更新日:2025/12/23
花粉症(アレルギー性鼻炎・結膜炎)薬の種類と選び方|抗ヒスタミン薬・市販薬との違いを解説

花粉症(アレルギー性鼻炎・結膜炎)薬の種類と選び方

花粉症(アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎)の薬には、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、ステロイド剤など複数の種類があります。
種類によって作用のメカニズムが異なるため、アレルギー症状を抑えるためには治療薬の選び方が重要です。

また経口薬・点鼻薬・点眼薬といったタイプがあり、鼻水や鼻づまり、目のかゆみなど自分の症状に合わせて選ぶことでより効果的にケアできます。

花粉症の薬の種類

花粉症薬には、症状の原因となる物質に作用するさまざまな種類があり、鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどの状態に合わせて使い分けることが大切です。

以下では、花粉症薬の種類ごとの特徴を一覧表でまとめました。
花粉症薬は種類ごとに特徴が異なるため、生活スタイルや症状に合わせて選ぶことが大切です。

花粉症の薬の種類
種類 抗ヒスタミン薬 抗ロイコトリエン薬 ステロイド剤
投与方法 内服、点眼 内服 点鼻、点眼
車の運転 △(第1世代は不可・第2世代は種類により異なる)
特徴 くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどに幅広く対応 鼻炎(特に鼻づまり)に作用しやすく、夜間症状にも向く アレルギー反応による炎症を抑え、重い鼻水・鼻づまり・目の症状に有効

※効果には個人差あり

中でも代表的なのが「抗ヒスタミン薬」「抗ロイコトリエン薬」「ステロイド剤」で、それぞれ作用の強さや眠気の有無などが異なります。

抗ヒスタミン薬について

抗ヒスタミン薬は、アレルギーの原因となる「ヒスタミン」の作用を抑えることで、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどを緩和する代表的な花粉症の治療薬です。
経口薬に加えて点眼薬もあり、鼻と目の症状が同時に出る人にも使いやすい種類です。

また抗ヒスタミン薬は、開発された年代によって第1世代と第2世代に分かれます。

抗ヒスタミン薬(第1世代・第2世代)の違い
第1世代 第2世代
即効性が高いが眠気や口の渇きなどの副作用が強い。
第2世代で効果不十分な場合や症状が強い場合に使用されることがある。
第1世代の後に開発され、現在主流となっている抗ヒスタミン薬。
長時間作用し、眠気や口の渇きなどの副作用が軽減されている。
※第2世代でも種類により差がある

抗ロイコトリエン薬

抗ロイコトリエン薬は、アレルギー反応が起きた時に分泌される「ロイコトリエン」の働きを抑えることで、アレルギー性鼻炎を改善する治療薬です。
特に鼻づまりへの作用が期待でき、夜間に呼吸しづらくなる人や、鼻づまりが長引きやすい人に向いています。

また、くしゃみや鼻水にも一定の効果が見込めるため、鼻炎症状全般を改善したい場合にも選択肢となります。

眠気などの副作用も少なく、長期的な服用もしやすい治療薬です。
しかし即効性は乏しいため、数日~1週間は飲み続ける必要があります。

ステロイド剤

ステロイド剤は強い抗炎症作用を持ち、アレルギーで起こる炎症反応を抑えることで、鼻水・鼻づまり・目のかゆみなど幅広い症状を改善する治療薬です。
花粉症治療では、まず点鼻・点眼の局所ステロイド剤が中心となり、季節中に継続使用されるケースも一般的です。

鼻や目など部分的に使用する点鼻薬や点眼薬は、体への影響が比較的少なく副作用が起きにくい点もメリットです。
ただし、使い始めてから効果が出るまで数日かかる場合があります。

用法を守りながら投与することで、症状のコントロールに大きく貢献する治療の選択肢となります。

花粉症薬の選び方

花粉症の薬は、症状の出方やライフスタイルによって適した選び方が変わります

アレルギー反応によるくしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状は、アレルゲン(花粉など)は同じですが、反応する物質(ヒスタミン・ロイコトリエン)に違いがあります。

花粉症薬ごとに得意な症状があるため、現在お悩みの症状に合った種類を選ぶことで改善がしやすくなります。

また眠気の出やすさや、仕事・運転など日中の活動量も重要な判断材料です。 自身の生活に合わせて無理のない花粉症薬を選ぶことが、花粉症シーズンを快適に過ごすための基本です。

くしゃみ・鼻水に向いている薬

くしゃみや鼻水は、アレルギー反応で放出されるヒスタミンの影響によって起こるため、その働きを抑える抗ヒスタミン薬が適しています

特にフェキソフェナジン(アレグラ)やビラスチン(ビラノア)は、眠気が少なく日中の活動を妨げにくい点が特徴で、花粉症に悩む人に選ばれることが多い治療薬です。

鼻の症状だけでなく目のかゆみを併発している場合にも役立ち、症状の変動が大きい花粉の飛散時期にも使いやすい選択肢となります。

鼻づまりに向いている薬

鼻づまりの症状には、ロイコトリエンの働きを抑える抗ロイコトリエン薬が効果的です。
鼻づまりは、アレルギー反応によりロイコトリエンという物質が増え、鼻の粘膜が腫れることで起こります。
鼻づまりを中心に改善したい人に適した薬で、夜間の呼吸がしづらい人にも利用されています。
抗ロイコトリエン薬には、モンテルカスト(シングレア・キプレス)などがあります。

また症状が強い場合には、強力な抗炎症作用があるステロイド剤が向いています。

アレルギー性鼻炎による症状の強さは人によって異なるため、状態に合わせて選ぶことが重要です。
ステロイド剤のモメタゾン点鼻薬は、部分的に作用するため全身への副作用のリスクが軽減されます。

目のかゆみに向いている薬

アレルギー性結膜炎により起こる目のかゆみや赤みは、ヒスタミンによって起こるアレルギー症状です。

症状を改善するためには、一般的に抗ヒスタミン作用のある点眼薬が使用されます。
刺激感やかゆみが強い場合でも使いやすく、花粉が多い時期の予防目的としても効果的です。

抗ヒスタミン薬のエピナスチン点眼薬は、シーズン前や症状が出始める前から投与する初期療法にも対応が可能です。

また症状がさらに強まり、充血や腫れが目立つ時には、炎症を抑える効果が高いステロイド剤が選択肢となります

ステロイドが配合されたフルメトロン点眼液は、比較的副作用が少ないとされます。
ただし、長期間の投与は医師の管理下で行う必要があります。

目の症状は日常生活に影響しやすいため、状態に合わせて適切な点眼薬を使い分けることが重要です。

症状が重い場合の薬の組み合わせ方

花粉症の症状が重い場合は、単体の治療薬だけでは十分に改善しないことがあるため、内服薬・点鼻薬・点眼薬を組み合わせて使う方法が効果的です。
鼻水やくしゃみには抗ヒスタミン薬、鼻づまりには抗ロイコトリエン薬やステロイド点鼻薬、目のかゆみには抗ヒスタミン点眼薬など、症状ごとに適した治療薬を併用することで、負担を抑えながら症状を軽減しやすくなります。

生活スタイルや症状の強さによって最適な組み合わせは異なるため、医師へ相談して自分に合った治療を選ぶことが大切です。

花粉症薬の市販薬と処方薬の違い

花粉症薬の市販薬と処方薬の違いは、主に成分量・種類、入手方法、強い症状への効果などです。

市販薬は手軽に購入でき軽度の症状に使用されます。
一方で処方薬は医師により症状へ適した成分や量が選ばれるため、より強い症状にも対応することが可能です。

また同じ成分の治療薬でも、市販薬と処方薬では成分の配合量が異なることで作用の強さに差が生じる場合があります。
特に眠気などの副作用が気になる人は医師と相談しながら選ぶと安心です。

以下に、市販薬と処方薬の主な違いをまとめています。

項目 市販薬 処方薬
医師の
診断
不要 必要
種類 主に抗ヒスタミン薬(第二世代)が販売 抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬が対象
成分量 複数の成分が配合
副作用を抑えるため成分量を抑えたものもある
単体の成分が配合
成分量が多く効果が強い反面、副作用が出やすくなる場合がある
効果の
強さ
全体的に効くが、特定の強い症状には不向き 強い症状に対してピンポイントで効果が期待できる
副作用の
リスク
比較的少ない 成分により注意が必要
服用期間 短期間使用向け 長期間使用向け
入手方法 ドラッグストアなど
選択は自己判断となる
医療機関での処方
医師の診断が必須

市販薬は鼻水や目のかゆみなど幅広い症状に適用できるよう、複数の成分が含まれている場合があります。
その分、副作用を抑えるため成分量が抑えられているものもあります。

ただし長期間使用する場合は、ジェネリック薬に対応するクリニックでの処方を受けることで、価格を抑えることに繋がります。

花粉症薬の投与方法

花粉症薬の投与方法は以下になります。

薬品名 投与方法
フェキソフェナジン
  • 成人
    1回60mgを1日2回経口投与
  • 7歳以上12歳未満の小児
    1回30mgを1日2回経口投与
  • 12歳以上の小児
    1回60mgを1日2回経口投与
ビラノア
  • 成人(15歳以上)
    1回20mgを1日1回空腹時に経口投与
モンテルカスト
  • 成人
    5〜10mgを1日1回就寝前に経口投与
    ※小児への投与は医師の判断・指示に従う
モメタゾン点鼻液
  • 成人
    各鼻腔に2噴霧ずつ1日1回投与(1日200μg)
  • 小児
    【12歳以上】
    各鼻腔に2噴霧ずつ1日1回投与(1日200μg)

    【12歳未満】
    各鼻腔に1噴霧ずつ1日1回投与(1日100μg)
エピナスチン点眼液 1回1滴、1日4回点眼(朝、昼、夕方及び就寝前)
※12歳未満の場合は医師の判断・指示に従う
フルメトロン点眼液
  • 1回1〜2滴、1日2〜4回点眼
    ※年齢、症状に応じ医師が適宜増減を判断

各花粉の時期

各花粉の時期は種類によって大きく異なり、花粉症が出始めるタイミングを把握しておくと早めの対策につながります。

一般的に2〜4月はスギ、3〜5月はヒノキが中心となり、春の花粉症として最も多くみられます。

初夏から秋にかけてはイネ科の花粉が断続的に飛散し、8〜10月頃にはブタクサが流行するため、季節ごとに症状が繰り返し起こる人も少なくありません。

しかし各花粉症の時期を理解しておくことで、症状が出る前から花粉症薬を使い始めるといった予防も可能になります。

花粉症薬の注意点

花粉症薬にはいくつかの注意点があり、安心して使用するためには基本を押さえておくことが大切です。

花粉症薬の注意点
  • 車や危険機械の運転
    抗ヒスタミン薬の中には眠気が出る種類があるため、車や危険を伴う機械の運転をする人は注意が必要。
  • 併用禁忌・注意
    種類により併用禁忌・注意となる薬剤や食べ物があり、持病がある場合や複数の薬を使用している場合は医師へ相談が望まれる。
  • 条件により投与できない場合あり
    妊婦や子どもが使用できる治療薬は限られるため、医師に確認したうえで使用を開始する。
  • 使用前の準備
    点鼻薬や点眼薬を使うときは、鼻をかむ・コンタクトレンズを外すなどの準備を行うと本来の効果が得られやすくなる。
  • 自己判断での使用や中止
    処方される薬にはそれぞれ決められた用量がある。
    そのため、自己判断で治療薬の使用や中止をすることは避ける。

花粉症薬は症状や生活に合わせて選びましょう

花粉症薬は、症状の種類や生活スタイルに合わせて選ぶことが大切です。 くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみは原因物質が異なるため、治療薬ごとの得意な症状を理解して選ぶことで、花粉が飛散する時期でも快適に過ごせるようになります。

眠気の出やすさや日中の活動量も考慮し、自分に合った治療を選択することが症状改善の近道となるでしょう。

花粉症薬に関するよくある質問

  • Q
    花粉症の薬はいつから使い始めればいいですか?
    A
    花粉が飛び始める時期を目安に、症状が出る前から使用を開始するのが効果的です。
    早めに使い始めることで、症状の強まりを抑えやすくなります。
  • Q
    眠くならない薬はありますか?
    A
    第2世代の抗ヒスタミン薬は、眠くなりにくい花粉症薬です。
    日中の活動を妨げにくいため、仕事や自動車の運転をする前などにも使用することができます。
  • Q
    市販薬が効かない場合はどうすればいい?
    A
    症状に合う成分や量でない可能性があるため、処方薬で調整できる医療機関に相談しましょう。
    より適した治療を選ぶことで改善が期待できます。
  • Q
    花粉症と風邪の違いは?
    A
    花粉症は透明な鼻水や目のかゆみが特徴で、風邪は発熱やのどの痛みが起こりやすい点が異なります。
    症状の出方を比べると判断しやすくなります。
  • Q
    子供でも使える花粉症の薬はどれですか?
    A
    子供は使用できる治療薬が限られるため、年齢に合う成分を選ぶことが必要です。
    自己判断は避け、心配な場合は医師へ相談すると安心です。
  • Q
    妊娠・授乳中でも花粉症薬は使用できますか?
    A
    妊娠や授乳中は使用できる花粉症薬が限られるため、必ず医師に確認してください。
    安全性を確かめたうえで治療を進めることが大切です。

参考サイト

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この記事の監修

服部圭太院長画像
服部 圭太
(はっとり けいた)医師

【略歴】

平成17年
医療法人財団 河北総合病院 勤務
平成29年
ゴリラクリニック 池袋院 管理者
令和5年~
フィットクリニック院長 勤務