
ニコチン依存症とは麻薬に劣らない依存度のニコチンが原因でタバコをやめられない症状です。 ニコチン依存症はれっきとした病気であり、依存症を抜け出すには禁煙治療が必要となります。
このページではニコチン依存症についての解説に併せ、喫煙のデメリットと依存度に合わせた禁煙方法や、禁煙がもたらす効果についても解説します。
ニコチン依存症とは

ニコチン依存症とはタバコを吸うことで起こる依存症で、治療が必要な精神疾患です。
ご自身の意思が弱いからタバコをやめられないのではありません。
喫煙によって依存物質であるニコチンが数秒で脳に到達し快感物質を放出させます。
この快感を再度得るため次の一本が欲しくなるという喫煙習慣の悪循環に陥ります。
ニコチン依存症は病気であるため禁煙の意思や希望だけで治療することは難しく、多くの方は禁煙治療が必要となります。
- ドーパミン
⇒ニコチンによって放出される。喫煙と快感を結びつける。 - ノルエピネフリン
⇒ニコチンによって放出が促進される。依存症の離脱症状のイライラや集中力低下をもたらす。 - セロトニン
⇒ニコチンによって分泌するのに慣れてしまうと自分で分泌する能力が低下する。そのため禁煙で一時的に分泌量が低下するとイライラや不安感をもたらすが、禁煙の継続で回復する。 - アセチルコリン
⇒ニコチンとアセチルコリン受容体が結合することでドーパミンが放出される
また、ニコチン依存症は3つの依存からなっています。

これらの要素が複合して禁煙をより難しいものにしています。
ニコチン依存症の症状
ニコチン依存症の症状は以下のとおりです。
- 初期症状
⇒タバコの本数が増える、タバコが吸えない場所や仕事を避ける、本数を減らすと怒りっぽくなる - ニコチン依存症の主な症状(離脱症状)
⇒イライラ、神経質、憂うつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、手の震え、脈が遅くなる、食欲食欲亢進亢進 - 常習喫煙者の症状
⇒喫煙後30分ほどでニコチン切れの離脱症状を起こす
何本からがニコチン依存症か
ニコチン依存症と判定される正確な本数は算出されていませんが、禁煙治療の基準として、「1日の喫煙本数x喫煙年数」が200を超えるかが基準とされます。
上記はブリンクマン指数と呼ばれる算出方法で、個人差や体質の違いはありますが400以上で肺がんリスクが上昇し始めるとされます。
依存症の症状が出る時間
ニコチン依存症の症状が出る時間に関しては、個人差はありますが、喫煙をやめて2~3時間ほどで依存症(ニコチンの離脱症状)が起こります。
この離脱症状は禁煙中も続きますが、1日~4日がピークで、その後3~4週間以内に収まっていきます。
離脱症状の期間とピークについて
また、ニコチンが体内で作用する時間に関して、タバコを吸って約7秒でニコチンが吸収されてイライラや不安の解消といった作用が起こります。
このため脳が喫煙の快感を認識するため、ニコチン依存症に陥ります。
ニコチンの依存度の強さ
依存性のみでいうと、タバコは大麻やアルコールよりも依存性が高く、嗜好品というより薬物に近い依存性があります。
薬物(合法・非合法)の依存度 | |
---|---|
薬物名 | 依存性スコアの平均値 |
ヘロイン | 3.00 |
コカイン | 2.39 |
タバコ | 2.21 |
アルコール | 1.93 |
アンフェタミン(覚醒剤) | 1.67 |
マリファナ(大麻) | 1.51 |
【出典】Nutt D, et al. Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse. Lancet 369:1047-53,2007.
喫煙によるデメリット
喫煙のデメリットとして最も深刻なのが健康面への悪影響です。
そればかりか、経済面、社会面にも影響を及ぼします。
歯の黄ばみといった見た目のマイナス面や口臭など細かいものも含めると、デメリットは多岐にわたります。
がんリスクの増加
タバコには70種類とも言われる発がん性物質が含まれています。
実際、タバコによるがんの増加は過去多くのデータが証明しています。
ある研究報告では日本でがんになった人のうち、男性の約24%と女性の約4%がタバコが原因であるとされます。
肺がんをはじめ、口腔がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頚がんといったがんは喫煙によりリスクが増大します。
心筋梗塞や脳梗塞の重大な危険因子
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加といった作用を起こします。
また、動脈硬化を進行させ血栓ができやすくなることから、心筋梗塞や脳血管障害を引き起こすリスクが増加します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な原因が喫煙です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はタバコの煙や粉塵を長年吸引することで肺に炎症が起き、気管支の通り道が狭くなり呼吸機能が低下する病気です。
- COPDの患者の90%が喫煙者
- 1日の喫煙本数や喫煙年数が多いほどCOPDリスクは増大
- 自覚症状がわかりにくいためゆっくり進行する
- 主な症状は咳やたん
- 重症化を招く恐れがあり、進行すると呼吸困難、意識障害、最悪の場合死に至る
- 風邪やインフルエンザウイルスによって症状が急激に悪化する場合がある
メンタルヘルスの悪化
喫煙が気分転換や快感につながるのも確かですが、実は喫煙がストレスを増加させることがわかっています。
英国で行われた調査によると、うつ病や不安障害経験者が非喫煙者の10%、禁煙を実行した人の11.3%に対して、喫煙者は18.3%に上ったことが報告されています。
たばこが原因となるその他の深刻な病気
たばこが原因となるその他の深刻な病気として、糖尿病、関節リウマチ、失明、白内障、バージャー病なども報告されています。
受動喫煙の健康被害
喫煙者が吐き出す煙(副流煙)を吸い込む受動喫煙は、喫煙者自身よりも健康被害が大きいとも言われます。
その理由は副流煙のほうが主流煙よりも高濃度の有害物質が含まれるためです。
主流煙と比較した副流煙に含まれる有害物質含有量
有害物質 | 主流煙に 含まれる量 (相対値) |
副流煙の方が多い割合 (目安) |
---|---|---|
ニコチン | 1 | 約2.6倍 |
タール | 1 | 約3.4倍 |
カドミウム | 1 | 約3.6倍 |
一酸化炭素(CO) | 1 | 約4.7倍 |
アンモニア | 1 | 約46倍 |
ホルムアルデヒド | 1 | 約6~121倍 |
ニトロソアミン類 | 1 | 約19~129倍 |
- 健康被害
目のかゆみ、鼻づまり、頭痛といった軽症から、肺がん、虚血性疾患、呼吸器疾患の悪化、脳卒中などの重症、乳幼児突然死症候群など。 - 三次喫煙
副流煙が付着した家具、衣服などから有害物質を吸い込むリスクがある
受動喫煙のリスクについては以下のページで詳しく解説しています。 受動喫煙のリスクについて
経済的デメリット
喫煙による経済的デメリットの例を挙げると、代表的なタバコ代で1日1箱でも年間約20万円以上の損失となります。
経済的損失はタバコ代だけではなく、タバコの臭いがついてしまった衣服の洗濯代の増加や、喫煙を原因とする病気の医療費、タバコからの引火で火災を起こしてしまい莫大な損害が出るといったこともあります。
社会的デメリット
喫煙はタバコ休憩の離席や体調不良など、労働生産性の低下といった社会的デメリットも指摘されています。
社会の大きな枠組みでも、喫煙に関わる医療費の増加や環境汚染、未成年の喫煙による将来の健康被害の増大、低所得者層の喫煙率の高さも格差や更なる経済困窮へとつながっています。
ニコチン依存度に応じた禁煙方法
ここからはニコチン依存度に応じた禁煙方法を紹介します。
そのために自分に合った禁煙方法を知る基準として、「TDS(Tobacco Dependence Screener)」と呼ばれるニコチン依存度テストを使えば、10個の問いに当てはまるものを選択するだけで依存度を判定できます。
タバコ依存症スクリーニングテスト(TDS) | |
---|---|
自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがある | |
禁煙や本数を減らそうと試みてできなかったことがある | |
禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがある | |
禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがある (イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) |
|
上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがある | |
重い病気にかかって、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがある | |
タバコのために健康問題が起きているとわかっていても吸うことがある | |
タバコのために精神的問題が起きているとわかっていても吸うことがある | |
自分はタバコに依存していると感じることがある | |
タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かある |
もし5点以上であれば、「ニコチン依存症」です。
自力での禁煙が難しく、1日の喫煙本数が多いほどつらい離脱症状も出やすくなります。
(ニコチン依存症)飲み薬で禁煙
ニコチン依存症の場合、禁煙成功率が最も高いとされているのは、飲み薬のチャンピックスです。

何も使わず禁煙するのに比べて3.1倍の禁煙成功率があります。 チャンピックスは離脱症状を抑えるほか、ニコチン製剤にはない「タバコをおいしくなく感じさせる機能」があり、禁煙がグッとやりやすくなる禁煙補助薬です。
さらに、チャンピックスはニコチン成分を含まないため、循環器疾患のある方でも使用しやすい特徴があります。
- 1日1箱以上吸うヘビースモーカー
- パッチやガムなどの禁煙補助薬で禁煙に失敗した人
- ニコチンを含んでいない薬を求める人
- 自力での禁煙が難しいと感じる人
チャンピックス処方の詳細は以下をご覧ください。 チャンピックスの通販(オンライン診療)
(ニコチン依存症)飲み薬で禁煙
軽度のニコチン依存には、ニコチンパッチ・ガムなどのニコチン製剤による禁煙方法があります。
ニコチン製剤は、ニコチンを少量摂取することで離脱症状を抑えながら禁煙を目指します。
ただし、チャンピックスのような「タバコをおいしくなく感じさせる効果」はありません。
ニコチンパッチ |
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![]() |
ニコチンパッチが向いている人
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ニコチンガム |
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ニコチンガムが向いている人
|
第一類医薬品のため、市販薬として購入が可能です。ただし市販薬は成分量が少ないため、重度のニコチン依存症の場合は、医療機関で処方される成分量の多いものをご利用ください。
なお、フィットクリニックではニコチン製剤の取り扱いはないためご了承ください。 ニコチンパッチとガムの詳細
ライトスモーカー・ミドルスモーカーの方で、ニコチン製剤を使用してもタバコをやめにくい場合は、是非チャンピックスジェネリックを利用してみましょう。
(依存症の可能性)自力で禁煙
自力で禁煙に挑戦する場合は、物理的な対策と精神面で対策が必要になります。
- 離脱症状の対処法を決める
- 喫煙の代替行動を知っておく
- 喫煙具を処分する
- 身近な人に禁煙を宣言する
「薬に頼るほどではない」「まずは自力で禁煙してみたい」という方におすすめです。
ただし、自力での禁煙は成功率約10%とされており、失敗する人がほとんどといわれています。
ニコチン依存が強い場合は、自力より3倍成功率が高い禁煙補助薬での禁煙も検討してみましょう。
禁煙がもたらす効果
禁煙はあらゆる面で良い効果をもたらします。
自身の健康はもちろん、家族や周囲にも多くのメリットがあります。
ここからは、健康状態、経済面、日常生活と項目を分けて解説します。
健康効果
禁煙の健康効果には、見た目の変化や病気のリスク低下が期待できます。
見た目の変化
禁煙を続けていると、見た目に嬉しい変化が現れるようになります。
禁煙による見た目の変化 | |
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肌のトーンアップ 血の巡りが良くなり、健康的な肌色に近づく |
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シミやたるみの改善 喫煙によるビタミンCの破壊を防ぐことで、肌にハリや弾力が生まれる |
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髪質の改善 ハリ・コシが戻り、キューティクルが回復することでツヤが出る 白髪の改善 |
タバコには肌を老化させる作用があるため、スモーカーズフェイスと呼ばれる目じりや口元のしわ・まぶたのたるみ、歯や歯茎の着色、口臭、顔色の悪さなど喫煙者特有の老化した顔になります。
禁煙することで、タバコによる老化スピードを抑え、口腔内の環境や顔全体の印象の改善にも繋がります。
もちろん老化は、誰もが避けて通れない道です。
しかし、「喫煙による老化」に限っては、ご自身の意志で食い止められるものだと覚えておいてください。
タバコヤニによる歯の黄ばみについて
病気のリスクの低下
禁煙直後からタバコによる体へのダメージは回復に向かい、禁煙わずか1日でも病気のリスクは低下していきます。
直後 | 大切な人の受動喫煙リスクがなくなる。 |
---|---|
20分後 | タバコによって収縮していた血管が元に戻り、血圧や脈拍が正常値に下がり、体温も上がる。 |
8時間後 | 血液中の酸素濃度が上がり、呼吸が楽になる。 |
24時間後 | 心臓発作のリスクが低下する。 |
数日後 | 味覚や嗅覚、胃の働きも正常になり、体も軽くなる。 |
2週間〜 3ヶ月後 |
循環機能(心臓や血管)が改善される。 |
1ヶ月〜 9ヶ月後 |
せきや喘息の改善しスタミナが戻る。免疫機能が回復する。 |
1年後 | 肺機能の改善がみられる。 (軽度あるいは中等度の慢性閉塞性肺疾患がある人) |
2〜4年後 | 虚血性心疾患のリスクが、吸い続けた場合と比較して35%減少。脳梗塞のリスクも明らかに低下する。 |
5〜9年後 | 喫煙者と比較して肺がんリスクが明らかに低下する |
10〜15年後 | さまざまな病気のリスクが非喫煙者のレベルに近づく。 |
イギリスタバコ白書「Smoking Kills」,1998 / IARCハンドブック11巻, 2007より
この他にも寝起きや寝つきの良さ、口臭など、喫煙者だったからこそわかる体の変化も感じられるようになります。 受動喫煙のリスクについて
EDの改善
禁煙することで間接的にEDの改善につながる場合があります。
喫煙は、勃起機能に次のような悪影響を与えることが知られています。
喫煙による勃起機能への影響 | |
---|---|
血管内皮障害 | NO(一酸化炭素)の産生が低下し、血管が収縮しやすくなる |
交感神経の 刺激 |
交感神経が優位な状態が勃起を難しくする |
血流障害 | 陰茎内を十分な血液で満たせなくなる |
タバコに含まれるニコチンには、末梢血管を収縮させる作用があります。
陰茎の血管は1〜2mmと非常に細い末梢血管のため、血流の妨げが起きると思うような勃起や維持が困難になります。
このように、喫煙はEDのリスクの1つに数えられ、欧米やアジア各国で行われた研究では、非喫煙者のおよそ1.5倍以上のリスクがあるとされています。
ただし、喫煙はあくまでもEDの原因の1つとして考えられており、必ずしも禁煙だけで改善するわけではありません。
EDの改善には、禁煙も含めたED治療に取り組む必要があります。
早産や低出生体重児のリスクが低下
妊娠中の喫煙は母親の健康状態への悪影響だけでなく、受動喫煙によるさまざまなリスクが胎児にまで及びます。
タバコに含まれているニコチンや一酸化炭素は、お腹の中を低酸素状態にし、胎盤が変化することで、早産や低出生体重、周産期死亡などにつながる原因となります。
また、胎児への直接的な影響としては、次のようなことがあげられます。
- 発育・発達遅延
- 小児がん
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
妊娠前に禁煙すれば、平均出生体重は非喫煙者の妊婦とほぼ同じになります。
また、妊娠早期に喫煙していた場合でも、妊娠3〜4ヶ月までに禁煙すれば、早産や低出生体重、周産期死亡のリスクも低下します。
喫煙期間が長かったとしても、この期間中に禁煙が出来れば問題ないので、ご安心ください。
経済面の効果
禁煙による経済効果は、タバコ代の削減だけでなく、時間の節約や保険料が安くなります。

タバコ代 |
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1日1箱600円と仮定すれば、1ヶ月(30日)で18,000円。 1年間(365日)で219,000円の節約になります。 |
喫煙時間 |
1本の喫煙に5分かかるとすれば、1日1箱計算で100分。 1ヵ月(30日)で、3000分(50時間)になります。 1年間続けると36500分(609時間)、日に換算すれば約25日と8時間の節約になります。 |
また、厚生労働省のデータによると、禁煙期間5年未満の人と10年以上の人の年間医療費は81,800円もの差がありました。

タバコを吸うことで、これだけの出費と時間が発生しています。
年間に換算すると大きな数字になるため、このお金と時間を好きなことに費やせば、生活の豊かさや充実度も大きく変わるでしょう。
また、タバコによって病気を患ってしまうと、医療費や通院・入院のための時間がさらにかかってしまいます。
お金も時間も有限です。限られた中で将来設計を立てる上では、禁煙による経済効果はとても大きいと言えます。
禁煙すると保険料が安くなる
禁煙すると保険料が安くなることも経済的なメリットのひとつです。
タバコを吸っていると統計的に病気になるリスクが高まり、なかには命に関わる場合もあります。
そのため、喫煙者の医療保険・生命保険は非喫煙者に比べ割高になっているのです。
一方で、保険会社が定める基準のひとつに「健康体」というのがあり、タバコを吸わない非喫煙者であれば保険料が割り引かれます。
-
非喫煙者料率
過去1年ないし2年間、タバコを吸っていなければ通常より保険料率が下がる -
優良体料率
BMIや血圧、血液などの数値が正常値となると保険料率が下がる
2つどちらにも当てはまれば「非喫煙優良体」として、さらに保険料率が下がります。
割引率は保険会社によっても異なりますが、健康でいること自体が節約につながります。
禁煙治療の保険適用について
生活面での効果
喫煙で心身のコンディションが整うと日々の生活にも多くのプラスの変化が訪れます。
- 目覚めや寝つきがよくなる
- 寝起きの口臭が抑えられる
- 咳や息切れの改善
- 夜中に目が覚めにくくなり、睡眠の質が向上する
- 味覚、嗅覚が回復する
- 胃腸のコンディションが良くなる
- 自然な空腹を感じられるようになる
- 受動喫煙がなくなり家族や周囲の不快感、健康被害が減少する
- 体臭や家の不快なにおいがなくなる
- 喫煙者というネガティブなイメージがなくなる
生活のリズムの向上をはじめ、禁煙によって人間関係が良好に働く場合もあります。
また、味覚、嗅覚の回復と口寂しさ、禁煙ストレスの解消から、禁煙すると太る場合があります。
通常は2〜4kgほどの体重増加が見られるため、禁煙で太らないためには食生活のコントロールや運動が必要です。
ただし、禁煙とダイエットを同時に行うのは負担が大きいため、ダイエットをするのであれば、禁煙が安定してくる6〜8週以降がおすすめです。
仕事面での効果
禁煙すると集中力の向上や周囲の評価など、仕事面でもさまざまなメリットがあります。
- 集中力の向上
- 仕事の効率が上がる
- ニコチン依存を乗り越えることで自分に自信が持てる
1時間に1本5分程度のタバコ休憩をはさむと、8時間の就業時間の中で40分は時間を無駄にしている計算になります。
タバコを断ち切ればそんな時間がなくなるため、仕事に対する集中力や効率アップにつながるでしょう。
また、禁煙に挑戦するとニコチン依存度によっては、イライラや不安感などの離脱症状が現れる場合があります。
しかし、手強いニコチン依存を乗り越えられた先には、そのまま自信に繋がるはずです。
さらに、タバコが吸えないイライラから脱却すれば、精神的な余裕を取り戻し、周囲の印象も変わるでしょう。
最近では、海外だけでなく国内でも「タバコを吸う人=自己管理ができない」と評価する企業もあるようです。
タバコに対してネガティブなイメージが強い現代社会で生きづらさを抱えないためにも、禁煙によるメリットは大きいと言えます。
【独自調査】禁煙経験者の失敗した理由
当院が独自に行ったアンケート調査では、以下のような結果が出ています。

禁煙に失敗した人に行った調査では、禁煙の失敗理由として「周りの喫煙者の影響」が55.5%を占め、最も多い結果となりました。
依存性の強さだけではなく、周囲の環境も禁煙の失敗に大きく関わっていることがわかります。
なお、禁煙に成功した人に行った調査では、禁煙に成功した理由として以下の項目が上位となりました。
【独自アンケート】禁煙経験者の成功した理由
1位 自制心が強かった(60.5%)
2位 薬やパッチ、ガムなどのサポート(30.5%)
3位 周りの協力があった(21.0%)
禁煙には「今度こそ禁煙を成功させよう」という強い意志も大切ということが、調査結果にあらわれています。 禁煙に関するアンケート
禁煙成功でニコチン依存症を抜け出すコツ
禁煙を成功させる実践的なコツとして、「決心」・「実行」・「維持」の3つのサイクルを計画的にこなしましょう。
決心 |
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実行 |
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維持 |
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禁煙の第一歩として、まずは「禁煙する!」と決心しましょう。
決心した後は、「禁煙に成功している自分」よりも「禁煙するまでのプロセス」をイメージすることが大切です。
禁煙に成功しているイメージだけでは、禁煙した気分になって終わってしまうことも多いです。
次に紹介する具体的な実践法を参考に、禁煙までのプロセスを明確にしていきましょう。
なぜ禁煙したいかをはっきりさせる
禁煙に取り組む前に、まず「タバコをやめたい理由」をはっきりさせる必要があります。
ゴールが定まっていれば、モチベーションの維持につながり、タバコに手を伸ばすきっかけを防ぐことができます。
- 病気で苦しみたくない
- タバコ代を貯金に回したい
- 子供や家族のため
- タバコによる見た目の変化や口臭が気になる
パートナーの妊娠など、自分のためだけでなく誰かのために禁煙を始める方も多いようです。 受動喫煙のリスク
禁煙計画を立てる前段階として理由を明確にしてみましょう。
運動や歯を磨くなど吸いたい時の対処法を身に着ける
禁煙中に吸いたい気持ちが起きたときの対処法を身に着けることが、禁煙を成功に導くポイントになります。
代替行動
- 深呼吸する
- 冷たい水やお茶を飲む
- ガムやアメ、フリスクなどを噛む
- 散歩など軽い運動を挟む
- 喫煙所に近づかない
- コーヒーやアルコールなどタバコを連想させるものを避ける
特に禁煙スタートから3日以内のピーク時は辛く、このタイミングで挫折する方も少なくありません。
「吸いたい!」と思った時の対処方法を実践してみると、うまく紛らわせることができます。
離脱症状の対処法について
禁煙補助薬を利用する
喫煙補助薬を利用することで、自力での禁煙にくらべて3〜4倍禁煙しやすくなるとされています。
禁煙中に起こる離脱症状をやわらげるため、日常生活への支障が出にくく、一度の治療でタバコ離れしやすくなります。
自力で禁煙が難しいと感じていたり、失敗した経験がある方は、医師または薬剤師と相談しながら自分にあった禁煙補助薬を利用してみてください。
禁煙補助薬について
ニコチン依存症のまとめ
最後にニコチン依存症と禁煙方法について、このページの内容をまとめてお伝えします。
- ニコチン依存症とはタバコを吸うことで起こる依存症で、治療が必要な精神疾患
- ニコチン依存には、「身体的依存」「心理的依存」「習慣的依存」がある
- ニコチン依存症は病気であるため多くの方は禁煙治療が必要
- 禁煙治療の基準として、「1日の喫煙本数x喫煙年数」が200を超えるかが基準
- 禁煙方法には飲み薬・ニコチン製剤の使用、自力での禁煙がある
- 薬を使えば、自力よりも禁煙成功率が2~3倍に高まる
- 自力で禁煙するなら環境・習慣(行動)を見直すことが大切
- 禁煙すると見た目の変化や病気のリスクが低下する
- 禁煙による経済効果は、タバコ代だけでなく、時間や保険料の節約になる
- 禁煙は日常生活や仕事、家族や周囲にも良い影響を与える
タバコは「百害あって一利なし」と言われるとおり、吸い続けることにメリットはなく、喫煙歴が長くなるほどニコチンへの依存を強めてしまう場合があります。
少しでも楽に禁煙を成功させるためにも、この機会に禁煙に挑戦してみてください。
よくある質問
-
- Q
成功率の高い禁煙方法はなんですか?
- A
成功率の高い禁煙方法は、飲み薬(チャンピックス)による禁煙です。
- Q
-
- Q
なぜ飲み薬での禁煙治療がおすすめなのですか?
- A
チャンピックスには離脱症状を抑え、タバコをおいしくなく感じさせる効果があるため、他の禁煙方法よりもスムーズに禁煙を進めることができます。
ただしチャンピックス先発薬は現在出荷停止中のため、ジェネリック薬を使う必要があります。
- Q
-
- Q
自力で禁煙する方法はありますか?
- A
例として、以下の方法があります。
- 吸いたくなった時に代わりに取る行動を決めておく
- 周囲に禁煙宣言をする
- タバコやライターを処分する
そのため禁煙補助薬などと併用して上記の対応をするのが望ましいです。
タバコを吸いたい時どう我慢するかなどについては以下で詳しく解説しています。 離脱症状の対処法について
- Q
-
- Q
飲み薬が向いている人はどんな人ですか?
- A
飲み薬(チャンピックス)が向いているのは、以下の人です。
- 1日1箱以上吸うヘビースモーカー
- パッチやガムなどの禁煙補助薬で禁煙に失敗した人
- ニコチンを含んでいない薬を求める人
- 自力での禁煙が難しいと感じる人
- Q
-
- Q
妊娠中の禁煙方法について教えてください。
- A
妊娠がわかっても喫煙を続けている場合は、禁煙成功率が高いチャンピックスの使用を担当医と相談してみてください。
ニコチン製剤は妊娠中は使用できないので注意しましょう。 妊娠中の禁煙方法について
- Q
-
- Q
タバコをやめた何日目が一番きついですか?
- A
ファイザーのアンケート調査によれば、自力で禁煙に挑戦した1,414人のうち、再び喫煙してしまうまでの期間の割合は3日以内が31.8%と一番多い結果となりました。
このことからタバコをやめて3日以内が一番きつい期間といえます。 禁煙1週間までの体の変化について
- Q
-
- Q
タバコをやめたら見た目が良くなるって本当ですか?
- A
本当です。
タバコに含まれる有害物質は、細胞をサビつかせてしまうフリーラジカル(活性酸素)を発生させたり、コレーゲンをつくるために必要なビタミンCを大量に破壊します。
それによって肌にはうるおいやハリが失われ、さらに血色が悪くなることで透明感が下がることも。
年相応の老けこみを禁煙では避けられませんが、タバコをやめれば「喫煙による老化」は食い止めることができます。
いつまでも若々しさをキープするためにも、積極的に禁煙にチャレンジしてみてください。
- Q
-
- Q
禁煙したら、集中力が切れやすくなりますか?
- A
禁煙して間もない頃は、離脱症状によって集中困難な状態に陥ることがあります。
ただ、一時的な症状であり、ニコチンがないことに体が慣れてしまえば次第に治っていきます。
また、「タバコを吸っている時は集中できた」という方もいますが、ニコチンによって錯覚を起こしているに過ぎず、本来の意味での集中とは言えません。
- Q
その他よくある質問はこちらをご確認ください
参考サイト
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この記事の監修

(はっとり けいた)医師
【略歴】
- 平成17年
- 医療法人財団 河北総合病院 勤務
- 平成29年
- ゴリラクリニック 池袋院 管理者
- 令和5年~
- フィットクリニック院長 勤務