古くから男性の民間薬として使われてきた「ノコギリヤシ」をご存じですか?
このページでは、近年薄毛改善への効果が期待されると話題のノコギリヤシについて詳しく解説しています。
研究データなどもあげながら、ノコギリヤシがもつ効果・副作用・注意点に触れていますので、今後取り入れようと考えている人は参考にしてみてください。
なぜノコギリヤシが髪に良いとされるのか?
ノコギリヤシは、古くからアメリカ先住民族(ネイティブアメリカン)に男性の健康維持を目的としたメディカルハーブとして親しまれてきた植物です。
その薬効は高く、前立腺肥大症の治療や男性の薄毛改善に効くとされています。
日本では医薬品ではなくサプリメント扱いのため、「薄毛を改善したいがAGA治療薬の使用はちょっと…」とためらう男性に注目を集めています。
近年、ノコギリヤシの成分を用いた海外の研究から、前立腺肥大症以外にも薄毛改善への期待が高まるデータが出ています。
なぜノコギリヤシが髪に良いとされているのか、その2つの理由についてまずは見ていきましょう。
5αリダクターゼの阻害効果
ノコギリヤシには、酵素5αリダクターゼを阻害する作用があると考えられています。
この酵素は男性ホルモンであるテストステロンを、より働きの強いDHT(ジヒドロテストステロン)と呼ばれるホルモンへと変換する働きがあります。
5αリダクターゼの働きによってできたDHTが頭皮に増えると、AGA(男性型脱毛症)と呼ばれる脱毛症の原因になります。
つまりノコギリヤシの持つ5αリダクターゼを阻害する働きは、AGAの予防・改善に役立つと言えます。 以下ではノコギリヤシを使った薄毛改善の試験をご紹介します。
ノコギリヤシとフィナステリドの比較試験
海外で行われたノコギリヤシ(セレノアレペン)とフィナステリドを使った2年間の比較試験では、次のような結果が得られています。
【ノコギリヤシ・フィナステリドの使用比較(2年)】
ノコギリヤシ(320mg) | ⇨ 38%の人が改善 |
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フィナステリド(1mg) | ⇨ 68%の人が改善 |
試験は、進行が見られる中程度のAGAの症状の方が対象です。
この研究データでは次のようなことも示唆しています。
フィナステリド | ⇨ 前頭部と頭頂部の両方に作用 |
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ノコギリヤシ | ⇨ 頭頂部のみに作用 |
このように、ノコギリヤシは効果が出やすい部分が限定されるようです。
毛包の慢性炎症による脱毛症の改善
AGA(男性型脱毛症)の原因の1つとして、頭皮の毛包に起こる慢性炎症があります。
この炎症には5αリダクターゼの働きが関係しており、それに対しノコギリヤシの成分であるリポステロールとβ-シトステロールが有効である事が発見されました。
ノコギリヤシに含まれるこれらの成分には、5αリダクターゼの活性を阻害する他に、炎症物質のLTB4を抑制することで、AGAの予防に役立つとされています。
ノコギリヤシはAGAの治療に使える?
結果を見ると、ノコギリヤシはフィナステリドほどではないものの、薄毛改善に一定の薬効が期待できることが分かります。
ただし、日本ではノコギリヤシの研究は欧米ほど進んでいない段階で、しっかりとしたエビデンスはまだまだ不十分です。
ノコギリヤシには効果があるかも知れませんが、医薬品としては認められていないため, あくまでも予防を目的としたサプリメントとしてお考えください。
サプリメントを使ったセルフケアより、確実に薄毛を改善したい方は、当院で処方しているAGA治療薬を使った治療をお勧めします。
スマホがあれば簡単にご自宅で出来る、オンライン処方にも対応しています。 お悩みの方は、是非お気軽にご相談ください。
ノコギリヤシについて
【ノコギリヤシの特徴】
名称 | ノコギリヤシ(セレノアレペン、ソウパルメット、サバル) | |
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特徴 | 5αリダクターゼの働きを阻害。 枝の付け根にノコギリのようなギザギザがある。 果実に有効とされる成分が含まれる。 | |
効能 | 頻尿・排尿障害(前立腺肥大症)、薄毛改善、慢性骨盤痛、片頭痛、滋養強壮など | |
成分 | オクタコサノール、リポステロール、β-シトステロール、オレイン酸、ラウリン酸など | |
推奨量 | メーカー推奨量を確認(推奨量に違いあり) | |
副作用 | 副作用は特に無し。 ただし、推奨量より多く摂取すると、頭痛・腹痛・下痢・めまい・吐き気の症状が出る場合があります。 |
ノコギリヤシは、アメリカ南東部を原産とする低木のヤシです。
古くは男女の生殖障害をはじめ、さまざまな疾患のきっかけになる咳(せき)などに使用されてきました。
今ではノコギリヤシが持つ薬効についてわかりはじめているため、国によっては男性の前立腺肥大に伴う排尿症状、慢性骨盤痛、片頭痛、薄毛などに対して用いられています。
ただノコギリヤシの持つ薬効はいずれもエビデンスに乏しいことから、日本ではハーブの一種とされ、サプリメント(栄養補助食品)として取り扱われています。
つまり、健康の増進・維持を目的とするもので、すでに発症しているAGAの治療には有効とは言えません。
フィナステリドの見本となった植物?
AGA治療薬プロペシアの成分であるフィナステリドは、5αリダクターゼ阻害剤と呼ばれる薬の一種です。
5αリダクターゼ阻害剤は、前立腺肥大の改善に使われていたノコギリヤシの働きを元に開発された薬です。
フィナステリドも、もともと前立腺の肥大を抑えるために開発されていましたが、副効果としてAGA(男性型脱毛症)の改善が発見され、改めてAGA治療薬として開発された経緯があります。
そのため、ノコギリヤシが薄毛の改善に良いのは当然と言えます。
前立腺肥大症や排尿障害の改善
ノコギリヤシはヨーロッパでは前立腺肥大症のお薬として承認されており、イギリスのCochrane(コクラン)には2000年に前立腺肥大症への有効性が報告されています。
ただ最近になって行われたノコギリヤシを通常量の2〜3倍服用した試験では、前立腺肥大症や排尿障害への有効性は認められませんでした。
このように、ノコギリヤシは安定した治療効果を得るのが難しいものとお考えください。
現時点では前立腺肥大症や排尿障害があるのであれば、効果が定かではないサプリよりも、必要に応じてお薬を処方してもらうのが無難と言えます。
ノコギリヤシの服用方法
ノコギリヤシの服用方法についてですが、各メーカーの1日の摂取目安に違いがあります。
- 480mg / 日
- 320mg / 日
- 160mg / 日
など
メーカーにより推奨量が異なるため、必ずメーカー推奨量を確認してから服用するようにしましょう。
またサプリの形にも「錠剤」と「カプセル」が見受けられますが、服用方法については代わることはありせん。
ただカプセルは1粒が大きいものもあるので、飲み込むのが苦手という人は錠剤を選んでみると良いかもしれません。
ちなみにカプセルを噛んで服用すると口の中やノドを傷つける原因にもなるので、コップ1杯ほどの水またはぬるま湯で服用してください。
ノコギリヤシに副作用はない?
ノコギリヤシはサプリメント(栄養補助食品)なので、基本的には副作用がないとされています。
ただし必要以上に摂ると身体が受け付けず、その反応が症状となって現れる場合があります。
ノコギリヤシを過剰摂取すると体調にどんな変化が見られるのか、その症状について見ていきましょう。
過剰摂取は控える
薄毛をどうにか治したいという想いから、推奨量以上にノコギリヤシを摂取していると体調不良にみまわれ、以下の症状が現れる可能性があります
- 頭痛
- 腹痛
- 下痢
- 吐き気
など
また医薬品として使用されているヨーロッパ’(イギリス・フランス・ドイツ・イタリア)では、過敏症(アレルギー)の報告もあります。
人によってはサプリでも身体に合わないことがあり、これらの症状が現れることも十分に考えられます。
必要以上に摂取しないのはもちろん、自身の体調も加味しながら服用するなどの工夫も必要です。
ノコギリヤシの注意点
ノコギリヤシを他のお薬と併用し重大な健康被害が発生したという例はないものの、使用にはいくつか注意点があります。
安全に使用するためにも、以下でご紹介する注意事項を守りましょう。
プロペシアやザガーロとの併用は?
プロペシアやザガーロは、5αリダクターゼ阻害剤に分類されるお薬です。
ノコギリヤシも同じように5αリダクターゼを阻害するため、併用すると必要以上に薬の作用(副作用)を強めてしまうおそれがあります。
どんな薬でも、同じ薬を用量以上飲むのは過剰摂取となり、悪影響となります。
プロペシアやザガーロには、以下の副作用が報告されています。
- 男性機能の低下(性欲減退・勃起不全)
- 肝機能障害
これらの副作用が現れる割合は低いですが、稀に現れると覚えておきましょう。
もしAGA治療薬を使用している、あるいはこれから服用しようとしているのであれば、ノコギリヤシの服用は控えるか、医師にご相談ください。
ミノキシジルと併用は可能
同じAGA治療薬ではあるものの、ミノキシジルはノコギリヤシとの併用が可能です。
これはミノキシジルが異なる作用を持っているためです。
ミノキシジルの働き |
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ミノキシジルは、頭皮の毛細血管や発毛因子にアプローチすることで、発毛・育毛といった効果を発揮します。
何種類もお薬を使うことに抵抗がある人は、ミノキシジルを使いながらノコギリヤシで様子を見るのもいいかも知れません。
ノコギリヤシの使用に適さない方
ノコギリヤシを使う際のもう1つの注意点として確認しておきたいのが、使用に適さない方です。
もし他の病気を治療している人であれば影響する可能性もあるだけに、ノコギリヤシの使用前にご自身が該当しないかはチェックしておきましょう。
妊娠中や授乳中の女性
ノコギリヤシが持つ作用は、妊娠中やその可能性がある女性、授乳中の場合は使用に適していません。
AGAの原因であるDHTは、頭皮に増えれば厄介なホルモンですが、男子胎児の生殖器の発育には欠かないホルモンです。
胎児の生殖器発育にも影響を及ぼす可能性もあるので、念のため控えるようにしましょう。
ホルモン調整剤を服用中の方
ノコギリヤシは、女性が服用することで生理不順やPMS(月経前症候群)の改善効果も期待できます。
ただし、以下の方はノコギリヤシとの併用は控えてください。
- ホルモン補充療法(HRT)を受けている女性
- ピル(経口避妊薬)を服用中の女性
ノコギリヤシはホルモンに影響する作用があるため、併用により本来の治療効果を得られない場合があります。
抗血小板薬・抗血液凝固薬を服用中の方
ノコギリヤシには血液をさらさらにする効果があるとされ、特定のお薬との併用により一度出血すると止まりにくくなる可能性があります。
抗血小板薬 | ⇨ バイアスピリン、プラビックス など |
抗血液凝固薬 | ⇨ ワルファリン など |
いずれのお薬も血液の流れを止めないために必要なお薬になり、血栓症や塞栓の治療に用いられます。
ノコギリヤシとお薬の効果が相互作用を起こす危険性があるので、サプリであっても医師に使用している事をお伝えください。
ノコギリヤシの偽物に注意
ノコギリヤシは注目度が高いサプリメントなので、海外では偽物が出回っている可能性があります。
サプリメントの真贋の見分け方はとても困難で、専門的な機関による検査がないと分からないとされているほどです。
また医薬品と違い数多くのメーカーが製造販売を行っているため、ものによっては品質が問題視されているケースもあります。
もし偽物や低品質のものを購入した場合、全く別の成分が入っている、成分量が少ないなど期待する効果が得られないだけでなく、費用や時間も無駄になってしまいます。
なるべく、海外からの個人輸入などでの購入ではなく、国内で販売されているものを選びましょう。
確実な薄毛の改善はクリニックでの治療がおすすめ
セルフメディケーションの一環として、将来の薄毛予防のためにノコギリヤシを取り入れるのは問題ありません。
ただし、すでにAGAが発症し薄毛を自覚している人であれば、効果のはっきりしないサプリメントよりも、効果の確実なAGA治療薬を使う方が間違いありません。
AGAは進行性のため、不確かな効果を求めるよりも、医師に相談して適切に治療を行うのが望ましいと言えるでしょう。
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