妊娠中の喫煙は赤ちゃんに悪影響を及ぼすことが知られており、妊婦の8割以上が禁煙を望んでいるというアンケート結果もあるほどです。
しかし、喫煙者の多くがニコチン依存症という病気であり、タバコをやめようにもやめられないケースは少なくありません。
このページでは、妊娠がわかったタイミングからでも行える禁煙方法や妊娠中でも使用できる禁煙補助薬について詳しく解説します。
この記事を読んでからでも遅くはないので、母子ともに健康であるためにも、この機会に正しい禁煙方法を試してみてください。
妊娠中の禁煙方法は禁煙補助薬を利用
妊娠中に限らず、女性は男性よりも禁煙するのが難しく、再喫煙してしまうケースも多いことがさまざまな研究で報告されています。
妊娠中に禁煙した妊婦167人のうち約6割が再喫煙するというデータもあるほどで、女性が自力でタバコをやめることの難しさがわかります。
妊娠中は心身ともにデリケートな時期なので、我慢がストレスになるようであれば禁煙補助薬を使用するとスムーズな禁煙が可能です。
禁煙パッチやガムはニコチンを含むため使用できませんが、チャンピックスという飲み薬は医師の診断次第で使用が認められています。
ここからは、妊娠中でも使用できる禁煙補助薬について詳しく解説していきます。
妊娠中にチャンピックスを使う安全性
妊娠中のチャンピックス使用の安全性については、添付文書に以下の記載があります。
つまり、タバコによる胎児への影響が懸念される場合にのみ、医師の判断で使用が可能となっています。
したがって、妊娠している喫煙者であれば必ず使用できるとは限らず、チャンピックスを服用する上でのメリット・デメリットを慎重に比較検討してからの使用となります。
チャンピックスには、禁煙時の離脱症状と喫煙欲求の2つにアプローチする効果があります。
これにより、禁煙に伴うイライラや頭痛、眠気などの不快な症状を軽減でき、タバコを吸っても不味いと感じさせることで喫煙欲求の低下も期待できます。
チャンピックスの入手方法と価格
医療用医薬品であるチャンピックスを使用するには、医師の処方が必要です。
フィットクリニックでは後発薬であるチャンピックスジェネリックを取り扱っており、費用面でのハードルを下げることで治療に踏み出しやすくなっています。
禁煙治療 (自費診療) |
価格 (税込) |
1日あたり |
---|---|---|
12週間禁煙プログラム | 49,200円 / 12週間 |
585円 |
定期配送プログラム | 17,685円 / 4週間 |
631円 |
お試しプログラム2w | 12,000円 / 2週間 |
678円 |
※1日あたりの価格は12週間分購入した場合の価格です。
※オンライン・来院診療どちらにも対応しています。
※お試しプログラム2wを継続する場合、残り(10週分)45,000円は一括払いとなります。
各プログラムの要点 | |
---|---|
12週間禁煙プログラム | チャンピックスでの治療では基本の期間である12週間をまるごとカバーできるプログラム。 3つのプログラムの中で一番コストパフォーマンスに優れている。 |
定期配送プログラム |
4週間分が都度配送されるプログラム。 3つのプログラムの中で唯一都度払いとなっている。 |
お試しプログラム2w | 「本当に効果があるか気になる」という方のために2週間分がお試しできるプログラム。 ただし追加で10週間分の処方を受けたい方は45,000円となり、他のプログラムに比べて割高。 |
通常の治療期間である12週間の禁煙プログラムに加えて、1ヵ月ごとに禁煙状況をみながら治療を進められる定期配送プログラムもあります。
また、他のプログラムに比べると割高にはなりますが、2週間のお試しプログラムもご用意しています。
当院は薬のみのシンプルな処方となっていますが、個々の喫煙状況やニーズに合わせたオンラインによるサポート体制も整えています。
禁煙成功のための強力なパートナーとして、タバコをやめる際は当院にお気軽にご相談ください。
妊娠中にニコチン製剤は使用できない
禁煙補助薬の中でも、ニコチン製剤と呼ばれるニコチンパッチやニコチンガムは妊娠中は使用できません。
ニコチン製剤は、タバコの代わりに皮膚や口腔内からニコチンを少量摂取する代替療法であり、タバコを吸っている状態とほぼ同じです。
また、ニコチンの胎児への安全性は確立されておらず、母乳にも移行することから、妊娠中だけでなく授乳中の女性も使用は避けるべきです。
妊娠中でも吸えるタバコはあるのか
喫煙がやめられない妊娠中の女性にとって、タバコの代わりとなる製品があるかは気になるところです。
結論としては、妊娠中に安全といえるタバコや代替品はありません。
タバコ市場には電子タバコやニコチンを含まない代替品があり、これらは従来のタバコに比べて健康被害が少ないとされることがあります。
特に、リキッドを加熱した際に発生する水蒸気を吸う電子タバコ(VAPEなど)は、ニコチンやタールを含んでいないので安全な選択肢に思えるかもしれません。
しかし、電子タバコの販売元は、一般的なタバコの成分を含まないとしながらも、妊娠中や授乳中は使用を避けるようにとアナウンスしています。
完全に安全であるとは断言できず、母子ともにデリケートな時期なので、あらゆるリスクを最小限に抑えなければなりません。
そのため、妊娠中の安全な禁煙を目指すには代替品ではなく、医療機関への相談が最良の選択となります。
妊娠中の喫煙の影響とは
妊娠中の喫煙は、低体重児や早産、流産、死産、妊娠・出産時の合併症(胎盤早期剥離、前置胎盤、出血など)のリスクが通常よりも1.5~2倍高くなると言われています。
これはタバコに含まれる一酸化炭素によって赤ちゃんへの酸素や栄養の供給が阻害されるために起こります。
一部には「妊娠中の禁煙はストレスがかかるため、むしろ喫煙を続ける方がいい」と考える方もいますが、有害物質の影響はストレスの影響をはるかに上回ります。
以下の表で妊娠中にタバコがやめられないとどうなるのかをまとめたのでご覧ください。
妊娠中の喫煙の影響
種類 | 関連性の確からしさ* | 相対危険度 |
---|---|---|
低出生体重 | ◎ | 2.0倍 |
早産 | ◎ | 1.5倍 |
周産期死亡 | ◎ | 1.3倍 |
妊娠・分娩合併症** | ◎ | 1.5~2.0倍*** |
自然流産 | 〇 | 1.5倍 |
先天奇形 | △ | 1.5倍 |
生後の発育・発達 | △ | - |
小児がん | △ | - |
受動喫煙による低出生体重 | 〇 | 1.5~2.2倍 |
*:喫煙との関連性の確からしさ
◎:因果関係を立証する疫学的基準をほぼ満たしており、喫煙との関連は確実。
〇:喫煙との関連は認められるが、因果関係を立証するほど十分な疫学的証拠は得られていない。
△:研究数が少ない、または研究によって一致した見解が得られておらず、喫煙との関連が示唆される程度。
**:胎盤早期剥離、前置胎盤、出血などを含む。
***:1日20本以上の喫煙者の相対危険度
以下より、妊娠中の喫煙リスクについて詳しく解説していきます。
低体重児が生まれやすい
妊娠中の喫煙は、赤ちゃんの発育に直接的な悪影響を及ぼします。
-
ニコチン
⇨胎盤を通じてニコチンの影響が赤ちゃんにも及び、血管が収縮して酸素や栄養補給を妨げる。 -
一酸化炭素
⇨一酸化炭素は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンと結びつき、赤ちゃんが酸素不足に陥る。
タバコの代表的な有害物質の影響によって、赤ちゃんの成長を著しく損ない、結果として低出生体重児のリスクが高まります。
低出生体重児は、新生児期だけでなく、将来の健康をも脅かすことがあり、妊娠中の喫煙が招く深刻な結果の1つです。
流産や早産・死産をしやすい
妊娠中の喫煙は、流産や早産・死産のリスクを増加させます。
ニコチンや一酸化炭素によって子宮などへの血液循環が悪くなってしまい、胎盤機能が低下することで起こります。
また、「乳幼児突然死症候群(SIDS)」は4,000人に1人の割合で発生し、喫煙が原因の1つとされています。
乳幼児突然死症候群のリスクは、両親が喫煙していると、タバコを吸わない場合と比べて発症率が約4.7倍も高くなるとの報告があるほどです。
流産や早産・死産は、家族に計り知れない悲しみをもたらし、その原因が喫煙であった場合、避けられたかもしれない事実は大きな痛手となります。
このように、喫煙は母親だけでなく、未来の新しい命にも大きく影響するため、禁煙することは妊娠中はもちろんその可能性がある場合も不可欠です。
子どもに発達異常が起こる可能性がある
妊娠中の喫煙の影響は、母親のお腹にいる間だけでなく、生まれてから長期にわたってみられることがあります。
タバコに含まれる200種類を超える有害物質の影響は、以下のような子どもの発達異常の引き金になりかねません。
- 行動異常
- ADHD(注意欠如・多動症)
- うつ病
- 学習障害
これらの障害は、子どもの学業成績、社会関係、さらに将来の職業選択にも影響を及ぼしかねず、その影響が一生続いてしまう可能性もあります。
したがって、子どもが健全に成長していくためにも、医師と相談しながら積極的に禁煙に取り組むことが推奨されます。
喫煙者と非喫煙者の母親の胎児を比較
研究によって、妊娠中に喫煙した母親と非喫煙者の母親の胎児とでは、動きが異なることがわかっています。
ダラム大学とランカスター大学の科学者が行った研究では、妊婦20人から合わせて80枚の高解像度の超音波スキャン画像を撮影しました。
この研究から、タバコを吸う母親の胎児は、通常よりも手や口を動かす頻度が著しく多いことがわかりました。
引用:Durham University
10秒間の観察期間にわたる、喫煙している母親の生後32週の胎児(上の線)と非喫煙者の母親の生後32週の胎児(下の線)の4Dスキャンフレームの例。
・妊娠24週と36週の胎児の口と手の動きを観察
・被験者のうち4人は1日平均14本のタバコを吸う妊婦、それ以外はタバコを吸わない妊婦
■研究結果 =タバコを吸う母親の胎児は、通常よりも手や口を動かす頻度が著しく多いことが判明
妊娠中に喫煙すると、胎児の顔の動きを司る中枢神経系の発達に障害を引き起こします。
胎児の手や口の動きに及ぼす影響は、強いストレスを感じている妊婦や、うつ状態にある妊婦の胎児にも見られますが、喫煙によってニコチンにさらされた胎児により大きな影響が出るといえます。
妊娠が分かった時点で禁煙してもリスクは減少
妊娠が発覚してから禁煙に取り組んでも、お腹の赤ちゃんにとって遅いことはありません。
妊婦の禁煙の効果
禁煙時期 | 禁煙の効果 |
---|---|
妊娠前に禁煙 | 出生体重は非喫煙者とほぼ同じレベルになる |
妊娠3~4ヵ月までに禁煙 | 低出生体重、早産、周産期死亡のリスクが低下する |
妊娠5ヵ月以降~出産前に禁煙 | 低出生体重のリスクが低下する |
出産後に禁煙 | 子どもの受動喫煙と将来の喫煙を減らす |
禁煙に取り組むタイミングは早いほど効果的ですが、妊娠後期以降であっても、これ以上の害を与えないという意味で禁煙することを強く推奨します。
また、出産後の禁煙であっても、子どもの受動喫煙を避けられるので、より健康的な成長環境を整えるという意味でも禁煙は大切です。
一般的にタバコをやめることは決して簡単なことではありませんが、新しい命を授かる大きなライフイベントを機に禁煙をはじめてみてください。
妊娠中の受動喫煙もNG!パートナーも禁煙を推奨
妊娠中の受動喫煙は、妊婦本人が直接タバコを吸っていない場合でも、パートナーや家族の喫煙が赤ちゃんに深刻な健康被害を及ぼすリスクがあります。
特に、受動喫煙が乳幼児突然死症候群(SIDS)の要因となることは確実視されており、低出生体重や発育遅延などのリスクとの関連も指摘されています。
このため、妊娠している女性の周囲での喫煙は控え、胎児が健やかに成長できる環境を整えることが大切です。
電子タバコやIQOS(アイコス)などの加熱式タバコも、紙巻きタバコと比較して健康への影響が少ないと断言することはできません。
これらの喫煙具から発生するエアロゾルや蒸気にもさまざまな有害物質が含まれ、受動喫煙の原因になる可能性もゼロではありません。
空気清浄機などを使っても有害物質を完全に取り除くことはできないため、パートナーや家族の方も禁煙にぜひ挑戦してください。
まとめ:妊娠が分かった時点で早めに禁煙を!
妊娠がわかった時点で、ご自身とお腹の子どもの健康を守るために、早めに禁煙することをおすすめします。
タバコの本数を減らしたり、代替品を使用しても、健康リスクは依然として残ります。
そのため、医師による禁煙サポートとして、チャンピックスの処方を検討してみましょう。
禁煙は一時的な挑戦ではなく、ご自身と子どもの長い健康を見据えた投資です。
また、パートナーや家族の中に喫煙者がいる場合は、新しい命を授かるこの機会に、共に禁煙に挑戦することをおすすめします。
よくある質問
- 低出生体重児
- 流産、早産・死産
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
- 発達異常(ADHD、学習障害など)
ニコチンやタールを含まない電子タバコであっても、妊娠中や授乳中の使用は推奨されません。そのため代替品を探すのではなく、これ以上の害が胎児に及ばないよう積極的に禁煙に取り組むようにしてください。