
ライナー
ニコチンが揮発(気体になる)のを防いで粘着面を保護する層※使用前に剥がす
各層がニコチンの吸収量をコントロールし、品質を保護することで治療効果を安定させます。
ニコチンガム・ニコチンパッチの効果
ニコチンガム・ニコチンパッチの効果は以下の通りです。
ニコチンガム・ニコチンパッチの効果
- イライラの緩和
- 食欲抑制
- 集中困難・落ち着かないといった症状の緩和
主にニコチン依存症の離脱症状による、イライラや集中困難などの症状を緩和する効果があります。
離脱症状は禁煙後2〜3日頃がピークとされ、たばこへの欲求を我慢できずに失敗してしまうケースが多いです。
ニコチンガムはたばこが吸いたくなったタイミングで使用し、すぐに効果を感じられるため、突発的なストレス症状にも効果を発揮します。
また、ニコチンパッチは1日1回貼り替えることで効果が持続するのが魅力です。
併用はできないため、好みに合わせた薬を使うことが大切です。
ニコチンガム・ニコチンパッチの禁煙成功率
自力で禁煙した場合と比べた禁煙成功率は、ニコチンガムが1.5倍、ニコチンパッチが1.9倍と言われています。
ニコチンガム・ニコチンパッチの禁煙成功率
ニコチンガム:1.5倍
ニコチンパッチ:1.9倍
特にニコチンパッチについて禁煙の有効性を調べたデータによると、プラセボ群(偽薬)が36.3%に対し、ニコチンパッチを使用した場合の禁煙成功率は53.3%でした。
研究や使用期間によって成功率が変化しますが、これには治療方法、本人の禁煙意志、サポート体制の違いなどが影響しています。
ニコチンガムの噛み方
ニコチンガムの正しい噛み方は以下となります。
ニコチンガムの噛み方
- シートから1つニコチンガムを取り出す
- ニコチンガムを口に入れて15回ゆっくりと噛む
- 頬と歯茎の間に入れて1分間置く
- 味が無くなるまで2~3を続ける(30~60分)
- ガムを紙などに包み捨てる
ニコチンガムはたばこが吸いたくなったタイミングで使用しましょう。
正しく使用しないと効果が十分に発揮できないどころか、副作用が強く出てしまう可能性があります。
通常のガムのように噛むのではなく、30〜60分ほど時間をかけて噛んでください。
喫煙本数に応じて1日4〜12個から始め、徐々に使用量を減らしていきましょう。
ニコチンガムの使用例
喫煙本数別の使用例は以下となります。
1日の喫煙本数 | 0~4週間 | 4~6週間 | 6~8週間 | 8~10週間 | 10~12週間 |
---|---|---|---|---|---|
20本以下 | 4~6個 | 1~3個 | 0~1個 | ー | ー |
21~30本 | 6~9個 | 3~6個 | 1~3個 | 0~1個 | ー |
31本以上 | 9~12個 | 6~9個 | 3~6個 | 1~3個 | 0~1個 |
ニコチンガムは12週間(3か月)を目安に使用してください。
最初は4〜12個(最大24個/1日)から始め、8〜12週間後には0〜1個を目標に進めましょう。
中度のニコチン依存の方の場合、開始から2週間まで1日の平均推奨個数は5.4個程度です。
ニコチン依存度によって推奨個数も変わりますので、ご自身の喫煙本数などを考慮して決めてください。
ニコチンガムの注意事項

ニコチンガムの注意事項は以下となります。
- 普通のガムのように速く噛まない
- たばこを完全にやめた状態で使用する
- 1回1個を厳守する
- コーヒーや炭酸飲料と一緒に使用しない
- 使用期間は3か月を目安とし6か月以上使用しない
- 吸入剤やスプレーと併用しない
普通のガムのように噛んでしまうと、唾液の分泌量が多くなりニコチンを吸収する前に飲み込んでしまう可能性があります。
ニコチンが吸収されなければ本来の効果を発揮できませんので、時間をかけてゆっくりと噛みましょう。
また1回に2個以上噛むと、吐き気やめまいなどの副作用が強く出てしまう可能性があるため、1回1個を厳守してください。
コーヒーや炭酸飲料を飲むと口腔内が酸性になり、ニコチンが吸収されにくくなります。
ニコチンガムを使用する前は飲まないようにしましょう。
のどの刺激が強くなる可能性があるため、吸入剤やスプレー剤と併用しないでください。
ニコチンパッチの使い方
ニコチンパッチの使い方は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
使用枚数 | 1日1枚 |
使用量 |
最初の4週間は高濃度からスタート その後は2週間ごとに用量を調整 |
貼付部位 | 上腕、肩、背中、腹部などの皮膚が清潔で乾燥した部分 |
使用期間 | 8週間から10週間 |
ポイント |
皮膚が清潔で乾燥した部分に貼る 毎日同じ時間に貼り替える 同じ場所に連続して貼らない |
ニコチンパッチを貼る手順については、以下を参考にしてください。
ニコチンパッチの貼り方
①皮膚を清潔にする:石鹸と水で洗い、しっかりと乾かします。
②パッチを取り出す:パッチの包装を開け、粘着面を触らないようにします。
③貼る場所を決める:上腕、肩、背中、腹部のいずれかを選びます。
④パッチを貼る:粘着面を皮膚に10秒ほど押し付け、しっかりと貼り付けます。
⑤24時間ごとに貼り替える:毎日同じ時間に新しいパッチに交換します。
ニコチンパッチを正しく使用することで、禁煙の成功率を高めることができます。
医師または薬剤師の指導に従って、ニコチンパッチの正しい使用を心がけてください。
ニコチンガムを使えない人
以下にあてはまる場合は、ニコチンガムを使用できません。
ニコチンガムを使えない人
- 非喫煙者
- 他のニコチン製剤を使用している方
- 妊娠中の方
- 3か月以内に心筋梗塞の発作を起こしている方
- 重い狭心症を患っている方
- 重い不整脈を患っている方
- 脳梗塞や脳出血など急性期脳出血障害がある方
- うつ病の方
- ニコチンガムでアレルギー症状を起こしたことがある方
- あごの関節に障害がある方
上記のほか歯科治療を受けている方やのどの腫れ、口内炎がある場合も医師に相談してください。
口腔関係のトラブルや歯の治療中で使用できない場合は、ニコチンパッチやチャンピックスジェネリックなどの使用を検討しましょう。
また高血圧や糖尿病(インスリン製剤を使用している)などの治療を受けている方は、治療薬の作用に影響を及ぼす可能性があるため医師に相談してください。
ニコチンパッチを使えない人
以下の条件に該当する方は、ニコチンパッチを使用しないでください。
ニコチンパッチを使えない人
- 非喫煙者
- 妊娠中または授乳中の方
- 心疾患のある方(発症後3ヶ月以内の心筋梗塞、重度の不整脈、狭心症など)
- 脳血管障害回復期の方
- アレルギー
- うつ病と診断されたことがある方
- 他のニコチン製剤を使用している方
上記の条件に当てはまる方がニコチンパッチを使用してしまうと、現在抱えている症状の悪化や副作用が現れやすくなる可能性があります。
条件に該当する場合は、使用前に必ず医師に相談し、その他にも健康状態に不安がある場合には申し出るようにしてください。
また、ニコチンパッチが使えなくてもチャンピックスは使用できる場合があります。
薬が使えるか気になる場合は、医療機関に一度ご相談ください。
ニコチンガムの副作用
ニコチンガムの副作用は以下となります。
ニコチンガムの副作用
- 胸やけ
- しゃっくり
- 胃の不快感
- 吐き気
- のどの刺激感(ヒリヒリ)
- あごの疲労
上記の症状は正しく噛めていない際に起きることが多く、噛み方に慣れていく内に軽減していきます。
ただし症状がひどく出ている場合は、使用を中止して医師に相談してください。
喫煙本数によっては1日に使用する量が多くなってしまうため、副作用を強く感じる可能性があります。
また噛み方だけでなく必要個数を誤っていると、吸いたい気持ちが抑えられなくなってしまうため適量使用することが大切です。
ニコチンパッチの副作用
ニコチンパッチの副作用には、以下のような症状があげられます。
ニコチンパッチの副作用
- 紅斑やかゆみ
- めまい
- 頭痛
- 不眠 など
肌が弱いと、パッチの貼付部位に接触皮膚炎が現れることがあります。
またニコチンを吸収している影響から、めまいや頭痛、不眠といった精神神経系の症状が出てしまうこともあります。
なお、上記の副作用への対処法もあるので、気になる症状が現れた場合には実践してみてください。
【皮膚のかゆみや発赤への対処】
肌がかゆい、赤みが出ているようであれば、パッチを貼る部位を毎日変えることが推奨されます。
それでも症状が落ち着かない場合、医師から抗ヒスタミン剤やステロイド(外用薬)の処方を受けることも可能です。
【不眠への対処】
パッチを貼り替えている時間を確認し、朝起床時に貼り替えることで不眠が改善されることがあります。
それでも改善されない場合は、就寝前に剥がすようにしてみてください。
これらの対処法を実践しても改善がみられない場合、医師または薬剤師にご相談ください。
ニコチンガム・ニコチンパッチの購入方法
ニコチンガムは市販で購入可能です。
ニコチンガムの購入方法
- 薬局
- ドラッグストア
- 通販
ニコチンガムは、国内では第2類医薬品として「ニコチネル」や「ニコレット」といった商品が販売されています。
一部のニコチンパッチは保険適用になりますが、一般医薬品であるニコチンガムは保険適用外です。
ニコチンパッチの購入方法は、市販または医師処方のいずれかを選択できます。
ニコチンパッチの購入方法
購入方法 | 詳細 | 価格帯 | 製品名 |
---|---|---|---|
市販 | ドラッグストアでの直接購入だけでなく、オンラインのECストアでも購入可能 | 3,000円前後/2週間分 | ニコチネルパッチ |
医師処方 | 条件を満たせば保険が適用され、市販にはない高用量の取り扱いもある | 約13,000円/12週間の治療 ※保険適用時の価格 | ニコチネルTTS |
ニコチンパッチは市販の場合、ドラッグストアや薬局だけでなく、Amazonや楽天といったECストアでも購入が可能です。
購入前には常駐する薬剤師との相談が必要になりますが、気軽に禁煙を始めやすい購入方法と言えます。
一方で、医師処方は保険適用と高用量処方が可能なため、ニコチン依存度によっては最適な選択となり得ます。
医師のサポートによって禁煙成功率が高まる可能性もあるので、自己管理が難しい方にもおすすめです。
チャンピックスとニコチンパッチの違い
禁煙補助薬であるチャンピックスとニコチンパッチの違いは以下のとおりです。
チャンピックス | ニコチンパッチ | |
---|---|---|
効果 |
|
|
成功率 | 65.4%(9~12週間) | 53.3%(8週間) |
価格 | 20,000円~67,000円程度 | 13,000円~30,000円程度 |
用法 | 毎日服用する | 毎日貼替える |
注意点 |
|
|
入手方法 | 医療機関、個人輸入 | 医療機関、市販 |
どちらが自分に合っているかよくわからない方は、下で紹介するチェックリストをご活用ください。
【チェックリスト】チャンピックスとニコチンパッチどちらが合っている?
禁煙を成功させるためには、自分の生活スタイルや習慣に合った補助薬を選ぶことが重要です。
以下のチェックリストを使って、どちらの禁煙補助薬が向いているか確認してみましょう。
タバコは1日11本以上吸う | |
禁煙に失敗した経験がある | |
成功率を優先して薬を選びたい | |
吸いたい気持ちを抑えたい | |
普段車や大きな機械を運転する | |
内服薬よりは外用薬を使いたい |
青の項目に1つでも該当する場合はチャンピックスが、赤の項目に1つでも該当する場合はニコチンパッチが向いています。
青・赤両方に該当している場合は、ニコチンパッチを使うのが望ましいです。
基本的にはチャンピックスがおすすめですが、上記のように生活習慣によってはニコチンパッチを使った方が良い場合もあります。
まとめ
ニコチンガム・ニコチンパッチのまとめは以下のとおりです。
ニコチンガムのまとめ
- ニコチンガムはニコチン依存症の症状を緩和する
- ニコチンガムを使用すると成功率が1.5倍上がる
- 効果を発揮させるためにもゆっくりと噛むことが大切
- 副作用は正しく噛むことで軽減する
- 口腔内のトラブルがある方はニコチンパッチや飲み薬も検討する
ニコチンパッチのまとめ
- 禁煙中のイライラや集中困難、落ち着かないといった離脱症状を緩和
- 自力で禁煙するのに比べて禁煙成功率は1.9倍上がる
- 毎日貼り替えて8〜10週間使用
- 特定の条件に該当するとニコチンパッチの使用はできない
- 市販薬と医師処方を選べる
- 医師処方は条件を満たせば保険適用となり、高用量処方も受けられる
- 成功率で選ぶならニコチンパッチよりチャンピックス
※当院ではニコチンパッチ・ニコチンガムは取り扱っておりません
ニコチンガム・ニコチンパッチより禁煙成功率の高いチャンピックスジェネリックは当院でも取り扱っております。
禁煙を成功させたい方はお気軽にご相談ください。
ニコチンガム・ニコチンパッチについてのよくある質問
-
- Q
ニコチンガムの噛み方がわかりません
- A
ニコチンガムはたばこを吸いたい気持ちが現れた際に口に含みます。15回ゆっくり噛んだ後、歯茎と頬の間に1分間挟みます。これを30〜60分ほど繰り返しおこなってください。
- Q
-
- Q
ニコチンガムは1日何個まで使用していいですか?
- A
ニコチンガムは喫煙量によって使用個数が異なります。開始から2週間までは1日4〜12個ほど使用し、徐々に個数を減らしていきましょう。1日の最大使用量は24個です。
- Q
-
- Q
ニコチンガムやニコチンパッチ(ニコチネルパッチ)はどこで買えるんですか?
- A
ニコチンガムは薬局やドラッグストアで購入できます。すでに一般医薬品になっているため保険適用外です。
ニコチンパッチは、市販薬としてドラッグストアやオンラインショップで購入できます。
また、禁煙外来を受診し、医師の処方を受けることで保険適用のニコチンパッチを購入することも可能です。
- Q
-
- Q
ニコチンパッチ(ニコチネルパッチ)を付けたままお風呂に入ってもいいですか?
- A
ニコチンパッチを付けたままお風呂に入っても問題ありません。
パッチは耐水性があるため、シャワーやお風呂での使用に耐えるように設計されています。ただし、パッチを貼り付けている部分を強く擦ったり、長時間の入浴は避けるようにしてください。
パッチが剥がれてしまう、ニコチンの吸収量が必要以上に増加するおそれがあります。
- Q
-
- Q
ニコチンパッチ(ニコチネルパッチ)は保険適用になりますか?
- A
ニコチンパッチは保険適用になります。
施設基準を満たした保険医療機関に受診し、いくつかの条件を満たすことで自己負担額を3割に抑えられます。
保険適用時の価格については、12週間の治療で約13,000円となっています。
- Q
-
- Q
ニコチンパッチ(ニコチネルパッチ)を貼る場所はどこですか?
- A
ニコチンパッチは、上腕、肩、背中、腹部などの皮膚が清潔で乾燥した部分に貼ることが推奨されています。
毎日同じ場所に貼らず、日によって部位を変えることで皮膚のかぶれなどの副作用を防ぐことが可能です。
- Q
その他よくある質問はこちらをご確認ください
参考サイト
ニコチンガム製剤
禁煙治療のための標準手順書 第 8.1 版
Developing a Rational Approach to Tobacco Use Treatment in Pulmonary Practice: A Review of the Biological Basis of Nicotine Addiction