重症のニキビ治療に効果的な薬「イソトレチノイン」について解説していきます。
イソトレチノインは、皮脂の分泌を抑え、毛穴のつまりを改善することで、ニキビを根本から治療する効果が期待できます。
この記事では、イソトレチノインの効果、副作用、服用方法や治療期間など、気になる情報を分かりやすくまとめました。
現在服用されている方も、これから服用を考えている方も参考になる情報を紹介しますので、ぜひ読んでください。
イソトレチノインとは
イソトレチノインは、重症のニキビや通常の治療で改善が見られない難治性のニキビに対して、効果的なニキビ治療薬です。
ビタミンA誘導体の一種であるレチノイドを主成分とした内服薬で、皮脂の分泌を抑制し、毛穴のつまりを改善することで、ニキビを根本から治療します。
1982年にFDA(米国食品医薬品局)から認可を受け、1983年に欧州委員会CEマークを取得しています。
米国皮膚科学会や欧州のガイドラインでは、中等度~重度のニキビに対して、高いレベルでの使用が推奨されています。
イソトレチノインは、13-シスレチノイン酸(13-cis-Retinoic Acid)とも呼ばれ、ビタミンA誘導体のレチノイドを主成分として作られています。
イソトレチノインの効果
皮脂腺を縮小し、皮脂の分泌を抑制する
ニキビを発症する主な原因の1つは皮脂の過剰分泌によるものです。
イソトレチノインは、皮脂腺を縮小(退縮)させる作用があるため、皮脂の分泌量を抑制することができます。
その結果、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を防ぐため、ニキビの悪化を抑え、新しいニキビの予防にも繋がります。
角化の異常を抑制し、毛穴の詰まりを改善する
ニキビを発症する主な原因のもう1つは毛穴の詰まりによるものです。
角化に異常を起こすと、皮膚の外側にある角質に厚みが出て硬くなることによって、毛穴に皮脂が詰まりやすくなります。
イソトレチノインは、角化異常を抑制し、正常に整えることによって、毛穴の詰まりを防ぐことによってアクネ菌の増殖を抑えることができます。
抗炎症作用でニキビの赤みを改善する
ニキビのある肌では、免疫がアクネ菌を排除しようし、過剰に免疫反応が働くと炎症を生じます。
イソトレチノインには、過剰な免疫反応を正常にし、ニキビの炎症やそれに伴う赤みを鎮静する抗炎症作用があります。
ニキビ跡を改善する効果はないものの、炎症の伴うニキビの場合はニキビ跡になりやすいことも少なくないため、早期の服用でニキビ跡を予防することが期待できます。
イソトレチノインの治療期間・服用量
通常、イソトレチノインは、体重1kg当たり1日0.5~1mgを約4~6ヵ月間服用します。
欧州のガイドラインでは、体重1kg当たりの1日の推奨服用量は0.3~0.5mg、最低6ヵ月間の服用を推奨しています。
米国のガイドラインでは体重1kg当たりの1日の推奨服用量は1mgまでが推奨され、治療期間は約4~6ヵ月ほどです。
【体重50kgの場合】
体重1kg当たり0.5mgを服用する場合、1日25mgの服用が推奨されます。
しかし、25mgのカプセルはないため、健康状態やニキビの症状に合わせて20mg、または30mgの服用となります。
【体重70kgの場合】
体重1kg当たり0.5mgを服用する場合、1日35mgの服用が推奨されます。
しかし、35mgのカプセルもないため、健康状態やニキビの症状に合わせて30mg、または40mgの服用となります。
体重以外にも、ニキビの重症度などで処方される量は変わります。
そのため、医療機関を受診し、医師にご相談ください。
イソトレチノインの効果的な飲み方
イソトレチノインは脂溶性のため、脂肪分と一緒に吸収されていきます。
そのため、脂肪分を含む食べ物や飲み物を摂取した後に服用すると効果的に成分を体内へと吸収することができます。
イソトレチノインの特徴
イソトレチノインには、服用前に知っておくべき特徴がいくつかあります。
イソトレチノインの好転反応
イソトレチノインの治療初期に、一時的にニキビが増えたり、悪化することがあります。
これは好転反応と呼ばれ、イソトレチノインの作用で肌のターンオーバーが促され、角栓や皮脂が押し出されることで起こる現象です。
イソトレチノインの効果が現れ始めている状態であり、自己判断で治療を途中で辞めずにどうしても気になる場合は医療機関に相談しましょう。
好転反応は数週間から1ヵ月ほどで落ち着くことが多いです。
難治性ニキビや繰り返しニキビの方に効果的
イソトレチノインは重度のニキビだけではなく、今まで様々な塗り薬や飲み薬を試して効かなかったニキビにも有効な治療薬です。
またニキビの原因を根本から治療するため、大人になっても繰り返してしまうニキビにも効果的です。
イソトレチノインを辞めた後のニキビの再発率
イソトレチノインは繰り返してしまうニキビに効果があるため、決められた量と期間の服用をすれば、治療後のニキビの再発を防ぐことができます。
再発を防ぐための服用量と服用期間は体重から計算でき、体重1kg当たり、イソトレチノインの積算量が120mg~150mgで再発しにくくなると言われています。
【イソトレチノインでニキビの再発を防ぐ計算式】
服用期間(日) = 必要な積算量(mg) ÷ 1日の服用量(mg)【体重50kgの例】
1日20mgを服用する場合、必要な積算量は6000mg~7500mgとなるため、300日(約10ヵ月)~375日(約1年1ヵ月)の服用で治療後のニキビの再発を防ぐことが期待できます。
【体重70kgの例】
1日40mgを服用する場合、必要な積算量は8400mg~10500mgとなるため、210日(約7ヵ月)~262日(約9ヵ月)の服用で治療後のニキビの再発を防ぐことが期待できます。
※体重1kg当たり、イソトレチノインの積算量が120mgは最小限の量です。
また150mg以上を服用したからといって、ニキビがより再発しにくくなるというデータはありません。
イソトレチノインは保険適用?
イソトレチノインは欧米を始めとした諸外国では、難治性の重症ざ瘡に対する高い効果が認められ、保険適用で処方されています。
しかし日本国内では厚生労働省の承認が得られていないため、保険が適用されていません。
イソトレチノインの保管方法
イソトレチノインの保管方法は以下の通りです。
- 直射日光が当たらない場所
- 25度以下の涼しい場所
- 湿度が低い場所
- できるだけ涼しい場所
- 小さなお子様の手が届かない場所
イソトレチノインの入手方法
イソトレチノインは医師の診察が必要なため薬局などで市販されていません。
そのため医療機関を受診して、医師の診察を受けた上で処方される必要があります。
個人輸入する方法もありますが、偽造薬の危険性や届くまでに10日~2週間ほどの日数がかかる不便性の他、副作用もあるため、個人輸入ではなく医療機関を受診した上で使用してください。
厚生労働省のHPには、イソトレチノインをインターネットや個人輸入で入手しないように米国FDAから注意喚起が出ている邦訳文が掲載されています。
イソトレチノインの種類
イソトレチノインの先発薬はスイスの製薬会社ロシュから出ている「アキュテイン(ロアキュテイン)」ですが、数多くの製薬会社からジェネリック医薬品(後発薬)が販売されています。
先発薬と後発薬の成分に違いはなく、イソトレチノインを主成分として製造されています。
後発薬は商品開発のコストがかからないため、成分は同じでも比較的安価で購入することができます。
アキュテイン | ロアキュテイン | アムネスティーム | イソトレノム | アクネトレント | イソトロイン | ソトレット | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
英語表記 | ACCUTANE | ROACCUTANE | AMNESTEEM | ISOTRENOM | AKNETRENT | ISOTROIN | SOTRET | |
カプセル(用量) | 10mg 20mg 40mg |
10mg 20mg |
20mg | 20mg 40mg |
||||
製薬会社 | ロシュ(スイス) | マイラン(アメリカ) | Naiom Healthcare(インド) | レコルダティ(トルコ) ※本社イタリア |
シプラ(インド) | ランバクシー(インド) | ||
先発薬/後発薬 | 先発薬(米国内の商品名) | 先発薬(欧州内の商品名) | 後発薬 |
ここに掲載のある商品名以外にもイソトレチノインを主成分とした後発薬はたくさんあります。
イソトレチノインの副作用
イソトレチノインの副作用として報告されている主な症状は以下の通りです。
- 胎児の奇形、流産、死産、早産
- 鬱、精神病(幻覚、幻聴)、自傷行為、自殺企図などの重大な精神疾患
- 皮膚や粘膜の乾燥
- 頭痛
- 目のかすみ
- めまい
- 吐き気
- 嘔吐
- 脳卒中
- 下痢
- 筋力低下
- 肝機能低下
- 脱毛
- 発疹
- 鼻出血
イソトレチノインは、重大な副作用を発症する場合があります。
個人輸入などは利用せずに、必ず医療機関を受診の上、服用をしてください。
イソトレチノインの飲み合わせ│併用禁忌薬・注意薬
イソトレチノインは以下の薬剤とは併用できません。
- テトラサイクリン系の抗生物質(ビブラマイシン、ミノマイシンなど)
- サプリメントを含むビタミンA製剤
イソトレチノインは以下の薬剤との併用に注意する必要があります。
- カルバマゼピン
イソトレチノイン服用期間中の頭痛や筋肉痛、関節痛が起きた場合のアセトアミノフェンやイブプロフェンの併用は問題ないとされています。
しかし、筋肉痛や関節痛の原因が激しい運動によるものであれば、服用期間中の激しい運動は控えましょう。
上記に記載のある併用禁忌・併用注意薬以外の処方薬や市販薬を服用する場合であっても、事前に医師や薬剤師にイソトレチノインを服用していることを伝え、相談の上、服用をしてください。
イソトレチノインを服用できない方
イソトレチノインを服用できない方は以下の通りです。
- 妊娠を希望されている方、妊娠中または妊娠している可能性がある場合、胎児に先天異常、流産、早産、死産を引き起こす可能性があるため服用できません。
- テトラサイクリン系の薬剤を服用している方
- ピーナッツまたは大豆アレルギーの方(アレルギーの重症度によっては服用可能な場合があるため、医療機関にご相談ください。)
- 夜間の視力を必要とする職業の方(イソトレチノインは夜間の視力を低下させる可能性があるため、運転手の方などは注意が必要です。)
妊娠を希望される場合、イソトレチノインの服用終了後、1ヵ月後からであれば薬の影響を受けません。
服用期間中、または服用終了後1ヵ月以内に性行為をする場合は、必ず避妊を行ってください。
万が一、避妊をせずに性行為を行い不安な場合は、アフターピルの服用が必要です。
速やかに医療機関を受診してください。
イソトレチノインの服用中に注意すること
イソトレチノインの服用期間中に注意するべきことは以下の通りです。
- 処方を受けた本人のみが服用可能です。他の人に渡さないでください。
- カプセルは潰したり割ったりせずに、そのまま飲み込んでください。
- 服用中、または服用終了から1ヵ月間は献血をしないでください。(女性への輸血により胎児に影響が出る可能性があります。)
- 多量のアルコールを摂取すると、効果が低下するため注意してください。
- 日焼けをする可能性が高まるため、SPF30以上の日焼け止めを塗り、できるだけ衣服や帽子、サングラスで紫外線を浴びないようにしてください。
- 脱毛は服用期間中、服用終了後6ヵ月間は推奨されていません。傷跡や皮膚の炎症などを引き起こす可能性があります。
脱毛にも様々な種類の機器や方法があるため、気になる場合は医療機関にご相談ください。
まとめ:イソトレチノインを服用する場合は医療機関を受診しよう
イソトレチノインの効果や副作用、効果的な服用方法や治療期間などを解説しました。
イソトレチノインは、好転反応などで一時的に悪化する場合もあるため、怖いという印象を抱く方もいますが、それは効果が出てきている状態です。
アメリカでは、1982年にFDA(米国食品医薬品局)から認可を受け、ヨーロッパでは1983年に欧州委員会CEマークを取得しているニキビ治療薬です。
必要以上に怖がらずに、医療機関を受診し、正しい知識を持って治療を進めましょう。
よくあるご質問
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- Q
イソトレチノインを服用すると、ニキビ跡は改善しますか?
- A
すでにできてしまったニキビ跡に対しては、直接的な改善効果は期待できません。
しかしニキビの炎症や、新しいニキビの発生を抑制する効果があるため、新たにできるニキビ後の予防に繋げることができます。
- Q
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- Q
イソトレチノインは肝臓に負担がかかりますか?
- A
イソトレチノインの副作用として、まれに肝機能に異常が出る場合があるため、医師の指示に従い、適切な服用をすることが大切です。
- Q
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- Q
イソトレチノインを服用すると頭痛が起きることはありますか?
- A
イソトレチノインの副作用として、頭痛が報告されています。
頭痛がひどい場合は、アセトアミノフェンやイブプロフェンの服用や、場合によっては医師に相談しましょう。
- Q
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- Q
イソトレチノインを服用すると、ニキビが悪化するというのは本当ですか?
- A
イソトレチノインを服用し始めた初期に、一時的にニキビが悪化する「好転反応」と呼ばれる現象が起こることがあります。
これは、薬の効果によって皮膚のターンオーバーが促進され、毛穴の中に溜まっていた古い角質や皮脂が排出されるためです。通常、数週間で落ち着きます。
- Q
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- Q
イソトレチノイン服用中のスキンケアはどうすればいいですか?
- A
イソトレチノインは皮膚を乾燥させる作用があるため、保湿を十分に行うことが大切です。
低刺激性の保湿剤を選び、こまめに塗って乾燥を防ぎましょう。
また、日焼け止めも忘れずに使用し、紫外線から肌を守りましょう。
- Q